マンション銀座歩行者天国

碩滴

 みなさんもどこかで聞いたことがあるかと思うがセールスマンの心得の話★未開の地に来た靴セールスマン、一人は「ここでは売れない。みんなはだしだ」と報告、もう一人は「誰も靴を履いていないので需要は無限にある」という★要するに同じ事態をみても見方で正反対の結果が出る★結論としてここで求められているのは可能性を見出そうとするプラス思考だ★そうするとこの思考方法はどんな問題にもひろがる★最近はマンション管理問題といえば、組合員の関心はない、高齢化が進んでいる、二つの老いだ、役員の成り手はいない、輪番制でも辞退が多いなどなど、マイナス思考の話がつづく★建物の老朽化の方はともかく、組合員のほうはプラス面も多い★高齢者は、時間は十分ある、経験も豊富だ、組合運営に知識をもった人も多い、問題はその可能性の引出し方だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」422号(2017年11月)掲載


 管理規約はマンションの憲法だとよくいわれる★一面ではそうなのだが、では規約に書いてないことは何もできないかというと、違う★実際には区分所有法から民法、さらには本当の憲法までの大きな法体系に制約される★長らくワンマン理事長がつづくマンションで、決算書だけでなく、その証拠になる伝票類も見せてもらいたい、写真にもとりたいとの要求を巡って裁判になった★一審では規約通り、決算書や組合員名簿は見せるが伝票類は見せない、写真もダメとなった★控訴を受けた大阪高裁の判決が最近の判例雑誌に掲載されている★民法によれば一般財団では構成員への資料の公開は原則だ、マンション管理適正化指針も公開を謳っている、写真もかまわないと逆転した★解説は「規約自治論から一歩も出ない判決は非常に保守的」だと論評する。参考にしたい判決だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」421号(2017年10月)掲載


 マンション管理組合法人は法人税を払うべきか★払わなくてもよい★事業などしている管理組合はほとんどないから払わなくてもよいが、定額部分だけは払う必要があると一部では考えられているようだ★マンション管理新聞がこのところ続けて調査をしたところによるといくつかの市では徴収をしているようで驚きだ★法人化は1983年の区分所有法の改定で可能になった★そのさいの法務省の考えは法人化する組合としない組合に差が出ないようにするというものだった★法人でない管理組合はそもそも法人税の対象になりようがない★そうすると立法のさい法務省は法人化する管理組合にも法人税がかからないようにするべきだった★それを何もしていないからからこうなる★もっとも大部分の市は減免申請をすれば免除、あるいは最初から対象にしないとなっているが。

集合住宅管理新聞「アメニティ」420号(2017年9月)掲載


 最近福井秀夫氏らが標準管理規約の解説書を書いた★改定作業に当たった検討会の委員らである★一番初めに書いてある「業務は建物の保存・維持に限定すべきだ」にまず引っかかる★建物の保存・維持が業務の基本目的だというのは当然★だが、その目的に資する業務は広く認めるべきだ★営利を目的とする会社組織でさえ、スポーツクラブもあれば、文化の振興にも金を出す。周辺のお祭りにも協賛する★会社は民間だからというが管理組合も民間だ★ならば間違いなく官の市町村はどうか。全居住者の組織だが、一部のスポーツや文化行事にも金を出す★教養講座など盛んで住民の数からいえばごく一部のお料理教室まで主催する。しかも基本無料だ★これらからみればマンション管理組合が住民のやるお祭りやスポーツ大会などに金をだすのがなぜ問題かわからない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」419号(2017年8月)掲載


 共用の庭に緑と花があふれるシーズン★この緑と花の世話は管理組合が管理会社・庭園業者を通じて行なっているのが当たり前★ところが、住民が任意に植えているマンションが結構ある★共用だから勝手に植えるのは困るといえば、自分の費用できれいな花を植えて何がいけないと反発を受けかねない★個々の花はたしかにきれいだが、全体のつり合いはとれない。理事会で全部抜いてしまう決意もなかなかできないし、悩みだ★これを考えてか、なかには草花なら自由に植えてよいという細則があるところもある★しかしこれも、各人が競って勝手に花を植えだしたらどうなるか、本当に大丈夫だろうか気になる★理事会が大まかな方針を出し、有志の植栽クラブを設けて話し合いながら花を植えていくのが、コミュニティの形成の点からも一番望ましいのでは。

集合住宅管理新聞「アメニティ」418号(2017年7月)掲載


 豊洲市場の盛り土を考える★素人が考えるのだから基礎のキソからはじめたい★汚染されたガス工場の跡地が生鮮食料品の市場の移転先として適切かの問題は当初から指摘されていた★そこで汚染土を取って入れ替えさらにその上に盛り土をすればよいとの弁解で押し切った★その後都庁幹部は密かに建物の底地は盛り土をしないと決め市場工事を完成させた。この罪は深い★鮮魚・野菜・果物など生鮮食料品に影響があってはいけないから盛り土を決めたはず。肝心の食品を扱う建物の盛り土をやめるとはどういう神経か★調査と責任追及は都知事と都議会で行なわれる。まずは見守りたい★この話、理事会・修繕委員会にとってまさに他山の石だ★何ごとも専門家任せにせず、常に見守る必要がある。なにしろ天下の都政の場でさえあんな無茶が行なわれるのだから………。

集合住宅管理新聞「アメニティ」417号(2017年6月)掲載


 公徳心といったら古い古いといわれる★今は思いやりというのだろうか★駅から団地までバスで帰る。住民の高齢化のせいか最近は乗客が若干減ったような気がする★乗車時間は五、六分に過ぎないが、座りたい★見ていると二人掛け席の通路側に座る、隣の席に荷物をおく、足を広げるなど工夫して何とか独り占めしようと頑張る人が結構いる★当然の既得権だという顔をする。それも年齢によらず老若男女問わずにだ★混んでくるとさっと窓側による人、しぶしぶ荷物を膝にあげる人、求められてようやく動く人など譲り方にもいろいろある★なかには満員になっても平然とスマホにかじりついている高校生もいる★立っている人は遠慮深い方が多い。座りたいのに、ちらっと見てあきらめる。もめ事にでもなると厄介だと思っているようだ★今日も一日平和に終わる。

集合住宅管理新聞「アメニティ」416号(2017年5月)掲載


 プライバシーは私人の秘密。ただ私人に関することは何も知らせてはいけないわけではない★お隣さんとの付き合い。仮に隣近所が全部、名前も分からない、顔を合わせても挨拶もしないということだったら、何かおかしい★おかしいどころか、気味が悪くて、安心して生活できない★マンション管理組合にとって名簿は必須である★ところが管理会社がこの名簿を取りこんで、管理組合が求めても渡さないところがけっこうある。とんでもないことだ★これでは19世紀の植民地だ。一日も早く「独立」が求められる★この管理会社の態度を擁護している解説書があるのも驚きだ。その本が『理事になったら……』の「最新版」を名乗る★個人情報保護法を理由にプライバシーを守るため第三者に渡せないというが、管理組合が当事者であって、管理会社の方が第三者ではないか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」415号(2017年4月)掲載


 法律の条文というものは極めて厳密なものであるはず★だれがみてもできないものはできない★ところが、政府は有権解釈で、ときに思いもよらないことができるといいだす★大はこの二〜三年、国政をゆるがす大問題になっているから、ここではのべない★取り上げるのは、小の話として民泊の問題だ★多くのマンションは規約で住宅専用と決めており、自分で住むか借主が住んでいる★居住者が居なくて、毎日お客様が利用していれば、禁止されている民泊の営業になる★それを政府解釈で年間一定数までの民泊営業は住宅専用と見なすというのだからあきれる★観光振興は大いに結構だし、宿泊施設不足も対策が必要だろう★しかしそれを住宅の転用で、「民泊」施設に隣接する区分所有者などの住民の迷惑も顧みず強行するのが国民の福祉を謳う政府のすべきことだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」414号(2017年3月)掲載


