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大規模修繕工事、1回目より2回目・3回目の方が安いのか?(2018年6月号掲載)


 最近、大手の新聞にも記事が掲載されていましたが、国土交通省による「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」結果が発表されました。一部の不適切コンサルタントによる割高な工事費つり上げ問題を未然に防ぐため、適正な工事費かを検討する目安として、大規模修繕工事費の944事例のアンケート結果を公表されたものです。
 それによると第1回目大規模修繕工事費が平均100万円/戸、第2回目が平均97・9万円/戸、3回目以降が平均80・9万円/戸と、回数を重ねるほど戸当たり工事費が低額になっています。
 昨年、当方のマンションで第2回目の大規模修繕を行いましたが、第1回目の大規模修繕工事より第2回目の大規模修繕工事費が3割以上高額でした。12年前の建設物価が3割以上安かったとは思えません。割高な工事費で工事をされたのでしょうか?



 不適切コンサルタント問題とは、格安なコンサルタント料金で受託し、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作をし、その結果高額な工事費で管理組合に経済的な損失を与える一部のコンサルタントがいる問題です。
 お問い合わせの件ですが、大規模修繕の工事費は、一般的に1回目より2回目が、2回目より3回目が工事費は高額になります。それは1回目の大規模修繕ではコンクリート躯体の修繕や外壁・鉄部の塗装の塗替え、床防水の修繕、シーリングの取替等の”基本修繕”のみですが、2回目や3回目になると、その”基本修繕”の他に各種金物の取替や建具の補修・取替などが増え、更に設備の修繕等も加わることもあるからです。
 国土交通省による「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」の各回の大規模修繕費は、このアンケートを実施した年度の直近3年間(2014年〜2016年)に行われた大規模修繕の工事費のデータです。すなわちその間に行われた第1回目の大規模修繕工事費は2004年前後に建てられたマンション、第2回目の大規模修繕工事費は1989年前後に建てられたマンション、第3回目以降の大規模修繕工事費は1975年以前のマンションの大規模修繕工事費に当たります。 2004年前後のマンションと1989年前後、1975年以前のマンションの違いは住戸の専有面積だと思われます。当実態調査には住戸の専有面積のデータがないので定かではありませんが、2000年頃のマンションは専有面積が70u台が主流であると共に、80u超えのシェアも高くピーク時と言われています。一方それ以前のマンションは専有面積は徐々に狭くなり、1975年以前は60u前後の団地型が主流でした。専有面積の大小は外壁等の修繕部位の面積の大小に連動します。同じ戸数のマンションでも修繕部位の面積が小さいと戸当たりの工事費は低額になります。よって1回目の大規模修繕工事が2回目より、2回目が3回目より高額なデータとなっている要因の一つだと考えられます。
 国土交通省が不適切コンサルタントによる被害防止のための参考としてこの様なデータの公開は大歓迎ですが、データの誤解に注意が必要です。
 又、この調査には大規模修繕工事におけるコンサルタントの設計・監理等の業務量データも報告され、不適切コンサルタントの常道な手口である著しく低い設計・監理料を見抜こうとの事ですが、業務量だけでは判断出来ません。業務量は同じでも業務単価が安ければ設計・監理料は低く出来るからです。更にこのデータには不適切コンサルタントからのアンケートデータも含まれているであろう事も考慮が必要です。

回答者:NPO日住協協力技術者 一級建築士 山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2018年6月号掲載)