マンション銀座歩行者天国

80.船村 徹

柴又から矢切へ♪

 10数年前の3月、柴又の帝釈天門前参道商店街のお土産物屋さんなど、いくつかのお店を覗き、高木屋さんでよもぎ団子を買い求め、帝釈天にお参りをした後、江戸川の土手に出て、矢切の渡しの船着き場に向かいました。しばらく待って、矢切の渡しの船に乗船。乗客はシニア世代が多く、誰もが少し上気した気分になっているのがわかります。小学生の遠足気分といったような雰囲気が渡し船全体を覆っていました。
 4代目船頭の杉浦さんが出航を告げ、渡し船はすべるようにゆっくりと川面を這うように進みます。真っ青な空、川面がキラキラと光り、這ってくるような風も心地よく、強い陽射しを弱めてくれ実に爽快です。


矢切の渡し合唱団♪

 その時でした、渡し船の中程に乗っていた女性が「連れて〜」と歌い始めたのです。他の乗船客はそれに呼応、拍手とともに「逃げてよ〜」と矢切の渡し船合唱団が即座にでき、江戸川に歌声が広がりました。はじめに歌い出した女性の気持ちが、他の人たちの同じ気持ちに同期したのでしょう。「矢切の渡し」(83年)を作曲した船村徹さんが2月16日に、5000曲以上の作品を残して旅立ちました。優しい口調の奥には作曲界に対する挑戦的な側面もあり、日本語である詞を重視した作曲にそれらが感じ取れます。「別れの一本杉」(55年)が出世作、「王将」(61年)、「東京だョおっ母さん」(57年)、「みだれ髪」(87年)、「風雪ながれ旅」(80年)等など。3月は、矢切の渡しと船村徹さんの月。一緒に歌った皆さまと船村さんに感謝です!


(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ414号 (2017年3月号掲載)