マンション銀座歩行者天国

85.安西愛子

戦後の曙光♪

 安西藍子さんが、4月13日に100歳という天寿を完うされ、天国の歌手になりました。
 72年前の敗戦は、日本人の世界観を打ち破られると同時に、疲弊し打ちひしがれていた人々にとっては、むしろ復興の光を見出そうとする切っ掛けにもなりました。ヤミ市での売買、ヤミ米などが生活を支え、さらに社会インフラ整備の槌音が一斉に聞こえてきた時、曙光を放った一人が安西愛子さんではなかったかと思います。ラジオから聞こえるその歌声は、多くの人の心に泉を与え、不安感を払拭し活力と勇気が湧出したのです。彼女の歌は、日本語を丁寧かつ明瞭に発音し、生き生きとした表現によって、その内容が鮮やかに浮かんでくるのです。


ラジオと童謡・唱歌♪

 ラジオという映像のない媒体が、むしろ聴衆の想像力を膨らませることになっていたと思います。歌は歌詞をメロディーに乗せるわけですから、メロディーが良くても、肝心の歌詞が相応の内容でなければ、聴き手に伝わりません。しかも、それを伝える歌い手は単に歌う役割を超え、詩の内容を理解し、そのメッセージをメロディーに融合させてこそ、聞き手の心に届けられるのです。この20年間ほどは、安田祥子・由紀さおりの姉妹による童謡、唱歌のデュオが人気を博しています。
 童謡・唱歌は日本人の感性を育くみ、一方、言葉の大切さをも教えてくれています。


(服部 伸一 エッセイスト・写真家)


集合住宅管理新聞アメニティ419号 (2017年8月号掲載)