マンション銀座歩行者天国

53.唱歌「ふるさと」誕生100年

兎追いしかの山♪

 歌は世につれ、世は歌につれなどと言いますが、たしかに歌と世の中は連関している印象があり、したがって口ずさんでいた歌も、いつの日か忘れられていきます。一方、老若男女を問わず、長く人々に親しまれている曲もあり、そのひとつに唱歌「ふるさと」があります。作曲は1914年(大正3年)、当時の尋常小学校6年生用の唱歌で、今年で誕生100年。幾多の月日を経ているとは思えないほど色褪せることなく、私たちの心に染み込み、支えとなっている曲の一つです。3.11以降、とくにその思いを強くしている人々が増えているように感じます。作曲は岡野貞一、作詞は高野辰之。「春の小川」「おぼろ月夜」「もみじ」もこの二人のコンビです。



小鮒釣りしかの川♪

 小学生の時、夏休みになると友だちが「田舎に行く」というので、「何でうちには田舎がない」のかと思いました。長じては、年末になると仕事仲間などが「故郷に帰る」と言い、「ふるさと」は、故郷のある人の曲なのかとも思いました。「ふるさと」は生まれ育った「故郷」という土地の匂い、音、風、山、川、木、花といった風景のみならず、自己とそれを育んでくれた人々との関わりなどの日々とその追憶が詞と曲に溶け込み、「故郷的」なイメージをそれぞれの人が抱ける曲なのです。筆者が、あるコンサートを企画した際、「ふるさと」を観客に歌ってもらったところ、多くの方が涙腺を緩めていました。「ふるさと」はまさに、心のふるさと、思い出を象徴した歌なのだと思いました。
(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ384号 (2014年9月号掲載)