改修工事情報

若手の執行部がリードした初めての改修 グランセリーナ(東京都町田市)

はじめに
 国道246号線(旧大山街道)を都内から厚木に向かって南下していくと、町田街道手前の高台となる「すずかけ台」あたりから右手の遠くにひときわ大きなマンションの威容が見えてくる。これがグランセリーナである。2002年(平成14年)に竣工した鉄骨鉄筋コンクリート造18階建て412戸の分譲マンションで、1棟ではあるがパークウイング(東棟)、サウスウイング(南棟)、ガーデンウイング(西棟)の3つのブロックにより構成され、構造としては全体で5つの棟がエキスパンションジョイントにより繋がれている。築10年目に行われた第1回目の大規模修繕工事を紹介したい。



足場架設が始まったメインエントランス付近


3.11
 東日本大震災では首都圏のマンションにも少なからず被害を及ぼしている。グランセリーナもエキスパンションジョイントや非構造部材である雑壁に損傷が現れていた。そこでまずは居住者への正確な情報開示を目的として、建築・構造・設備の総合的な観点で被災状況を把握することになった。2011年10月から構造についての調査は「震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」(国土交通省住宅局建築指導課監修・財団法人日本建築防災協会発行)に基づいて行い、さらに建築二次部材の脱落等による二次災害の危険性や避難安全性、設備インフラの損傷による生活困窮度までを網羅している。結果としては特に構造技術者により「主要構造部については損傷がなく構造耐力上の問題はない」との判定に説明会では安堵の気色に包まれた。しかしながらタイルの修復など足場を要する箇所もあり、長期修繕計画で予定されている大規模修繕工事を2年前倒しして修復を合わせることがコストのスケールメリットが大きく費用対効果が高いこともわかった。大規模修繕工事への合意形成はこのように進んでいった。


工事のポイント
 着工は2012年7月である。ちょうど足場の架設と東北の徐々たる復興が重なり、資材の調達や職人の確保にも端緒から施工者は苦労している。材料の値段もこのへんから上がりはじめている。躯体改修においては従来のコンクリート、モルタル、タイルの補修に加えて、雑壁のせん断ひび割れについては、エポキシ樹脂ならびに無収縮モルタルの充填にアラミド繊維補強を併せている。構造計算上は無視される雑壁の耐力ではあるが、地震時に実質的に作用する部材として新築時の性能に回帰させる意図がある。外部のみならず内部からも作業を行ったため、該当住戸には全面的な協力をいただき、内装のクロス仕上げ、プラスターボード下地、木胴縁、ウレタン発砲断熱材などの撤去および復旧が道連れ工事となった。
 タイルの浮きについては当初見込みを大きく上回ったため、ひび割れや欠損、陶片浮きのタイルは張り替えるが、張り付けモルタルで浮いているタイルはステンレス全ネジピンを併用したエポキシ樹脂注入工法を採用した。試験施工では注入跡がほとんどわからない仕上げまで実現できたが、この大きな規模の全体の仕上がりとなると、なかなか納得いくまでの道のりは長かった。
 付属棟の駐車場棟は最上階の床防水改修を行っている。着工前から近隣の代替駐車場をいかに確保するかが課題となった。場内の空きスペースも駆使して最大移動台数を算定し4工区に分割した移動復旧工程に協力をいただいた。材料の飛散付着については下階の車輛所有者からもお叱りをいただき、一部グレーチングで採光もとれる駐車場の養生のあり方も再考させられた。



車輌のの移動に苦心した駐車場棟防水改修


若い力
 発注者として工事の執行にあたってくださった方々は実に若い。現役の今一番仕事に忙しい方々ばかりだ。駐車場の移動も1軒1軒説得していただいた。共用部扱いとして住戸内の換気扇ダクト清掃も連絡がとれないお宅を朝に夜に1軒1軒回ってもらっている。隔週に行った修繕委員会への出席もさることながら、工事中盤からの足場解体前に行う発注者検査も保険を付して足場の上から全てのフロアを検査してもらっている。バルコニー側も共用廊下側も共用廊下の内側も然りだ。当然ながら仕事の都合で参加できない方もいるがお互いにメンバーを補いながら一つの共同体として機能している。おそらくは工事の準備段階から竣工まで多くの時間を割かれている。家族と過ごす時間、子どもと接する時間、自分個人としての時間を犠牲にされている。それを自分の財産だけでない管理組合全体の財産への奉仕として、むしろ当たり前のように振る舞われた皆さんには頭が下がる想いがする。マンションにとってはこの若い力と結束力が最大の財産に違いない。
 これから2回目、3回目の大規模修繕、設備の改修、予測し得ない自然災害もあるかも知れない。それを乗り越える原動力はすでに備えられている。マンションは管理を買えとよくいわれるが、管理を司る主体性は居住者一人一人が力をあわせて培っていくものだと気付かせてくれた。


「設計・監理=宮城設計一級建築士事務所、施工=日本ハウズィング株式会社町田支店」


(2013年7月号掲載)