快適な住環境の向上と建物の耐久性を目指した大規模修繕工事:2012年11月号掲載

1、建物概要

 T住宅は、小田急線読売ランド前駅からバスで約5分。多摩丘陵の豊かな自然に囲まれた交通至便なところにある。
 建物は昭和45年竣工、RC造5階建て、20棟、戸数412戸の旧公団分譲の団地である。

2、大規模修繕工事までの経緯

 同住宅の大規模修繕工事は今回で3回目。前回の大規模修繕工事から14年経過しており、その間特に大きな工事は行っていなかった。また建物も築40年を超えようとしていたことから、劣化の進んだ箇所も多く見られたため、住環境及び資産価値の向上を目的とした工事を行うことにした。

 従って、今回の大規模修繕工事を行うに当っては、全戸の居住者に対してアンケート調査を実施して、居住者の意向を改修仕様に反映させた。

 その結果、今回は今後20年間、建物躯体の維持を目的に、外壁の補修工事やバルコニーなどの防水工事を徹底して行うとともに、玄関ドアやサッシの更新、雑排水管の更新など住まいの快適性、防犯性、断熱性能の向上も目的とした工事を行うこととなった。

工期平成24年3月~10月、設計・監理=(株)翔設計。施工=(株)カシワバラコーポレーション(外壁等補修工事、防水工事、塗装工事、雑排水管更新工事)、三協立山(株)(玄関ドア、サッシ窓更新工事)。

3、主な工事の内容と特徴

(1)外壁等の補修工事
 漏水による躯体の劣化を防ぐため、外壁等のひび割れ・欠損・浮きを入念に調査。

 塗装面のひび割れは割れの大きさに応じて下地補修を行った。コンクリート、モルタルの欠損部は鉄筋腐食の有無を調べ、防錆処理を施したうえで、樹脂モルタルで充填した。

 モルタルの浮きは、アンカーピンとエポキシ樹脂でコンクリートに固定した。
 また外壁タイル面は、剥落による漏水や人身事故を防ぐため、美観上の支障や落下の危険が少ないものはタイルを残し、割れや破損が生じているものはタイルの部分張替えを行った。

(2)防水工事
 屋上は改質アスファルトシート防水に改修した。階段室及びバルコニー床は、ウレタン塗膜防水が施されていたが、塩ビシート複合防水を施し、美観性と快適性の向上を行った。

美しく生まれ変わった建物外観

(3)雑排水管更新工事
 共用雑排水竪管に加え、浴室雑排水管がコンクリート床下配管であることから共用部分と考え、浴室雑排水管及び洗面台の排水管を長期使用に耐える塩ビ管(耐火二層管)に更新した。

(4)サッシの更新工事
 各戸の小窓を除く、掃出し窓、腰窓のサッシをカバー工法にて更新を行った。あわせてガラスをペアガラスにすることで断熱性を高め、快適性も向上した。

(5)玄関ドアの更新工事
 玄関ドアもカバー工法により全戸新規に交換した。
 先の震災では建物に目立った被害は無かったが、一部住戸でドア枠の変形による閉じ込めが発生。今後大地震が起きても避難できるよう、ドア枠を耐震性能のあるものに改修。また防音性や防犯性、断熱性が高まり、快適性も向上した。

全戸取り替えた玄関

(6)その他工事
 階段室及びエントランス、外灯の照明器具をLED器具に交換する工事を実施し、バルコニーにおいては、天吊物干し金物を更新した。

4、管理組合主導の工事

 大規模修繕工事に加え、住機能の向上に重要であるサッシ・ドア更新工事、雑排水管更新工事などを実施することで、団地全体の資産価値向上に繋がり、今後の建物のトータルライフサイクルを見据えた、管理組合及び理事会の判断は賢明な選択といえる。

 また、サッシ・ドア更新工事、雑排水管更新工事は、居住者が在宅しなくてはならず、空き家や不在住戸があると工事の妨げになる。そのような、トラブルを避けるべく、理事会が主体となり、居住者への広報や不在住戸の対応を率先して行い、工事の進捗を助けたことも大きな特徴であった。

(設計・監理=株式会社翔設計)
(大規模修繕工事・雑排水管更新工事=株式会社カシワバラ・コーポレーション)
(玄関ドア・サッシ窓更新工事=三協立山株式会社三協アルミ社)
(施工会社=積水工業株式会社、株式会社冨士防、資材メーカー=関西ペイント販売株式会社、田島ルーフィング株式会社)

(2012年11月号掲載)