旅スポット

10.奥州安達ヶ原の鬼婆あー伝説

観世寺境内の石の岩屋
観世寺境内の石の岩屋
寺内の宝物館には鬼婆の使った出刃の包丁などが陳列されている

 その昔、奥州安達ヶ原は阿武隈川沿いに拡がる広大な原で、旅人がよく道に迷うところでもあった。
 物語は『都のお屋敷で、病弱な姫の乳母「岩手」(後の鬼婆)が、「妊婦の生き肝を飲ませれば治る」という易者の言葉を信じ、姫の病気を治したい一心から遠く陸奥に旅立ち、たどり着いた場所が安達ヶ原の岩屋だった。ある晩、若夫婦が一夜の宿を請い、身ごもっていた若妻が急に産気づいて、夫が薬を求めて外へ出て行った。岩手は、妊婦の生き肝を取るのはこの時とばかりに出刃包丁をふるって襲いかかり、若妻の腹を裂き、生き肝を取り出した。今際の息の下で「私達は都で別れた母を探して旅をしています」と若妻から聞かされ、若妻の持っていたお守袋を見てびっくり。この若妻こそ、昔別れた愛しいわが娘であることが分かって、岩手は気が狂い、鬼と化してしまった。以来、道に迷って宿を求めた旅人を殺し、生き血を吸い、肉を喰らう鬼婆となる。



鬼婆を埋めた塚「黒塚」
鬼婆を埋めた塚「黒塚」



 ある日、安達ケ原を訪れた紀州の僧・東光坊が鬼婆の部屋の秘密を知り、急ぎ逃げると、出刃包丁を持った鬼婆がすさまじい剣幕で追いかけてきた。僧は最早これまでと観念し如意輪観音に祈願するや、尊像が虚空はるかに舞い上がって一大光明を放ち白真弓で鬼婆を射殺してしまった』という、おどろおどろしいお話。この鬼婆を埋めた塚を「黒塚」といい、衝撃的な運命をたどる母と娘の物語は歌舞伎や謡曲などでも知られている。
 この物語が、今開催中の二本松城菊人形展の会場で「鬼婆伝説・奥州安達ヶ原(10段返し)」の演目で菊人形により演じられている。



菊人形展の会場で上映中
菊人形展の会場で上映中

(2010年11月号掲載)