工事事例

建替えセミナー開催 「等価交換」「自主建替え」をみっちり学習 /NPO日住協埼玉県支部

 

 マンション建替え事例が全国規模でほぼ170件を数え、建替え円滑化法を適用した事例がそのうちの約50例とされる。円滑化法施行後も予測に反して低迷するなか、NPO日住協埼玉県支部は6月12日、午後1時30分から4時30分まで、大宮駅前のソニックシティーで、団地型マンションの建替えに成功した旧国領住宅団地(東京都調布市)と旧町田山崎住宅団地(町田市)から当時の役員経験者を招き、等価交換方式を採用しての建替え実例と、いわゆる区分所有者の団体が自主的に建替えを行った事例について、その詳細を聞いた。参加者は大宮東新井住宅等から約60名が集まった。 (本紙客員編集委員・明海大学不動産学部兼任講師 竹田智志)


                  

                      貴重な経験談に会場は定員いっぱい

 両住宅団地とも、建替えプランは大きく異なるものの、計画から実現まで20年を超える長きにわたって検討を重ね成果を得た点と都市計画法上の一団地といった網かけを自治体と折衝を重ねることでクリアとした点が共通する。国領住宅団地が「アトラス国領」となる過程で、住戸数は約2・2倍の320戸に増え、容積率も約3倍の200%を使用。セミナーではその間の都市計画法上の「一団地の住宅施設」といった法制度の枠組みを取外し、現行容積を確保する自治体との交渉過程をつぶさに語った。


  一方、旧町田山崎住宅団地は、同様な法制度のクリアに加え、これまでになかった取組みは、建替組合が、建築主に団地の建替えを請負わせ、代金を支払う手法を採用した。この代金を賄うために、旧住宅の敷地の一部(約1万2700m2)を第三者に売却する手法と併せ、従前の区分所有者は11万円から1100万円を負担し新住戸を取得。これまでにない建替えを実現した。
  国領住宅と町田山崎住宅の立地を考察してみよう。どちらも東京都下に位置し、ターミナル駅は新宿駅。一方は京王線沿線で最寄駅は「国領」、乗車時間ほぼ20分で移動可能、いわゆる駅前団地に近い好立地である。もう一方は小田急線沿線で最寄の駅は「町田」、約30分の乗車時間に加えバスを使わざるを得ない交通アクセスである。


  建替え構想が現実化する過程で、どちらも従前区分所有者の負担を抑える取組みを展開してきたが、事業協力者であるディベロッパーが参加でき得る状況とそうでない状況を露呈する点で決定的な差異が生じた。町田山崎住宅は建替え構想の当初から、いわゆる等価交換方式を採用し従前の区分所有者の負担を極力抑えた建替え実現を目指した経緯がある。ところが、高層・高密度のマンションに建替えても、販売の目途が立たず、事業協力者が参加できない。
  そこで登場してくるのが、事業協力者なしで建替えを実現する「自主建替え」という考え方である。まず、改正区分所有法上の建替決議を経て、建替え円滑化法上の建替組合の認可を得、設立させ、この組合が建築請負業者を選定・契約を行って着工に至る。建築資金は当初、金融機構からの借入れも含まれたが、同機構からの借入れは行わずに済んだ。


  時間を延長して行われた会場全体との質疑応答では、コンセンサス上の感情のもつれの有無を問う声や長期にわたる建替え構想の間に、リフォーム等の工事を進めた場合の経済的配慮等を問う、踏み込んだ議論がなされたが、なかでも注目されたのは、町田山崎住宅に関するもので、「いつまでに建替えできるといった約束を住民と交わされたのか」といった指摘があり、これに対し佐藤松子氏は、平成元年からの組合内部での建替え構想化、同10年の臨時総会でのコンサル委託を諮る決議を経て、その後もプランは二転、三転。「本当に最後まで信頼してついてきてくれた」と、この20年を振り返るように述べた。なお、昨年10月時点の建替え実例は138件、準備中が35件ほど。建替え円滑化法施行後も50件を超える程度でしかないとしている。

◆建替えデータ

アトラス国領 (旧国領住宅団地、調布市、64 年入居、144戸、専有床面積46・48m2、 中層4階建7棟、13,200m2)高層14階建、 地下1階他計7棟320戸、57〜107m2   08年竣工、法定建替え・円滑化法。

町田山崎住宅 (町田市、68年入居、300戸、 専有床面積48m2、中層5階建9棟、27,700 m2)高層10階建2棟305戸、31〜83m2、13, 700m2 09年竣工、法定建替え・円滑化法。

<アメニティ新聞334号 2010年7月掲載記事>