マンション銀座歩行者天国

28.オーボエ奏者・古部賢一

媚びないオーボエ♪

 「オーボエ奏者・古部賢一の現在を聴く」というコンサートを東京文化会館小ホールで聴きました。演奏を通して感じたのは、音楽性豊かで生真面目ということです。
 観客に媚び迎合す、受けを狙った演奏というのがあります。自分の音楽がない、あっても自信がない、自信はあるがその表現をどうしてよいかわからない、といった演奏家が犯しがちです。あるいは、変に自己主張が強い、また、観客の拍手のみを求めているということからそうなるのではないかと思います。そこからくる演奏は、なぜ、その音色なの?なぜ、その歌い方なの? と、曲との表現に乖離があり、言うなれば、演歌をオペラ調で歌うようなものになってしまっているのです。



深い解釈による演奏♪

 古部さんの演奏は素直、真面目、真っ当、伝統的、しかもモダンといったキーワードが浮かび上がります。例えて言えば演歌は演歌調で、伝統的なものはそのように、譜面を深く読んで解釈し、演奏技術を駆使して音楽性豊かに表現しているのです。
 当日の演奏曲は、古部さんを出し尽くすために選ばれた曲ばかりで、難曲あり、たっぷりと歌う曲あり、すべて音楽的感性が最大限求められる曲ばかり。その演奏は、基本の訓練をいかに日々行っているかを知らしめてくれました。
 ファゴットとピアノとの三重奏曲では、木管同士の溶け込むような透明感のある重奏感といった趣で、なんともやさしい気持ちに誘ってくれました。 (服部 伸一 エッセイスト・写真家)




集合住宅管理新聞アメニティ356号 (2012年5月号掲載)