工事事例

大型団地の給排水設備改修(2) 3年がかりの綿密な計画による優先順位設定と段階的改修
コンセプトは「高品質、ローコスト」

若葉台第一住宅(埼玉)

■2007年度の改修実施設計
改修予算と改修範囲を決めた基本計画を受け、具体的な材料選定や配管ルートなどを検討し設計図書を作成していく。
今回のコンセプトは「高品質・ローコスト」。一見相反したものを追い求めていくことになるが、「安かろう悪かろう」では建物は長持ちしない。今回の設備改修は、団地を100年使っていく上での通過点として捉え、費用の掛けどころにメリハリを持たせるチョイスを行った。
メーターボックス内の給水立て管は、ステンレス加工管によるプレハブ工法を採用。現場での施工を極力無くし品質を安定させ、高層建物には地震時の層間変形に追随できる可とう性のある継手を採用した。また、土中埋設部分の給水メイン管は、沈下や地震に強い水道配水用ポリエチレン管を採用する一方、ピット内などコストの押さえどころには安価な耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管を使用するなど、コストと性能のバランスを図った。
排水管については、単管式排水システムを採用することで、ローコストでありながら性能を向上させることができた。
工事見積は、公募により集まった中から8社を選んで取得。ヒアリングを行いながら最終的に最も安価な建装工業(株)に決定した。台所系排水管の更新工事は、室内への入室が大前提の工事なので、合意の形成が大切である。その点については、説明会の開催や広報誌の作成などを理事会・修繕委員会さらには広報委員会という充実した管理組合組織が率先して行った甲斐あって、特に大きな反対意見もなく総会決議を得た。


室内工事
室内の工事もトラブルなく

■2008年度の工事実施
工期は平成20年7月1日〜平成21年5月の11カ月。前半に外構と住棟共用部分の給水管改修を行い、後半に室内の台所系排水管更新を行った。本施工前にはパイロット施工という事前検証施工を行いながら品質の確保に努め、大きなトラブルもなく無事竣工を迎えることができた。
特筆すべきは、入室工事の日程を流れ作業上、強制的に工事側で設定することになるが、全居住者から理解を得られ、寸分の狂いもない日程で入室工事ができたことである。無論、工事期間中、様々な出来事が巻き起こるが、理事会・委員会・請負施工者・設計監理者による円滑な対応と、むしろその事よりも、その裏側で理事会・委員会の有志達と管理室窓口の事務員が奮闘されていたお陰であることは言うまでもない。


排水管状況
室内の排水管の状況

■そしてこれから

普段目に見えない設備のトラブルは生活支障に直結するので、外装工事より大切なものである。資金的にゆとりがあれば、いっぺんに改修する事が最も合理的ではあるが、今回のように、
・限られた予算の中で
・より効果的に
・より効率的に
どれもが重要な修繕項目の中から、苦渋の選択で「優先順位」を設定していくことの方が現実的かもしれない。それには、やはり長期修繕計画という長期的なシミュレーションと一緒に考えていかなれければならないが、将来と目先工事の同時検討を行うには、管理組合の崇高な意識と熱意が欠かせない。マンションの寿命を決めるのは、管理組合しだいである。
工事竣工後まもなく、この管理組合は100年団地を次世代に残すため、2年後の大規模修繕工事に向けて、早くも始動している。  (柳下 雅孝)

設計・管理/鰍hK都市・建築企画研究所、宮城設計一級建築士事務所、施工/建装工業




<アメニティ新聞322号 2009年7月掲載記事>