 都庁は伏魔殿。言葉を重んじる作家の元知事がいうのだから、これほど確かなことはなかろう。まさに魔物がいっぱい棲んでいる★豊洲市場問題。天下の大問題だ。多くの人が関わりながら、真相が明確にならない★真実を知る魔物たちが皆だまる、逃げる、ごまかすのだ★本当は、関係した人間が自らの関わりを報告すれば、すぐに全貌が明らかになるはずだ★先の伏魔殿の元トップ氏。当初は素人だから専門家の説明を伝えただけと責任逃れをのべた。冗談ではない。毎年順番で交代する役とは立場が違う。1千万人の前で積極的に名乗りを上げ、その政策に審判を受けたはずだ★すぐに自らサインした契約書が出てきて、一部遺憾表明に至った★これを反面教師として理事会としても考えるべきことがあろう★残念ながら、小「責任逃れ」は、どこにもいるのが現実だから。

集合住宅管理新聞「アメニティ」413号(2017年2月)掲載


 ある地方紙の投書でマンションの「住民間のあいさつを禁止する」と集会で決めたことが載り、ツイッターで話題になっている★前代未聞の話だ。防犯に役立つからだという★思いもよらないことだが、いま幼稚園児や小学生に「知らない人から声をかけられたら無視して逃げる」と教えているという現実をみるとさもありなんと思う★投書への反応は「あいさつはあった方がいい」「さびしい」が大多数だそうだからともかく一安心だが、集会で決まるということが不気味である★これでは人間関係は乾く一方で、機械・自動販売機との対応と同じになってしまう★もっとも最近の自動販売機は購入すればありがとうございますというので、この方がましかも★この際、マンションの運営はコミュニケーション・あいさつから始まるという原点をあらためて強調する必要があろう。

集合住宅管理新聞「アメニティ」411号(2016年12月)掲載


 東京の六本木で建設現場から落ちた鉄パイプで通行人の方が亡くなるという惨事が起きた。痛ましい限りである★大通りに面したマンションの外壁工事の足場の解体工事中の出来事だという★事故後現場の関係者が解体工事は手作業でしかできないので落としてしまった。いっそう注意を払いたいという話をしていた★事実は少し違い直接作業中に落としたのではないようだが、いずれにしても問題の本質からずれている★事故はいくら人が注意しても全くゼロにすることは不可能である★そのため、ヒューマンエラーがあっても事故につながらないシステムをどう設計するか、万一事故が起こっても被害を最小限にするフェイルセーフのシステムが必要なのだ★マンションは工事もしばしばあり、注意もなかなか行きとどきにくい。今度の事故は管理組合にとっても他人ごとでない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」410号(2016年11月)掲載


 会議や討論は何のためにやるのか★ディベートという討論ゲームがある。テーマが与えられ、賛否双方に分かれて立論・質問・反駁をのべあい、どちらに説得力があるかを審判が判定する★小学生がやるのを聞いていると立派な論の立て方に感心する★しかし、待てよと思う。何かが欠けている★ディベートは設定テーマを巡って勝敗を争うから立場が変えられない★本当の民主主義的な会議・討論は勝敗を争うのでなく、できるだけ多数が共通の見解・合意に達することだ。場合によっては少数意見が多数意見に変わることもある★そこが決定的に違う。それを保障するのは参加者が相手の意見をよく聞くこと自説に固執しないことだろう★ともすると司会者の理事長が理事の発言のたびに批判や反論をするケースがあるが、これでは自由な討論は育たない。厳に戒めたいものだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」409号(2016年10月)掲載


 会計担当理事の横領を見逃した理事長と監事に460万円余りの損害賠償責任があるという判決が報道された★大きな額だが、これでも9割の「過失相殺」が認められ、1割の負担でこの額だ★会計理事らは預金通帳も見ていない責任があるというのは法的には常識だろう★しかし輪番や成り手不在で長年ボランティアを続けざるを得ない管理組合役員には過酷に感ずる話だ★これは単純な問題だがけっこう難しい★判決では善良な管理者の注意義務という言葉がでてくる★他人のお金を預かった以上一定の注意を払うのは当然である★だいたい管理組合の金は自分の出した金もふくまれており、役員になってもその行方に無関心であるというのも理解できない話だ★不正をおこなった会計の責任はいうまでもないが、他の役員もせめて不正を防止できる程度のチェックが義務だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」408号(2016年9月)掲載


 少し前だが、台湾の地震でのマンション崩壊は衝撃的だ★他の場所での死者は二人なのにこのマンションだけで百人を超す死者がでた★欠陥マンションがいかに恐るべき結果をもたらすかいまさらのように思わざるをえない★それでもわが国ではああいう極端な事故はないだろうというのが一般の受けとめだろう★それは一面の事実だとは思うが、本当に大丈夫だろうか★台湾のマンションではコンクリートの割れ目から塗料缶が見える驚くべき写真があった★わが国でも大震災で倒壊した阪神高速道路の橋脚から木材や缶が姿を見せていた事実があった★マンションの傾斜や杭切断など最近の事態をみれば絶対に安全だとはいいきれないだろう★さらにこの何年かの企業による幾多の瑕疵隠し、数値のゴマカシなどの不正行為が表沙汰になった実態を見れば本当に不安はつのる。

集合住宅管理新聞「アメニティ」407号(2016年8月)掲載


 科学に完成はない。熊本地震ではその姿が表面化して深刻な被害も出た★未完成は分かるが、テレビで地震の話を聞いているとどうも納得できないことが多い★本震を上回る余震はないといわれてきた★今度の熊本地震では最初の大地震の後、余震がどうなるかの情報はたくさん流された★ところが2日後に最初の大地震を上回る地震が発生した。すると後の方が本震だと説明される。そして最初の地震は前震だと★しかもこういう例は初めてではなく、時にあるという。それならそうと事前にいってほしかった★被災者が望むのは、家にいても大丈夫か、それとも避難すべきかの指針だ。用心して屋外で寝た人も多い★後になって最初の地震を上回ることもあるといわれても、どうしようもない★不安を与えると弁解する向きもあるようだが、それこそ住民を信頼しない考え方だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」406号(2016年7月)掲載


 コンプライアンスという言葉が企業などで頻繁に使われている★法令順守と訳されているが、一般には企業のあり方など倫理的な内容をもつと理解されているようだ★法律の隙間をねらい違反しなければよいと言うのではなく、誠意をもって守ろうというニュアンスがあるように思われる★そこで、管理規約に住居専用とあればその範囲はどうか★ホームステイで外国人を迎えるのは許容範囲か★知人が客として泊ると同じだと理解すればOKだ★では民泊ならどうだろうか。総務省は宿泊施設不足の現状から住居専用の規約があっても可能という★規約の精神、コンプライアンスの立場からいえばいかにも無理筋だ★求められているのは通常の居住形態と同じ程度の静穏を保持することであり、民泊の営業ではとうてい無理。ダブルスタンダードも極まるといわなければならない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」405号(2016年6月)掲載


 「規制」がないことを「禁止」と受け止めるのが日本人で、「自由」と考えるのが欧米人だとある弁護士が書いていた★ロボット業界にかかわって、そこに発生する法的問題を説明したときの印象だそうだ★「ロボットはまだ業法がないから自由だ」と説明すると企業関係者はみなキョトンとするという★そういわれればわれわれの周りにもそういう傾向がある★管理組合でも「そんなことは法律には書いていないよ」「標準管理規約にないからできないよ」などの発言は多い★実は管理組合でもわがNPO日住協でもひろい自律権があり、規定に書いてなくても禁止さえされていなければ、できるのが当然だ★もちろん構成員の多数による正式の決定が必要なのはいうまでもないが★法律や規則への受け身の態度を見直して自分たちでできることに大いに自信をもってほしいのだと思う。

集合住宅管理新聞「アメニティ」404号(2016年5月)掲載


 十一億円の管理費横領と報道されていた新潟・石打のリゾートマンション理事長がやっと逮捕された★十六年間理事長だったが、一年前に本人が告白してくるまで気づかれなかったという★管理会社が管理しているはずだが、会計担当が専ら理事長というのも分からない話だ★当人は区分所有者であるが、同時に公認会計士という専門家でもある★組合員から信頼されていたとの談話も語られている★昨今の外部専門家導入の推奨風潮に冷や水をあびせるニュースである★居室は大小いろいろだが、十一億円といえば一戸当たり二百万円にもなる★調べてみるとリゾートマンションの低落傾向の反映で、このマンションは中古価格が数十万円の住戸がいくらでもある★これから先大変だが、いずれにしても組合員が立ち上がらなければ、何ごとも進まないことだけは確かだろう。

