マンション銀座歩行者天国

マンションに百年住む (16)

日々の生活を明日に向けて


 このところマンションの建替えをめぐる動きが活発である。多摩ニュータウンで六四〇戸の団地マンションの建替え合意が整ったし、築12年で建替える事例も出てきた。前者は自己負担があるものの余剰容積を活用する方式。後者は国道の拡幅に伴うもので、基本的に国の補償で建替え費用が賄われる。
 これらの現象の後押しをするようにして国や自治体、さらには業界や政策学者が動いている。一九八〇年代後半から九〇年代初めにかけて、バブル経済の余波を受けて多くの団地マンションで建替えが検討されたが、最近の現象はその再燃ともいえる、しばらくは、団地マンションを中心にして建替えをめぐる議論が続くと思われる。そこでは、相変わらず建物・設備の老朽化、エレベーターがないことが建替えの動機とされる。
 しかし、これは表向きのこと。一部の例外は除いて建替えが可能なのは、現行の容積に余裕があり、交通の便が良く、極めつけは保留床の販売を引き受けるデベロッバーがいるかどうかに関わっている。ほとんどのマンションは容積率に余裕はないし、余裕があっても交通の便が悪くてはデベロッバーが乗ってくれないからお話にならない。つまるところ、現在の建替えは、国や自治体を初めとして経済効率の上に立った議論でしかないのである。
 圧倒的多数のマンションは、こんな経済効率論に無縁のところにあるのだから、粛々と日々の生活を明日につないでいくことを考えればよい。マンションが30年で老朽化などはとんでもない話で、すでに多くのマンションは建物の長命化に向けてさまざまな実績を重ねている。マンションは百年以上にわたって十分に住み継いでいけるのを検証することこそ、私たちに課せられた次の世代への責務であると思い決めたい。
 16回にわたったこの連載も、今回でお仕舞いにさせていただく。終わりにあたって、もう25年も前の話になるが、マンションの地上げに巻き込まれた女優の馬渕晴子さんが私に話された「マンションを通して社会を考える」という言葉を書き留めて、日ごろ管理組合運営に頑張っておられる役員さんたちへのエールとしたい。
 ご愛読ありがとうございました。(満田 翔)


(集合住宅管理新聞「アメニティ」2010年8月号掲載)