マンション銀座歩行者天国

14.指揮者の役割

音出しの切っ掛け♪

 指揮者の役割の一つは、オーケストラに、演奏の切っ掛けを与えること。私たちも重いものを持ち上げるとき、それを何人かで行うときには、「イチニーのーサン」などと声をかけて、持ち上げるタイミングをはかって、力を「サン」のときになるようにします。それとまったく同じ意味での切っ掛けを指揮者は行っています。マーチのように単純な拍子の曲については、出だしの切っ掛けがあれば、後は太鼓などがリードしているので、その後の指揮者の切っ掛けはほとんど不要といってもよいのです。ところが、4分の4拍子の次に8分の5拍子が突如出てくるとか、拍子の変化が激しい曲に関しては、その都度の切っ掛けが必要になります。

楽想の切っ掛け♪

 もう一つの指揮者の役割として、作曲家の意図を汲上げて解釈して深める、いわば楽想を練って、それをオーケストラのメンバーに伝えなければなりません。楽想の切っ掛けを伝えるために指揮をするということが、非常に大きな役割であり、こちらの方が8〜9割の仕事ではないかと思います。ですから、同じ曲でも指揮者が代わると、演奏が少しずつ違うのが普通です。例えば、ベートーベンの交響曲第5番、いわゆる「運命」。「ダダダダーン」という感じの場合もあり、「ダッダッダッダーーン」という、やや重い感じの場合もあります。音符はまったく同じなのですが、指揮者の楽想の違いなのです。これらはリハーサルで練習し、本番はいかにその成果を発揮するかなのです。(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ342号 (2011年3月号掲載)