集合住宅管理新聞「アメニティ」403号(2016年4月)掲載


 わが国ではヨーロッパといえば何ごとも先進的で模範的だと思っている人が多い★そんなところへ衝撃的なニュースだ★世界のサッカーの元締めであるFIFAの会長と副会長の不正行為である★公金を使う買収容疑だが、会長報酬が年十億円ともいわれ、額も定かでないという★FIFAは会長絶対で、必要な情報はほとんど出てこず、やりたい放題だという。理事会は論議もなく民主主義とはいえないとか★これでは理事長ワンマンに悩むマンション管理組合の理事会以下ではないか★FIFAでは会長らの職務停止をきっかけに改革にとりくみ始めたとのことだ。各国の理事がいかに動くかをよく注目したい★大切なのは理事や一般(国民、組合員)が注視し監視すること、そのうえでものをいうことだ★独裁やワンマンにはどうしようもないとあきらめるのは最悪の道だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」402号(2016年3月)掲載


 国立競技場の跡地を見る★ほこり防止のため草を生やしているが更地である★工事費が余りに巨額だとの批判で当初計画は振り出しに戻ったわけだ★まだまだ暫くは工事の着手はできない★原因調査の報告もあったが、真の理由が「長老」の言動に左右された方針の決め方にあったことは世論のみるとおりだ★だが真の責任者は責任を取る位置にはいない★同じような悩みを持つ管理組合理事会もかなりあり、このニュースをわがことのように聞いたのではなかろうか★輪番制の理事会は、経験豊富な修繕委員会の「長老」にはとうてい太刀打ちできない★よく分からないままに修繕委員会の意見通りすすめる。たいていは問題なく終わるが、何か問題がおこればお手上げだ★理事の輪番制を再検討し、せめて修繕委員会並みに、ベテランの理事を何とか少しは残せないだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」401号(2016年2月)掲載


 フォルクスワーゲン(VW)の不正には、心底仰天した★押しも押されもせぬ世界のトップ企業・最高ブランドの一つである★それでもブランドイメージは揺らいでいないとの報道もある★最近とくに感じるのは、企業の不正ニュースにトップブランドの登場が多いということである★旧財閥系の名前がいくつも登場する。業界のまさにトップ企業とその関連会社が関係する★大企業なら粗雑な建築や修理はやらないだろうという消費者の思いを逆なでする事態がつづいている★専門家に聞くと、大規模修繕のさいマンションを建築したブランド企業が1〜2割高くても、総会の議決がブランド企業に傾くとのこと★これだけ信頼されているのだから、問題の大企業に、企業の社会的責任やコンプライアンスなどの面で、区分所有者の信頼を失わないよう、更なる努力を求めたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」399号(2015年12月)掲載


 細川忠利は転封のさい、前任の加藤清正の遺影を掲げて熊本城に入城したという★細川護煕元首相の先祖である★司馬遼太郎がこれを評して「政治の基本は、人心の掌握なのである」(『春灯雑記』)とのべている★政治の動きをみるとき、今もまさに当てはまる評言だ★それにつけても思うのはマンション管理の仕事も同じだということである★理事が修繕工事の内容や収支のバランスに気を使うのは当然だが、何よりも一番重要なのは、「人心の掌握」つまり組合員の合意形成であろう★方針は正しいんだから、丁寧に説明すればみんなついてくるなどと言っていてはダメである★どうやったら組合員に理解され支持され、合意できるか。司馬のいう「人心の掌握」である★そのためにはマンション内の人びとの真の意向がどうなっているかの掌握こそ決定的だ★努力していきたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」398号(2015年11月)掲載


 最近は何でもマニュアルばやりである★指示された順序どおりやっていけば、理屈は何も分からなくても一応のことはできる。便利ではあるが、何か物足りない★いったんマニュアルの想定外の事態がおこると、お手上げである。考えようにもヒントがない★マンション管理の仕事についても、『理事になったら…』という類の本はたくさん出版されている。しかし、どれもマニュアル形式だ★いざトラブルとなっても、何とか対応できる本がほしい★こんどNPO日住協で出した『マンション管理の「なぜ?」がよくわかる本』は、そこに焦点をあてた★いわゆる「いまさら人に聞けない基本の基本」から始まって、実際のマンション管理でいろいろな問題に直面し、みずから解決に当たってきた最先端の問題まで、経験をすべて盛り込んで書いたもの★ぜひ手にとってほしい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」397号(2015年10月)掲載


 自治体が介護保険の軽減を求める人に「預貯金通帳のコピー」を求める通知を出して波紋を呼んでいる★自治体が金融機関に預金残高の照会をする承諾書も出せという★本当に福祉施策をうける必要があるかどうかを知るのが目的だが、同時にプライバシーが丸裸になるとの批判だ★同じようなことをマンション管理組合にも適用しようという考えが出てきた★国交省の「管理のあり方」検討会が、管理費の滞納者については「残高照会」ができることを管理規約に入れようというのだ★規約に入れれば承諾書もいらず、預金残高を組合が知る★公共機関でさえ種々の論議の対象になる手段を管理組合に認められるだろうか★せっかくプライバシーを守りたいのでマンションに入ったのに、組合にそんなことをする権利があるだろうか★組合財政健全化は重要だが、ポイントが違う。

集合住宅管理新聞「アメニティ」396号(2015年9月)掲載


 だいぶ前のことだが、わがマンションのニュースに「修繕積立金の現在額はセールスポイント」という記事を書いた★立地、間取りなど諸条件が同じで、積立金が一方は一戸150万円、他方は50万円だったら、マンション価格には100万円の差が出るのが当然だ★ところが不動産業者がつける価格で、そんなことが考慮された例は、全国でもおそらく一例もないだろう★もう一つ。大規模修繕工事が終わって外観がよくなると多少であるが価格が上がる★しかしその工事に全額積立金を使ったとすると、その住戸の総資産価値はほんらい何も変わっていない★中古のマンションの販売は現状有姿だから、その現状に積立金の一戸あたりの額を記すのが当然だろう★売却を予定している方々は一度不動産業者にそんな提案をしてみたらどうだろうか。新しいセールスポイントだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」395号(2015年8月)掲載


 標準という言葉は広辞苑によると「よりどころとするめあて」である★標準化といえば、この目当てで統一することになる★じじつ標準金利といえばたとえば1%というふうに一つに決まる★標準管理規約も最初にできたときは一つだった★今では単棟型、複合型、団地型と三種ある★今度国交省がパブリックコメントにかけようとする案では、専門家の参加度合いによって、今の型のほかに三種類のタイプを設けた★このタイプ別と建物の種類による型と掛け合わせると都合十二種類の類型ができあがる★それでも外部専門家を入れない今の型が基本だと思えるのだが、どれが基本かとはいわない建前だそうだ★標準とは「よりどころ」だと思う我々一般の区分所有者にとって全く分からない★二年半も正式会議をさぼっていた検討会の正委員は一体何を考えているのだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」394号(2015年7月)掲載


 区分所有者の全員を対象とする集会(総会)は法にも定められたマンション最大・最高の行事だ★単に業務計画と予算を決めるだけでなく、実質的な討議ができることが本来の課題だろう★しかし実態は委任状や議決権行使書で結論は会議の前に出ている★どんな立派な意見が出ても、反対者が多くても、どうにもならないのが実態だ★今度の日住協総会で、ある管理組合から今年から委任状は会場の実際の出席者の間での賛否の多数の側に加えると決まったという発言があった★こういうやり方を三十年も前から実行している管理組合もある★代議制度は民主主義の偉大な発明といわれるそうだ★たしかに集まって討議をすることで、議案への理解も深まり、よりよい提案も出てくる★マンションは代議ではなく全員が出る建前だから、こうした討議の実質化はたいへん望ましい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」393号(2015年6月)掲載


