マンション銀座歩行者天国

34.グレン・グールド

演奏会は一回性♪

 演奏会は一回性によって成立しています。ある演奏会の演奏はこの世に一回しかなく、仮に録音によってCDで聴けるとしても、それはメディアによってであって、会場での生の演奏会ではありません。演奏家という職業はとても厳しく、その演奏会の成功には、いつも不安を感じるものです。
 成功には聴衆の質もあり、その反応等によって生身の人間である演奏家は気持ちを上下させてしまうのです。しかし、録音であれば、もう一度、ということも可能です。演奏家にベストを尽くしてもらうには、聴く側もそれなりの態度・マナーや覚悟が必要なのです。



テンポ際立つ音楽づくり♪

 今年はグレン・グールドの生誕80年、没後30年でした。彼は、演奏会の一回性に疑問を持ち、若くして演奏会の出演を拒み、放送や録音のみでの演奏を行いました。演奏会の出来の良し悪しは、様々な要因によります。彼は、演奏をするにあたり、余分な神経を使いたくなかったのでしょう。
 彼の音楽は、テンポを重視しており、そのゴルドベルグ変奏曲のテンポはバッハの心を感じているが如く工夫されており、聴く者の心をも掴んで離しません。一方、モーツアルトのトルコ行進曲やベートーベンなどでは、曲のよさが失せてしまっており、彼のテンポ感覚は曲によってばらつきがありますが、聴いてみる価値は十分あります。 (服部 伸一 エッセイスト・写真家)




集合住宅管理新聞アメニティ363号 (2012年12月号掲載)