タイル張りマンションの異常事態(2016年10月号掲載)

 築12年経つマンションですが、6年程前(築6年目)外壁のタイルが一部盛り上がって剥落したため、マンション売り主に足場を掛け補修してもらいました。それから5年後にその近辺のタイルが再び広範囲に剥がれ、またその2ヶ月後、そことは離れた外壁でタイルの剥落が発生しました。再度売り主に工事に欠陥があると思われるので対処してほしいと要求しましたが、5年のアフターサービス期間がとっくに過ぎているので、対応は出来ない。タイル剥落する前に管理組合が定期点検し維持管理していればタイル剥落は発生しなかったのではないかとの回答でした。

 アフターサービス基準による保証期間が5年となっていると、それ以降に発生或いは発覚したタイルの不良は管理組合で補修するのが通常なのでしょうか?

 マンション購入者はマンション売り主と売買契約に基づき完成したマンションを購入しています。通常は売り主が提示した保証条件であるアフターサービス基準に基づき契約し購入しているため、購入後の保証はアフターサービス基準が基本となります。アフターサービス基準では、大半は2年保証で、コンクリートのひび割れやタイルの浮き・剥がれなどは5年、漏水や構造耐力上の欠陥を10年としています。しかしアフターサービス基準保証期間後でも、打つ手はないわけではありません。民法による「不法行為(故意または過失によって他人の権利・利益を侵害した場合にその損害賠償義務を負う)」に該当すれば賠償してもらう事が可能ですが、工事の過失をマンション購入者側で立証しなければならないというネックがあります。売り主の対応が納得いかない場合は建築に詳しい弁護士と相談することが良いと思います。

 ここ数年以内に一回目の大規模修繕をする(築10~15年目)マンションにおける外壁タイルの大量浮きが非常に多く発生。それ以前のマンションでの外壁タイルの浮きはタイル張りの総面積の2%前後でしたが、築十数年の最近のマンションでは5%~25%のタイル浮きの報告が出ています。これは異常事態です。

 推測ではありますが十数年前からコンクリートの型枠に塗装型枠用合板という通常の木目を表した型枠用合板の表面に塗装をし、コンクリートの仕上がりが滑らかになる様な型枠を多用する様になったのが一因と考えます。塗装型枠用合板はコンクリート打放仕上げ用に開発されたものですが、吸水性が低くコンクリートの水分による型枠の傷みが少なく何度か転用が効きローコスト・短工期で工事が出来る事から打放し仕上ではないタイル仕上や塗装仕上のコンクリートにも使われるようになった様です。この型枠を使うとコンクリート表面がつるつるになり、そのままタイルを張るとタイルの付着性能が低下。この為、数年前に日本建築学会の建築工事標準仕様書でタイル張りのコンクリート表面は目荒し(コンクリート表面に凹凸を付ける)をする様改訂されています。

 アフターサービス基準が5年であっても、築10年以内に大量のタイルの浮きが発生する建物は異常であり、商品として不完全なものと考えます。一般にはタイルは高級で半永久な仕上材と期待されています。マンションデベロッパーも高級ブランドを唱え、高品質イメージを宣伝し販売しながら、10年足らずでタイルが大量に浮いても「アフターサービス基準外です」「3・11の地震のせいでしょう」「多分凍害のせいでしょう」「太陽熱によるタイルの伸縮があるので仕方がありません」と言い訳し、自らの商品をまがい物である事を自白しているように思えてなりません。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年10月号掲載)

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