 マンション管理の相談は難しい★相談会場では初めて会った人から白紙で相談を受ける。まして電話相談ともなれば、相手の顔付きさえわからない★だから、少なくとも最初の数分は聞き役に徹する。また質問をする★ときにはすぐ回答をしだす相談担当者もいるが、これでは一般論しかいえない★相談者は自分の思いを一点に集中してはなすことが多いから、不利なことやこちらの知りたい全貌をしゃべらないことが多い★それを丁寧に引き出すのが相談担当者の仕事のはずだ★なかには、相談者はまとまった話をしないから相談は文書に限るなどと公言している大家もいる★対話こそ物事に対する認識の発展だから、それを避けるとは横着の極みで、正確な相談はできない★相談担当者はよく聴き、よく尋ねながら、相談者にとって最善の回答(助言)をしようと努力をつづける。

集合住宅管理新聞「アメニティ」391号(2015年4月)掲載


 マンションの駐車場料金はいくらが適切か★機械式駐車場なら修繕費や日常の維持費に相当額を要するのでそれを基礎に決まる★敷地に平置き駐車場の場合は維持費が少額だから、いろんな意見が生ずる★「共有地だから、そもそも払う必要がない。二重払いだ」から「特別に共有地を使わせてあげるのだから、周辺相場なみの駐車料が当然」まで分かれる★どの考え方が適切かは議論があるが、駐車場不足の場合は、周辺相場なみが妥当だろう。それなら使用できない人や車を持たない人に申し訳がたつのではと思う★ただ、一戸に一駐車場、つまり一〇〇%であれば、料金はいくらでもよい。駐車料金で徴収するか、管理費か修繕積立金で納めるか、いずれにしても必要経費がまかなえればよいわけだ★ただ、これを悪用して駐車場無料など誇大宣伝する販売業者もあるのは許せない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」390号(2015年3月)掲載


 「マタハラ」などという見出しが新聞に出てビックリした。語感が悪い★マタニティ・ハラスメンント、つまり妊婦に対するいじめ、差別待遇のことだ★裁判で最高裁が職場変更のさい降格させたのは違法と判断したので見出しに登場したわけだ★ところでセクシャルハラスメントは厚生労働省の指針にも登場する正式用語だ★何とかハラスメントなどという用語はマンションの世界では無縁だと思うが、残念ながらセクハラだけはあるようだ★と思っていたら、最近パワハラの例を一つならず聞いた★あるところでは、お客さんの目の前で同僚が多数で理事を罵ったという。同僚のいじめも「立派な」ハラスメントだ。★もう一つは理事長が監事の提言を「監事の分際で、傲慢だ」と怒鳴ったという★輪番制の役員が多いから、そんなことはありえないと思ったが、世界は広い。

集合住宅管理新聞「アメニティ」389号(2015年2月)掲載


 すべての争訟の最終解決をする場所は裁判所である。当然である★一方で「裁判は家庭に入らず」という法諺もある★裁判所にしてみれば、なんでもかんでも持ち込まれても困る★そんな裁判所の気持ちを表すような判決が先日、東京高裁であった★原告はマンションの駐車場で、2台目の車が空き待ち十年で敷地外の駐車場を借りるなど費用が嵩み、公平でないという★一審は管理組合が違法な対応をしたとまではいえないと請求を棄却した。二審は原告の資格を理由に一審と同じ判断をした★しかし、別に考え方をしめし、不公平が生じていること自体は否めないが、「共用部分の管理に関する事項は集会の決議によって決する」のだから、最終的には集会の決議にまつしかないとの判断をのべた★裁判所に持ってくるのではなく、自分たちで決めなさいというわけだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」387号(2014年12月)掲載


 八さん、熊さんにご隠居さんといえば江戸の長屋の世界だ★長屋は借家で借主のご隠居さんが管理人を兼ねている★戦後かもっと後かに、こうした木造長屋形式の建物で境界の壁を共有にして区分所有する例が現れた★敷地も屋根ももちろん個人所有だ。なかには他に共有の井戸や炊事場が別にあったかもしれない★戦後すぐに建てられたこの種の建物が残っている★そういえば戦後十年あまり経った大阪では二戸一文化住宅という共同住宅が盛んに分譲されていた。原理は長屋と同じだ★その長屋式建物が改築期で、裁判になっている★一つは中間の住戸を撤去して自分の土地に独立の住戸を建てた例、二つ目は更地にして明け渡せとの判決で中間の住戸だけを壊してよいかどうかの争いだ★両方とも他の区分所有者に影響を与えるからダメとなった。当然ではあるが、面白い判決だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」386号(2014年11月)掲載


 マンションの建て替えと現状を生かした再生(大幅修繕・改築)とを合わせてマンション再生と呼ぶ★法律は建替促進法だけがあり、世の中には建て替えばかりが喧伝されている★だが、実際には大幅修繕の方がはるかに例が多く、またエコでもある。コミュニティも壊されず済む★こんないいとこばかりの「現状を生かした再生」にもっと光を当てたい。建て替えの方が適切なマンションもないわけではないが、この再生の可能性があればぜひ生かしたい★全管連の再生法提唱はこうした立場の表明である★団地再生については国交省の検討会も始まっている。区分所有者や管理組合の代表がいないのは遺憾に思う★審議では建て替えへ誘導する条件整備を目的とせず、区分所有者・住民の意向がよく反映された方向を選択できるよう、偏りのない論議がなされるよう望みたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」385号(2014年10月)掲載


 医者で薬の処方をしてもらう。最近は、一定の説明がつくのがありがたい★この薬は少し強い。副作用を防ぐため、もう一つ別の薬を処方します★素人としては、副作用のない薬を一つつくればよいのにと嘆かざるをえない★ところでこのほど、全国で空き家が820万戸に達したとの調査結果が出た★そのうち放置空き家が318万戸で、倒壊や火災などの危険に満ちているという★そこで、自治体や政府も放置空き家の対策の施策に乗り出したり、検討したりしている★具体的には自治体は危険空き家の解体代執行など。政府は固定資産税軽減税率の適用中止の検討だ★空き家の解消に多少は目の前の効果はあるかもしれないが、単なる対象療法にすぎない★原因は社会構造全体にかかわるもっと大きなもの。マンション空き家はまだそれほどでもないが、いずれにせよ大変だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」384号(2014年9月)掲載


 Wカップサッカーブラジル大会は終わった。日本は奮闘むなしく残念ながら予選敗退となった★しかし思わぬところで日本への称賛の声が現地から伝えられている★日本人サポーターによる試合後のゴミ拾いだ★応援に使ったブルーのビニール袋が終わればゴミ袋に変身する★サッカーでは荒れるサポーターの話題にことかかないなかで、敗北にもめげず黙々とゴミを拾う姿が各国で報道されているのももっともだ★ゴミ拾いにはまわりの他国の人びとも協力し、サポーター間の交歓も伝えられる★知らなかったが、ゴミ拾いは実は日本初参加のフランス大会からつづいている伝統行事だとのこと★ここで思いおこすのは、マンションのいっせいゴミ収集★これもまったくのボランティア。参加しない人もいるが、気にすることはない。強制でなく、善意の輪が自然に広がるのがいい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」383号(2014年8月)掲載


 法三条という言葉がある★法律は、殺すな、傷つけるな、盗むなの三つだけがあればよい★それが政治の理想だと昔の中国でいわれた。なるほどと思う★しかし、なかなか理想通りにはいかない★今その国では「法治」という言葉が頻繁に強調されている★「法治」の反対語は「人治」である★わが国でも「法治国家」という言葉があるように、もともと政治の場や社会生活の場では、ことがらの成否を判断する基準として各種の法律が整備されている★ちょっと見ると杓子定規の法一辺倒より融通の効く「人治」の方がいいようにもみえるが、実際には、法律や規則を無視した恣意的な運営が人々に迷惑をかける★だからこそ隣国では「法治」の徹底に苦慮しているのだろう★これはよその国の政治の話だが、管理組合にも似たような話があるのではないか。お互いに自戒したい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」382号(2014年7月)掲載


 少し古いがオリンパスの粉飾決算。財テクの失敗を隠そうとした事件だ★こんな悪事がなぜまかり通るか。発覚時に指摘されたのは「黙る取締役会」だ★「いちばん詳しい担当者が言うのだから、少しおかしいと思うがやらせておけばいい」、「間違ったって私には責任はない」という発想だ★ことなかれ主義の取締役が悪事を容認していたわけで、何をやってきたのかと思う★だが、ひるがえってみると、わが身に思い当たる理事や理事会も結構あるのではないだろうか★ことごとに異議が出て混乱する会議も困ったものだが、それはそれでチェック機能が生きているといえないこともない★一方、理事長の独演会や担当理事のいうとおりで、誰からも異議がでない理事会は、オリンパス型に陥る危険は大きい★このさい「反面教師」として学ぶいい機会ではなかろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」381号(2014年6月)掲載


