マンション銀座歩行者天国

74.中村紘子

「天才」を目の当たりにした!♪

 ピアニストの中村紘子さんは音楽家というより、魅力に満ちた知性を持ち合わせた文化発信者です。音楽とその周辺を彼女ほど繊細かつ柔軟に語る人を知りません。優しい語り口に加え、経験や学びを大胆に掛け合わせて奥が深い。その中村紘子さんが逝ってしまいました。がんと折り合いをつけたかにみえましたが、病魔に勝てませんでした。悔しい限りです。
 彼女に初めてお会いしたのは50年も前。その頃から彼女は人気があり、才能は開花していました。K市でのコンサート開始前の楽屋で、楽しい会話をしたこと、手が小さかったことが昨日のように蘇ります。その後、数十年にわたってコンサートやCDで彼女のピアノを聴きました。その度に感動し、心が癒され、気持ちは高められて勇気づけられました。


天国でも弾いてください♪

 ピアニストは自分の楽器を持ち歩くことができず、常にコンサート会場に備え付けのピアノを使って演奏しなければなりません。弾きやすくするための調整等はするにしても、ほんの少しの違いでも気になるものですが、それをものともせず世界で活躍し続けたことは本当にすごいの一言です。世界的なピアノコンクールの審査員を務め、日本では浜松での国際コンクールの審査委員長を務め、そこから輩出したピアニストも活躍しています。演奏家と育成を同時に続けた中村紘子の名は、音楽界に永遠に輝き続けます。
 彼女のピアノを、ぜひ聴いてみてください。


(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ408号 (2016年9月号掲載)