中層棟給排水設備改修工事 専有部分(一部)の更新で初めて専有部分に立入り工事:2012年12月号掲載

 NPO日住協埼玉県支部は10月13日「K団地」の給排水設備改修工事見学会を開催した。見学会では、管理組合の失敗も報告されるということから、他管理組合関係者が多数詰めかける盛大なものとなった。

1、建物概要

 K団地は、中層棟(5階建)RC造4棟120戸、PC造11棟280戸、低層棟(2階建)RC造18棟83戸、PC造14棟65戸、計47棟総戸数548戸の団地で、旧公団分譲、昭和57(1982)年入居。築30年を迎えた。

2、計画決定までの経緯

 同団地は、平成19年の屋根・外壁改修を中心とした第2回大規模修繕工事終了後、長期修繕計画を見直し、平成26年を目途に、中・低層棟の共用、専有部分の給排水設備改修工事を行う方針で計画に入ったが、共用部・専有部の同時更新は修繕積立金の大幅な引き上げが必要となるため、この時点では共用管のみの更新工事と決定した。

 その後管理組合は、更生工法の理解も深め、工事費用軽減も期待されたため、平成21年度の臨時総会では更生も検討することに変更。同年、公募により設計・監理事務所(以下A事務所)を決定し業務委託した。

 この時、管理組合の意向は更生に傾き、その旨をA事務所に伝えていたが、A事務所は初めから更新のみを主張。しかも工事費用は修繕積立金の見込額を大きく超えていた。また更新は工期も長く、工事中の生活上の問題も懸念されたが、それらへの十分な説明も無かったため、提案を受け入れることはできず検討作業は停滞してしまった。

 しかし、将来はいずれ更新が必要との考えもあり、同組合は更新に方針を変更。さらに低層棟は給排水管とも共用管が少なく、改修も急を要しないため、今回工事から除外することとした。

 そして、平成22年度の通常総会で、更新への方針変更の了承を得たが、方針検討の論議の中で、管理組合はA事務所とパートナー関係の継続は困難と考え、長期修繕計画で予定した金額で更新工事を組み立てられる新たな委託先を選定し、(有)トム設備設計・(有)マンションライフパートナーズに決定し、中層棟給排水設備改修工事の基本計画が完成した。

 翌平成23年の臨時総会で、施工会社:京浜管鉄工業(株)、工事期間:平成24年6月~12月とする中層棟給排水設備改修工事の実施を決定。

 また同計画では、給排水管の専有部分(一部)も管理組合工事として一体的に更新することが承認された。

3、工事の概要

 同団地の中層棟は、建物の構造や間取が棟により異なり、既設管の材質も異なるため、別表の4ブロック(A、B1~3)に分けて工事を行った。

 Aブロックは公団標準設計で建設され、排水枝管は下階の天井内にある「スラブ下配管」だったが、今回の改修でスラブ上配管(自階床内コロガシ配管)になるよう標準仕様を改めた。タイル貼り在来浴室の排水口は、オプション(自費)でユニットバス化を推奨し、オプション実施住戸は組合工事と同時施工で浴室のリフォームと浴室排水管のスラブ上化を実現した。見合わせた住戸は将来浴室をリフォームする時にスラブ上に接続できる「将来接続口」を設け、リフォーム細則を改正し将来の浴室リフォームに道筋をつけた。 (工事範囲並びに内容は別表参照)

4、住戸内工事にも対応

 今回の工事は、同団地で初めて専有部分に立ち入る工事となったため、住戸内工事に伴う解体・復旧をどこまで組合負担で行うかで、居住者に説明、理解を求めるなど、管理組合が居住者の負担感の軽減に努めたことが、工事の進捗を大きく助けた。

(設計・監理=有限会社トム設備設計、有限会社マンションライフパートナーズ、施工=京浜管鉄工業株式会社)

(2012年12月号掲載)