 ホームレス、ネットカフェ、個室ビデオ、それに脱法シェアハウスと住宅の貧困を象徴する事態があいついでひろがっている★ところで国の住宅政策はどこにあるか★住生活基本法という法律があるが、これを読んだ人がいるだろうか★この法律の作成にたずさわった人を除けば、マンション管理に相当深くかかわってきた人でも多分ゼロだろうと思われる★なにしろ「基本法」という立派な位置づけを与えられていながら、大部の六法全書にさえ載っていない。基本になっていないのだ★以前は、といってもつい十年ほど前のことだが、住宅建設計画法があり、それにもとづいて一戸あたりの望ましい居住面積の政府目標も設定されていた★住宅は満たされて民間に任せればよいとなった。本当か★極小の脱法シェアハウスの横行をみると、原因をここにみるのも無理はない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」380号(2014年5月)掲載


 「白馬は馬にあらず」という詭弁が中国にある★それでは「区分所有は所有にあらず」は詭弁かどうか★所有権は絶対だが区分所有権には制限が多い。詭弁ではないのではないか★いや所有権だって制限はある。程度問題だろう。追求しだすと実に難しい。分からなくなる★昔は村八分というものがあって、村内の異端者との付き合いを断ったが、それでも火事と葬式は付き合った★現代のマンションはそれ以上だ。法律に追い出し規定があり、4分の3以上の賛成で裁判ができ、勝てば追い出せる★区分所有は所有の本質がだんだんと危なくなっている権利だ★建替えや再生、被災建物の区分所有関係の解消など、最近の諸問題を議論するには、そもそも区分所有とは何かまで遡っていかないといけない★この権利は、まだまだ熟してないと思わざるをえないこのごろである。

集合住宅管理新聞「アメニティ」379号(2014年4月)掲載


 こんな大雪は首都圏では珍しい。しかも二度も三度も★大災難だが、こういうときこそコミュニティの真価が試される★団地では、雪が止むか止まないうちに雪かきが始まる。誰いうとなく全くの自発、ボランティアである。管理組合、自治会の区別などもない★住戸の前からバス停までの道をあける。なかには棟の間の駐車場の車まで全部除雪したところも★足腰の弱った老生には、誠に感激にたえない★コミュニティは自然発生的な共同社会だが、マンションでは出発点は人為的である★それが、理事を選ぶ、修繕の相談をする、突発的な事故がおこれば協力して解決する、そうして付き合いが始まり、何年もの経過を経て深まる★突然の大雪だが、これにたいする積極的な対応がコミュニティをつくり、発展させ、マンション管理組合の前進を保障するのだと感じる。

集合住宅管理新聞「アメニティ」378号(2014年3月)掲載


 都知事選も終盤である★昨年末、前知事の辞任をみて、ダモクレスの剣の故事を思った★話は紀元前四世紀のシラクサのことである★王の繁栄を羨んだ廷臣のダモクレスが王に招待されて宴席に行くと、自分の席の頭上に剣がか細い糸で吊ってあった★王は言った「羨むではない。王位はこのようにきわどい」と★都知事だけではない★権力というか、およそ責任者の地位にある者、いつダモクレスの剣の糸が切れて、頭上に落下するかもしれないのだ★ところで、話はぐっと小さくなって、管理組合の仕事を考える★われわれ一般人は、それほどの緊張を要する危険の下を歩いているわけではない★しかし、何か仕事をするときには、それなりに危機対応をつくして、最善の努力をしなければならないだろう★その覚悟があるかと、激戦の都知事選を横目につくづく思うのである。

集合住宅管理新聞「アメニティ」377号(2014年2月)掲載


 会合で意見が対立して議論が白熱する。最後はどううまくまとめるか★意見が出尽くせば採決となる。一票でも多い方に決着がつくのが民主主義の常識だ★ところがわが国では、肝心のところで採決を避け、「議長一任」「責任者一任」にするという「習慣」がひろく存在する★管理組合理事会でも、けっこう同種の例があるのではないか★「採決はしこりが残る」というのが理由だが、一任すればその方がよほどしこりを残すのではなかろうか★確かに、単純な手続き問題や論議するまでもないささいな内容なら、だれかに一任するのも悪いことではない★しかし、その団体の死命を決するような基本問題、重要問題ほど「一任」によって決着するケースが出やすい風土があるように思う。民主主義の成熟度合いが問われるのではないか★テレビの政治ニュースを見ながら考えた。

集合住宅管理新聞「アメニティ」375号(2013年12月)掲載


 『聞く力』(阿川佐和子)が今でもひきつづきベストセラーだ★インタビューの対象人物の特徴をうまく引き出す力は見事なものだ。とくに、毎回うまくいくかどうかと悩む「いつも素人」の姿勢がいい★話す力があるかどうかは、聞いてみればすぐ判断できるが、聞く力はそうはいかない。自分ができるだけしゃべらず、相手の話を引き出すのが目的だ。そのため聞き役が苦手という人は多いようだ★マンション相談の仕事にとっても、相談者の質問の内容をどのように聞くかは重要だ★相談者の話が支離滅裂だとか、まとまっていないとかいって嘆く人もいる。しかし、もともとよく分からないから相談に来るわけで、聞き役が本音や要点をどう引き出すかが求められると思う★同じようでも相談内容は一つ一つ違う。心をこめてよく聞き、そのポイントをつかむ相談員でありたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」374号(2013年11月)掲載


 今夏の参院選から法律が変わって、成年被後見人も投票ができるようになった★医療でのインフォームド・コンセント(説明と同意)は広く普及した★これら当事者主権、つまり当事者の判断こそ基本だという考え方は、大きく広がってきた★これと正反対なのが、国交省のマンション管理のルール検討会だ★その議論のなかに、役員難などに悩む管理組合を被後見人になぞらえて説明する場面がある★主権者である区分所有者を、判断できない人たちであるかのようにいう。さすがに異論も出されたようだが、大勢は「被後見人」視の容認派だ★適切な専門家がいるとすれば、その協力を得るのは、誰も否定しない★しかし、主人公である肝心の管理組合や区分所有者そっちのけで、何としても専門家の出番をつくろうという机上のルールづくりでは、まとまるはずがないであろう。

集合住宅管理新聞「アメニティ」373号(2013年10月)掲載


 たまたまNHKで「介護の革命・バリアアリ―=vを見た★車いす生活で一生立てないと医者から宣言された人が、介助なしで立ち上がるような例がいくつも出ているという★「自分でやるのが本質」というのが、何でも同じだなあと、途中から真剣に見入った★介護のメニューが200種類もあって、施設へ来たお年寄りが、自分でその日のメニューを選ぶ★パンづくりから陶芸教室、ダンス、カジノまである★家へ帰れば「バリア」が当たり前だから、わざと階段、坂道を作ってある★メニューをやろうとすれば、どうしてもその「バリア」を通らなければならない★食事も、バイキング方式。自分でよそい、運ぶ。職員はどうしても必要な手助けはするが、手を出さず自分でやってもらうのが原則だ★これが物事の本質。来てから帰るまで、動くすべてがリハビリになっている。

集合住宅管理新聞「アメニティ」372号(2013年9月)掲載


 世に盗人の種はつきまじという★盗人とは違うが悪事の種も本当につきないと思う★都心のマンションで、持ち主が3LDKの部屋を十二人用のシェアハウスに改装すると申し出て管理組合と紛争になっているそうだ★住居とは言えない水準の寝るだけのスペースを提供する脱法ハウスのことは聞いていたが、マンションにまで入り込んできたのは初耳だ★トイレやDKは共用だから、一人ずつの各部分は3.4m程度しかない。窓もない。それぞれに鍵がつくという★これは独房よりも狭く、住居とはとうてい言えないしろものだ★この件の管理組合はもちろん拒否の態度を決めたが、実はこの種の脱法シェアハウスは相当広がっており、専門業者(?)もいくつもあるようだ★防災・防犯などの面でも問題があり、事故が起きないうちに早く取り締まってもらいたいものだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」371号(2013年8月)掲載


