オリーヴオイルを旅する

1.旅のしたく

 いま、わが家の食卓は、ひと頃とは大きく様変わり。その原因はオリーヴオイル。
 揚げる、炒める、煮込むなどかつてキッチンを席巻していた植物油の類は鳴りを潜め、その座をオリーヴオイルに明け渡すことと相成りました。



 地中海ダイエットが世界的に注目されて以降、健康志向を背景に日本の食卓にも大きな変化が現れてきました。一九八〇年代後半のイタめしブームをきっかけに、その後のイタリア料理の台頭は目覚ましいものがあります。外食の大雑把なカテゴリーとされてきた「和・洋・中」の概念もいまや極めて抽象的で実態にそぐわない区分けとなってしまいました。かつては洋≠フ象徴でもあったフランス料理も、イタリアやスペイン料理などと同様に洋食≠構成するカテゴリーのひとつに過ぎなくなっています。これほどまでに日本に根づくことになった地中海型食事の代名詞とも云うべきイタリア料理、そのカギは健康志向と肩の力の抜けた庶民性豊かな食事のスタイルにあったと云えそうです。
 さて、そのイタリア料理の基本中の基本食材の地位を揺るぎないものにしているのがオリーヴオイルです。
 今号からしばらく、イタリアを中心にしながら、オリーヴオイルをめぐる旅に出たいと思います。読者のみなさまもご一緒に、ブォン・ビアッジョ!そして、旅のしたくは予習から。次号は、なんと六千年もの長い間、愛されて止まないオリーヴオイルの歴史をひも解きます。(このシリーズでは、原語をできるだけ忠実に訳すため、オリーヴオイルの表記を用います)(M)

(2014年4月号掲載)