旅スポット

8.沖合周遊クルーズの旅記

集合住宅の原点を見るような「軍艦島(長崎)」
集合住宅の原点を見るような「軍艦島(長崎)」

島影が見え始めると、船の乗客達が一斉に立ち上がった。後方にいる人は前の人の肩越しにしか島が見えない。やがて、カメラの放列が始まった。 軍艦島は戦艦土佐に似ていることから「軍艦島」と名付けられたとのことだが、近づくにつれ、軍艦というよりは外国によくあるような「海の城塞」といった感じだ。ここに最盛期は5千人が暮らしていたと聞いて、ただ驚くばかりだった。全長(南北)約480メートル、幅(東西)約160メートル、本来の島に周囲を人工的に造設したこの島は実に写真うつりがいい。だから、船内ガイドの説明も上の空でカメラに夢中になりすぎてしまったことを帰ってから反省しきり。炭坑と集合住宅の島としての歴史が絡み合っているこの軍艦島の「通」になるには、数回周遊しないと島の全てを理解出来ないような気がする。

夏休みのシーズンが終わったというのに船内は混み合っていた。何故か大人気なのだ。若いカップルが多いのが意外だった。長崎にあるこの軍艦島は正式名を「端島(長崎市所有)」というのだそうだが、このほか全国に軍艦島と名のつく島が数カ所あるとのこと。

人口密度世界一といわれる長崎の軍艦島は明治3年に開坑し昭和49年に閉山した炭坑の島で、現存する集合住宅はこの島で働く人々のために大正5年に建てられた日本で初めての鉄筋コンクリートのアパートなのだそうだ。しかし閉山と共に無人島となり、廃墟となってしまったので、建物等の荒廃著しく、危険なため、この島への上陸は通常禁止されている。したがって今のところ、この島を見学するには漁船等をチャーターするか沖合周遊クルーズを利用するしかないようだ。この島を保全して世界遺産に登録をしようとする運動も始まっている。 (K)


アクセス

岸壁も相当傷んでいる
岸壁も相当傷んでいる

長崎港から周遊クルーズ専用船で約100分、約3500円。全便予約制の不定期航路。要問い合わせ(やまさ海運рO95F822F5002)

参考資料

多数ある中の一つ「1972 青春 軍艦島」。カメラマン大橋弘著、新宿書房、2300円。長崎港ターミナルでも販売。軍艦島の生活が生々しく紹介してある1972年当時の写真集。島へ時々行商のおばさんがやってくる話、島の質屋や居酒屋の話、ドアのないトイレの話、島の葬儀の話などなど。

建物は各所で繋がっている
建物は各所で繋がっている

(2008年10月号掲載)