 川崎重工の社長らの解任劇には驚いた★社長らがすすめた会社合併の動きが否定されたわけだ★合併の是非などの内容は、ここでは論点外におくとして、手続きの問題を考えたい★手続き的にみれば、ことは定款に則った正当な手順を踏んだ行為であり、どこもおかしいところはない★「和をもって貴しとなす」は聖徳太子以来の伝統だ。そのためわが国では、異論を唱えると「和を乱す」として非難する風潮がひろくある。だが、これはいいことだろうか、甚だ疑問である★これでは責任者が勝手にことを決めて暴走しても、チェックもできなくなる★おかしいと思ったら、ルールに沿って、意見をのべたり、是正の手段を講じるのが当然ではないか★民主的な討議・熟議を重ねること、その結果できあがる結論こそ、より高い「和」を実現することになるのだと信じたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」370号(2013年7月)掲載


 総会のシーズンも終わったが、常々疑問に思うことがある。それは質疑応答しかない会議が多すぎることだ★会議の本来の目的は、議案をめぐって賛否の意見が交わされ、参加者の多数で議案が可決されるか、よりよい修正案が出て承認されるかそれとも否決されるかである★執行部の出した議案を参加者に説得し、納得してもらい、承認を受けるという考え方は主客転倒だと思う★管理組合でいえば、主権者は区分所有者である。執行部は提案し、その適否を主権者に判断していただくのである★この関係が逆にならないようにしたい★なかには総会で意見が出て長引くといけないから事前の説明会で意見を出してくれという管理組合もある★説明会は執行部の提案の意図・内容の説明が目的であって、意見は総会で「主権者」の前で語るべきものである。検討してほしいものだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」369号(2013年6月)掲載


 『自分でやった方が早い病』という本を読んだ★企業の若手向けのノウハウ本である。ただ、マニュアルではなく、仕事をすすめる考え方に重点を置いている★他人に説明しているより自分でやった方が早いというわけで、一人でどんどん仕事をすすめてしまう★本人は他人のためにやっていると思っているが、実際は他人の能力を信頼せず、その成長を助けない利己主義のあらわれだという★能力のある人に多いようだが、一人では限界がある。大きな仕事はできず、その人自身も結局は成長しない★若手ではないが、残念ながらこういう人は理事会にもいる。とくに理事長に多い。他の理事は取り残され、理事長独走になる★個人としての成長はともかく、理事会としても、結局はプラスにならない。仕事の成果が継承されず、新しい理事が育たない。心すべきことだと感じた。

集合住宅管理新聞「アメニティ」368号(2013年5月)掲載


 人が歩くのに、道幅は五〇センチもあれば十分だ★しかし、柵も手すりもない幅五〇センチの橋が峡谷にかかっていたら、ほとんど誰も渡れない★「遊び」というか「余裕」というか、そういうものは見たところムダのように思えるが、実は必須なのだ★最近、政府のある検討会で、標準管理規約の管理組合の仕事からコミュニティ活動を除くという意見が強硬に主張されていると聞く★住民の交流や人間関係を深めることなど、建物管理に関係ないムダだというのだ★こういうことを主張する人たちは「住む」ことを何だと考えているのだろうか。住むことは、経済的利益のみの世界ではない。人生そのものだ★住民の全生活、喜びと苦しみ、汗と涙の全部がかかっている★それが分からぬ「幅の狭い」経済唯一論の学者などにマンション管理の基本方向を決めてほしくないものだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」367号(2013年4月)掲載


 私はあなたの意見には反対だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る★論争相手の人格と権利を尊重するこの言葉は、フランスの哲学者ヴォルテールの名言とされている★どの組織においても、運営方針の違いや考え方の相違はいくらでもある。しかし、議論が終われば、それはそれとしてノーサイド。日常のつきあいが復活するはずだ★ところが、哲人でないわれわれは、議論を始めると、方針の違いだけなのに、人間関係の対立にまで発展することも珍しくない★マンションの世界は、上下関係は建物の階の上と下だけで、他はまったくフラットな世界だといえる。大抵のマンションは、間取りさえ隣近所と同じだ★まさに気兼ねなくつきあえる望ましい環境である。論争するが仲良くつきあう。そういう討議、熟議の方法にもっと習熟していきたいものだと思う。

集合住宅管理新聞「アメニティ」366号(2013年3月)掲載


 「やさしく、しかも短く書くことはむずかしい★ちょうどワンルームマンションがコンパクトで全ての設備を備えているように★最近、必要があって池上彰さんの本をまとめて読んだ。かれの原点ともいえる『これが週刊こどもニュースだ』をはじめ、『伝える力』『伝える力2』などだ★最新のニュースを小学生、中学生に分かってもらえるのにどうするか。専門家用語を使わず、基本にもどって分かる言葉を選ぶ手法など、教えられるこが多い★日本には一七文字の俳句、川柳、三一文字の短歌、狂歌と短詩形芸術の伝統がある★それに最近はやりの一四〇字限度のツイッターもある★それを考えれば、三五〇字の本欄は十分すぎる字数だといえる★復活「硯滴」も三年目に入った。墨をするように身を削って、やさしく分かりやすい内容にひきつづき努力をしていきたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」365号(2013年2月)掲載


 「長」になったとたん、なんでも自分の思いだけでことをすすめていく人がいる。能力の高い自信家に多い★政治の世界では国政でも地方政治でも例がたくさんあるが、ここでは管理組合理事会についてのべたい★理事長の仕事は、何ごとも理事会の議を経ておこなうのが規約の定めであるのは周知のこと★ところが理事長になるとどういうわけか、権力を握ったように誤解し、思いつきをだれにも相談せず、つぎつぎと実行してしまう人がまれではない。会社のオーナー社長みたいな気分になるのだろうか★職務に熱心なのは大変いいことだし、思いつきも立派な内容であることが少なくない★しかしそれでも、手続きを規定通り踏むことは重要だ。論議(熟議)することが理事会全体をまとめ、みんなで協力して業務を進められる。それが管理組合の特質ではないだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」363号(2012年12月)掲載


 「近いうち」にあるはずのことがなかなか無い★口約束も契約の一種だ。法的にも成立する。だがその存在を証明することはむずかしい★口約束だからダメで、文書なら大丈夫だと思うかもしれないが、これもまた一筋縄ではいかない★管理組合がおこなう約束=契約のうち最も重要なものの一つが管理委託契約だ★たしかにちゃんとした契約書はあるのだが、ゴミ収集のあとの掃除がしていない。指摘をすれば、それは契約書にないという★館内清掃の項目はあるが、そこまでは書いていない★そもそも契約書を交わすのは、単なる善意に頼ってはダメだから文書でおこなうものだ。そうだとしたら、微に入り細を穿って書いておかなければならない★管理委託契約書は可能な限り細かく書く。契約書に書けなくても、交渉の議事録にでもしておくことと聞いた。誠に真理だ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」362号(2012年11月)掲載


 最近驚いたニセモノが二件★一つは一級建築士の登録証の偽造が各地にあったこと。それに免許なしで二千人を超える健康診断をしたニセ医師がいたことだ★それとは別にマンション管理士の全国組織が「業務独占」を掲げたことにもビックリした★ニセ何とか士やニセ何とか師が登場するのは、仕事が業務独占で、素人と専門家とのあいだに格段の力量の差があるからだ★一方、マンション管理士は、たしかに名称の独占は法に定められているが、彼らに匹敵する実力の持ち主は数多い★口は悪いが「身の程なんとか」といわれても仕方がないだろう★そもそもこの資格は必要があって誕生したというより、「瓢箪から駒」でできたもの。「官製資格商法ではないか」とまで噂された経緯がある★「業務独占」などいう前に、努力すべきはその業務能力の向上ではなかろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」361号(2012年10月)掲載


「お宅のマンションは誰が管理していますか」「○○管理会社です」★普通に交わされる問答だが×である★これは「法隆寺を建てたのは誰ですか」「大工さんです」というようなものだ★後の正解は「聖徳太子」でなければならない★問題は主体である。誰が主人公なのか。国交省の「マンション管理適正化指針」も、「管理組合が主体」とはっきりいっている★国会の原発事故調査委の結論に「歴代の規制当局は電力事業者の虜(とりこ)となった」とあった★その結果、監視・監督機能が崩壊した★この伝でいうと、管理会社の「虜」となっている管理組合、理事会があまりにも多いのではないか★これでは主客転倒。チェック機能がまるで働かない★願うことは、一刻も早く「虜」の身から抜け出すことで、あるべき主体を取り戻し、健全な管理組合運営を取り戻してほしいものだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」360号(2012年9月)掲載


