マンション銀座歩行者天国

44.ありがとうございました

島倉千代子♪

 がなり立てるような歌い方が多い歌手の中で、静かなのに存在感があり、繊細で、でもしっかりと優しげに、そして高音部の裏声をきれいに響かせる独特の歌い方を60年近く聴かせてくれた島倉千代子さんが11月8日に逝去されました。デビュー前は、のど自慢荒らしとして名をあげていましたが、デビュー当時は「下手」という評があり、それを克服するために歌詞を読み込み、詞の世界に入り込んで歌うことに気づいたそうです。「東京だヨおっ母さん」(1957年)の切々と歌う表現に、多くの聴衆は感涙にむせんだものでした。亡くなる3日前に、新曲「からたちの小径」をレコーディングしたということも、その歌手人生を全うした凄さを感じます。



岩谷時子♪

 1916年生まれの岩谷時子さんは、宝塚歌劇団のスターだった越路吹雪さんが51年に退団して東宝の専属になった時に一緒に上京し、約30年間マネージャーを務めました。当時はそのことを知られていなかったと思います。彼女の名前をよく目にするようになったのは、作詞・訳詩家としてです。越路さんが歌う「愛の讃歌」「サン・トワ・マミー」「ラストダンスは私に」は彼女の代表作ですが、加山雄三の「君といつまでも」、フランク永井の「おまえに」、ピンキーとキラーズの「恋の季節」、島倉千代子さんの「ほんきかしら」など、多くの詞を提供しました。どの詞も、恋をやさしく、時に熱く紡いでいます。97歳で逝った彼女は、天国でも恋の楽しさを綴っているのではないでしょうか。
(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ375号 (2013年12月号掲載)