マンション銀座歩行者天国

マンションに百年住む (6)

マンションは地震から命を守る


姉歯事件を切っ掛けにして高まったマンションの地震への関心も、このところ静かになった。自治体の支援、助成も一向に進まないのが実態である。
ここには幾つか理由がある。まず一つはマンションの建物としての安全性が十分に認識されないことから起こった過剰反応の反作用。マンションは木造住宅に比べると格段に安全な建物である。ちなみに、兵庫県南部地震での死者は六四三四人だったが、マンションで亡くなったのは二〇人前後とされる。飛ぶように移動した家具で死んだ人が含まれる。建替えは百十数棟とされるが、過半は補修で再生できたと、当時、復旧に尽力した構造研究者は言う。つまり、マンションは人命を守る点できわめて安全で、壊れたら直せばよいと思い決めればよい。
耐震補強が進まないもう一つは、マンション居住を理解しない構造設計の専門家と、融通のきかない行政である。一九八一年に耐震規準が改正されたが、改正の前後では構造計算の考え方が大幅に違う。改正前の建物を改正後の考え方で耐震診断すれば、大方の建物は何処かで計算上の問題が生じる。構造の専門家はこれを解決するために、例えば、バルコニーのサッシの外に鉄骨筋交いを入れることなどを提案してはばからない。行政も規準を満足しないと支援してくれない。特定のバルコニーの窓外に鉄骨を入れることを総会で諮る勇気のある管理組合は稀であろう。
とはいうものの、政府の地震調査委員会は、この三〇年内に深度六弱の強震が首都圏を襲う確立は七〇%としている。私たちが生きている間に、遭遇する可能性は極めて大きい。ならばどうすればよいのか。端的に言えば、独立柱がある場合は、まず足元を固めることである。その上で、自分の住戸、特に寝室の家具が飛んで襲いかかってこないように備えたい。その他、大仰な耐震診断や、耐震補強をしなくても管理組合でやれることは幾つもある。この辺りは岩波新書『マンションの地震対策』に詳しい。(満田 翔)


(集合住宅管理新聞「アメニティ」2009年10月号掲載)