 子どもは叱るより褒めよという。欠点を指摘するより長所を探し、伸びるように仕向けよということだ。誠にそのとおりで、教育の要諦である★子どもだけじゃない。大人だって、ことは同様のはずである。最近文庫化されたある著名作家の自伝をみていたら、同じような感想が書かれていた★成功したスポーツの監督やコーチの発言も、「ほめる」、「長所を強調する」ことを共通してのべている★だが凡夫の悲しさ、実際にはそうはいかない。何かというとすぐ相手の欠点が目につく、批判してしまう★管理組合においても同じだ。心すべきことだろう★ところで、ブーメランは投げたところに戻る。本コラムはどうかと言われれば、激励より批判が大部分だ。もっとも、批判をしなくなれば、本欄の存在価値はないかもしれないが★妄言多謝。いずれにしても反省しきりである。

集合住宅管理新聞「アメニティ」359号(2012年8月)掲載


 東日本大震災の3月11日、鉄筋のビルに津波を避けて助かった人が約一万人にのぼるという★その結果をうけて、津波のさいの避難場所に事務所やマンションのビルを指定しようという動きが全国的におこっている★たしかにこの点は、いままでの防災対策にあまりなかった盲点だといえる。大都市ではとくにこの点が重視されるのも当然だ★避難場所への指定は誰がみても大変よいことで、広がってきていると聞く。しかし、抵抗も多いとのことだ。プライバシーがある、防犯が心配だ、オートロックの解除は誰がやるのかなど不同意の理由がいくつも挙げられている★そうはいってもことは生命の問題であり、しかもほんの一時の危急のさいのことだ。マンションや事業所の関係者と自治体との話し合いが、諸難関をのりこえて、飛躍的に進展することを切に期待したい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」358号(2012年7月)掲載


 「ぶたのまんじゅう」といえばきたない感じだが、「シクラメン」といえば誰でもきれいだと思う。同じものだが、名前でずいぶん印象が違う★年金といえば、将来受け取る金額は確定していると思うのが普通だ。でなければ生活設計ができない★ところが企業年金の類は確定拠出型年金にむかっている。払う額は決まっているが、受取額は分らない。これでは受取額不確定年金ではないか★そのカラクリを拡大してみせてくれたのが、AIJの事件だ★一千億円をはるかに超える年金基金が消滅してしまった★老後の生活を支える年金の資金は、安定した運用につとめるのが常識だ★運用実態を偽る詐欺手法は大問題だが、それ以前になぜ元本保全のできない運用が許可されているのだろうか。恐ろしいことではないか★さてそこで、わが修繕積立金だが、本当に大丈夫なのだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」357号(2012年6月)掲載


 マンションでのトラブルに悩んでいる管理組合は多い★理事活動に関するある入門書は「大岡裁きこそトラブル解決の決め手!」と書く。「三方一両損」がその典型だという★なるほどと思う。当事者全員が満足する解決こそ最上で、よき指針だと思う★しかし、現実はもっと複雑でむずかしい ★トラブル相談にかかわってみると、全員が満足どころか、全員が不満のまま終わってしまうことも少なくはない★どうみても一方の横車、無理筋 というケースがある。何が何でも双方に満足を与えなければならないとする解決方法が正しいかどうかも疑問になる★片方が一方的に悪いケースでは、毅然として法律と規約の原則を貫き、説得し、承知をしてもらうことがあってよいと思う★考えてみると、悪にたいして断固として立ち向かい、鮮やかな断を下すのも大岡裁きの一面であった。

集合住宅管理新聞「アメニティ」356号(2012年5月)掲載


 30年以上前にベランダを居室に改装していたのは「共同の利益に反する行為」だから元に戻せと東京高裁が逆転判決を下した★千葉地裁では「違法は確かだが、旧所有者のやったことであり、いまさら元に戻せというのはあまりにも酷」との判決だったから、議論はいろいろありそうだ★世の中、法律の条文は動かせないとか、判例があれば絶対だとか思う向きもあるが、世間常識を反映してなかなか一筋縄でいかない問題も多いのが裁判でも実際だ★新聞記事だけで、判決の詳細を目にしていないので断定はできないが、管理組合の側からみると、高裁判決のほうがありがたいことは事実だ★じじつ共用部分の面積が減っているわけで、区分所有者間の公平という観点からも、高裁判決の方が妥当のように思う★事件は上告されており、まだまだ決着はつかないようだ。

集合住宅管理新聞「アメニティ」355号(2012年4月)掲載


 日本人は記録が得意なのだと思っていた★日本文学のすぐれた専門家であるドナルド・キーン氏は、第二次大戦中、戦場で入手した日本軍の記録や兵士の日記を翻訳する仕事に従事していた★米兵は日記が禁止されているが、日本兵は詳細な記録をつけていると自伝にある★そんなわけで、原発事故の政府対策本部などの会議の議事録がないとの話には耳を疑った。なかには記録をとる習慣がないとの発言もあったようだ★会議をしたら記録をとるのは当たり前。会議の開始前に誰が記録をとるかは必ず確認するだろう。まして公の機関ならば、記録担当の人間がいるはずだ★本当にないのだろうか。万一隠しているなどということはないか。そう思っても不思議でないほどの話だ★原発事故の関連では、情報隠しが再三に及んだが、これは秘密だから、記録を取るなと言ったのだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」354号(2012年3月)掲載


 本欄は一月が休載で、立春の二月から始まる。まずは、新年のご挨拶を申しあげたい★恒例の昨年の漢字一文字は「絆(きずな)」であった。人びとの「結びつき」に心を寄せる動きが、被災地だけでなく、全国的にひろがっている★「一人でも生きられると思っていたが、やはり多くの人々の結びつきで生きているのだと感じた」「これまでは守られたいという気分が強かったが、これからは守ろうという思いになってきた」などの発言や、自治会活動にはじめて参加したら、周りを見る目がかわったなど。一つひとつは平凡なことだけれど、重要な真理だ★大震災前には、現代は「個(孤)」の時代だ」とか、「無縁社会」、「自己責任」など、およそ全く逆の風潮が強調されていただけに、よけいに目立つ★貴重な芽だと思う。マンションのコミュニティづくりへの大いなる希望でもある。

集合住宅管理新聞「アメニティ」353号(2012年2月)掲載


 ボランティアの時代である。大きな流れは、阪神・淡路大震災の頃からだろうか★しかし無償の奉仕行為は昔からある。「情けは他人(ひと)のためならず」という言葉がある。誤解が多いが、この意味は、「情け」をかけてあげれば、その人もまた他人を助け、結局まわりまわって自分のためになるということだ★しかも本当に自発的なボランティアは、自分のために戻ってこなくても、いいことをしたという満足感がある。自己の向上でもある★ところで、マンション管理組合の役員は正確にはボランティアではない。自分のための仕事でもあるからだ。しかし、自分のために行なうことと他人のために行なうこととが全く一致するわけで、これほどいい仕事はない★ボランティア以上の充実したボランティアだ。どこか遠くへ行かなくても身近にあるこの仕事、やってみませんか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」351号(2011年12月)掲載


 ゲーテッド・コミュニティがアメリカなどで盛んだ★要塞都市などという大げさな訳語もあるが、要するに門(ゲート)と塀に囲まれ、閉鎖された住宅地をいう★最初はセキュリティを重視する富裕層だけのものだった。今では中産階級のグループにも広がり、内部で警察的機能まで持つものがあるという★一九八〇年代に始まり、すでに世界中で五万を超えるコミュニティがあるという★他人を寄せ付けないから外部の犯罪も入ってこないが、閉鎖性ゆえの弊害も多いと批判もある★わが国には道路法規などの制約などもあってか、同種の例は少ない。だが、最近急速に増加している超高層マンションは、性質からいえば全く同じ閉鎖社会だ★内部にコミュニティが成立しているかどうかそれ自体問題だが、火災や救急などの際、外部との関係が本当にうまくいくか、危惧も多い。

集合住宅管理新聞「アメニティ」350号(2011年11月)掲載


 餅は餅屋という。専門家のやることには万が一にも間違いない。これが常識だ★いや、そんなことはないだろう。猿も木から落ちるという諺もある。デタラメ氏という名前で呼ばれる専門家も出てきた。諺は一面の真理しか表わさない★今回の大震災そのものの予測、津波警報、原発事故とそれへの対応…残念ながら、それらのすべてが、専門家の判断や対応に大きな限界のあることを実証してしまった★専門性がどんどん深まっていく現代社会においても、ことを専門家にまかせるだけでなく、専門家の知識と一般人の常識との協力がますます求められるのが最近の動きだ★司法の世界で二年前に始まった裁判員制度もそうだし、今回の原発事故の原因究明に、原子力の専門家ではなくて、失敗学の研究者を長とし、原子力に全くの素人ばかりを集めたこともそれを象徴している。

集合住宅管理新聞「アメニティ」349号(2011年10月)掲載


 9月1日は防災の日。88年前のこの日、関東大震災が起き、十万人を超える死者を出した★避難訓練や防火訓練を行ったり、防災用品の点検をしたマンションも例年より多いと思う★関東大震災を見聞し、「災害は忘れたころに来る」という名言を遺した寺田寅彦があらためて注目され、著作の再刊もあいついでいる★寅彦は言う。文明がすすむほど天災の損害も増える。平生からそれに対する防御策を講じなければならないのに、いっこうにできていないのはなぜか★わが国が地震と津波の常襲国であることはだれでも知っている。阪神・淡路大震災以来、震災を忘れる間もないのが実情だが、寅彦の警告が今日もなお通用することに無念の思いを禁じ得ない★防災の日にさいして、あらためて寅彦の著作の読み直しをお薦めし、ともによく考えてみたいものだと思う。

集合住宅管理新聞「アメニティ」348号(2011年9月)掲載


 子曰、民可使由之、不可使知之。『論語』にある孔子の言葉★「民は由らしむべし、知らしむべからず」。これが、民を従わせるだけの存在とした封建時代の為政者の心得となった★今は、主権者は国民で、情報公開の世の中。事実を知らせないで国民に従ってもらうなどということはありえないはずである★ところが、そうでもない。原発事故をめぐっては、情報隠しが横行。失態がつぎつぎと出た★政府が隠す、東電本社が隠す、現場が知らせない……★この国難の時代。何よりもひろく情報を共有することが、心を一つにした行動につながる。そうすれば、賢明なわが国民は、悪い情報にも困難にも耐え、冷静に対応できる★ひるがえって管理組合の運営。組合員に事実を知らせないで「従って」もらおうとしていることがないか。この事態に学んで、われわれも自戒すべきだろう。

集合住宅管理新聞「アメニティ」347号(2011年8月)掲載


 麻雀で負けた賭け金は払わなくてもよい。法律でむずかしくいうと「公序良俗に反する契約は無効」である★硯滴子は仕事がら判例雑誌はよく見る。そこにマンションの文字があれば当然目が行く。先日面白い判例があった★マンション建設にあたって、建築確認後、注文者と請負人がつるんで悪事に及んだ。図面にない住戸を加えるなど大幅に建築面積を増やし、建築基準法違反をして建物を建てた★両方ともこのままごまかし通せると思ったら、どっこい。工事の代金未払いのトラブルなどが発生、裁判になった★一審はそれぞれの言い分を判断して両者の支払額を決めた。しかし、高裁では訴えそのものを棄却。そもそも世間の目をごまかした工事だ。公序良俗に反する。悪事の分け前の額は、裁判所で判断される権利ではないとなった。次は最高裁。さてどうなるだろうか。

集合住宅管理新聞「アメニティ」346号(2011年7月)掲載


 東日本大震災は数多くの教訓を残した。超高層ビルの地震対策もその一つだ★新しい技術の粋を尽くした超高層ビルは地震に強いといわれてきた。だが最近、ゆっくり揺れる長周期の振動には弱いということがわかってきた★震災前だが超高層ビルである都庁舎で改めて調査をした結果が発表されている。構造的には大丈夫で、建物が崩れることはないそうだが、ライフラインつまり配管や配線が切断されて、長期にわたって業務ができなくなるという★皮肉なことに建物のなかにおかれた防災対策本部が使用不能になるとのこと。これを防ぐ対策には建築費の数割にもあたる数百億円かそれ以上の費用がかかるとか★このことはもちろん超高層マンションなどにも当てはまる話だ。わが国の超高層マンションはすでに4ケタ。対策は大丈夫か。とても他人事とは思えない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」345号(2011年6月)掲載


 権利と義務は正反対の概念である。なにを今さら当たり前のことをという人がいるかもしれない★投票に行く、参政権といったら誰でも権利だと知っている。権利なら放棄しても自由だろう★しかし、投票をしないと罰則がある国もある。棄権者には旅券を発行しない国、結婚や離婚の手続きができなくなる国もあるとか★これでは投票も義務だといわれても仕方あるまいし、わが国でも投票も義務だと感じている人も結構いる★マンション管理組合の理事も、本来は区分所有者の権利のはずだが、ほとんどの人は義務だと思っているのが実情だ★現に理事にならない非居住の区分所有者に負担金を課す制度に最高裁がお墨付きを与えた。これも時代の流れかもしれない★ただ、今度、標準管理規約で、区分所有者は非居住でも役員資格ありと変更する。こちらの方が正論だろう。

集合住宅管理新聞「アメニティ」344号(2011年5月)掲載


 わが国の記録上最大という東日本大震災★何よりもまず、被災者へのお見舞いと犠牲者へのお悔やみを申し上げたい★今回の超巨大地震でとくに感じるのは危機管理の問題だ★NPO日住協はことあるごとにマンションでの危機管理の重要性を訴えてきた。今回はずっと巨大な国家的規模の危機管理への直面である★被害地域の住民が沈着で冷静だと外国からも評価されているのに、肝心の国や関係機関の不手際には正反対の声が聞こえる★とくに原発をめぐる東京電力と原子力安全・保安院、それに政府の対応がそうだ★何よりも重要な情報の公表が遅れる、部分的、表面的なことしか言わない、見通しが示されない★想定外などと泣き言をいわず、今こそ内外の英知を集め、断固として対応する時である。改めて頑張れという★マンションの危機管理にとっても教訓はつきない。

集合住宅管理新聞「アメニティ」343号(2011年4月)掲載


 世界遺産といえば、自然遺産に文化遺産。人の手の加わらぬみごとな自然や、古くて目を見張る建築物。どの遺産もぜひ現地を訪れたいと思うものばかりだ★最近知ったことだが、ドイツのベルリンでは「団地」が2008年に世界遺産に登録されている★写真を見ると、鉄筋コンクリート造り。まさにわが国のマンションと同様の造りだ★建設時期は1913年から1934年。遺産としては新しい。もちろん現役。外見だけからいえば、高級マンションとして通用するような姿だ。しかし、築100年に近い、堂々たる建築物、貴重な遺産だ★いまNPO日住協もマンション再生の法制化をつよく主張している。外国だとはいえ、こうした遺産≠ェあることは、マンションの再生に洋々たる展望をしめすもので、まことに力強い味方の出現だと思う。

集合住宅管理新聞「アメニティ」342号(2011年3月)掲載


 新しい年。本欄「硯滴」復活のごあいさつを申し上げたい★「硯滴」(けんてき)は、硯(すずり)にしたたらせる水のしずく。それがこのコラムの題名となった★ところで年賀状を書く筆ペンはザラにあるし、できあいの墨汁もよく見かけるが、最近、硯はほとんど見かけない★しかし、じっさいには硯は健在で、生産もされている。短い寿命に終わったワープロ専用機にくらべ、古墳時代から悠久の歴史を歩んでいる★さてこの先マンションの歴史、マンション管理のあり方はどうなるだろうか。年末年始の休みを、硯でゆっくりと墨をすりながら、とくと考えてみたい★ともあれ本欄は住宅にかかわる世相の動きを追いながら、全力投球につとめていきたい。

集合住宅管理新聞「アメニティ」341号(2011年2月)掲載