植栽&環境整備

集合住宅のみどりと管理

 10月17日に日比谷公園・緑と水の市民カレッジで「みどりのある暮らしのすすめ 集合住宅のみどりと管理」のセミナーが開催されました。これは、NPO日住協と財団法人都市緑化機構マンションのみどり研究部会が共同研究として取組んでいる事業の一環として開催されたものです。「緑の管理」は、どの管理組合でも関心の高いテーマの一つとなっています。セミナーの内容をご紹介します。

みどりの問題と解決方法

■みどりの機能と役割
 皆さんがお住まいになっている集合住宅には、いろいろな緑(樹木)が様々な目的を持って植えられています。
 例えば、遊び場や広場に植えられている大木は空間のシンボル、夏の暑さや日差しを遮る緑陰樹として、住棟入口の緑は住棟の顔、お客様をお迎えするおもてなしの緑、また住戸前の生垣はプライバシーや防塵、駐車場からの排気ガスやヘッドライトを遮るためなどです。
 また、大きく生長した樹木は、雨水を蓄え、鳥や生き物の棲み家となる、夏の暑い日差しを遮り、地表面の温度を下げたり、二酸化炭素を吸収します。そして、安らぎ感や癒し、良好な景観づくりなどの機能を持っています。

■みどりの問題
 このように私たちの生活に役に立ち、大きく生長した緑は、「緑豊かな住環境」というイメージをつくりだす一方、適切な管理を行わないと、様々な問題を引き起こし、生活に支障をきたすようになります。
 典型的な例としては、大きく生長した樹木が日差しを遮り、「住戸への日当たりが悪くなる」というものです。対処療法的に毎年のように強剪定をした結果、樹形や樹勢が悪くなり、無残な姿をさらけ出すことにもなります。
 また、大きく生長した緑は管理の手間や頻度、費用が増大し、管理組合の予算を圧迫するようになってきます。そして、これらの問題を解決するためには、住民間の合意形成や改善計画作成など、様々なハードルを越える必要があります。


生長した緑

■問題の解決
 対処療法的な強剪定を繰り返すのは管理費を浪費しているだけで、根本的な解決にはなりません。問題となっている樹木が本当に必要なのか、他の樹木に代替えできないのかなどを検討し、間引いたり、新しい樹木に植え替えたりする視点も重要になります。
 ただし、これらの取組みには住民間の合意形成が必要になります。ある住民には問題があっても、その樹木に愛着や想い入れのある方もいるからです。集合住宅の緑には、色々な思いが詰まっており、一方的な思いだけで対応しようとすると感情的な縺れも含め、緑の問題を解決することが困難になります。住民間(管理組合)できちんと議論し、納得した形での対応が重要です。
 また、中長期の管理計画を策定することで、樹木の間引き(伐採)や植替え計画を共有することができるとともに、無理のない資金計画をもとに、改善を実現することが可能となります。

集合住宅とみどり

■専門家の活用
 これらの計画立案、遂行にあたっては、緑の専門家を活用する方法もあります。特に、住民間の合意形成は難しいので、中立的・専門的な視点からのアドバイスが有効となります。  マンションのみどり研究部会には造園のコンサルタント(植栽計画や管理計画策定)、造園施工会社、植栽管理会社等が所属し、それぞれの専門知識や技術・経験を活かし、集合住宅の緑と管理のあり方、問題の解決や合意形成の方法、改善事業のサポート方法等を研究しています。


植栽の委託管理

■委託のポイント

(1)委託会社の探し方
 インターネットの発達などで委託先の情報を簡単に調べることができる時代になりました。インターネットの場合、見映えの良い会社に注目しがちです。植栽管理は人と人、植物を大切に管理する気持ちと技術が重要となります。簡単に調べられる情報だけを鵜呑みにせず、例えば近隣の管理組合へのヒアリング等を通して、実績のある会社を候補とすることもポイントとなります。
 ただし、評判が良いからと言って遠くの会社に委託すると、台風後の緊急対応や小回りの対応が難しくなるので、地域性も考慮すると良いでしょう
。  また、候補となる会社を3社程度に絞り、見積りを依頼すると各社の比較検討が可能となり、納得のいく会社を選定することが可能となります。なお、管理会社の選定には時間がかかりますので、全体スケジュールを組立て、十分な時間を確保することも重要です。

(2)見積りの依頼方法
 見積りを依頼する際には見積り内容を書面化して、管理の内容、項目、数量、回数等を明確にすることがトラブル防止に繋がります。また、見積り依頼時に、作業の報告や確認の方法、追加作業が生じた場合の対応、支払条件等も明確にしておくことが重要になります。
 また、現場説明会を行って、現地を一緒に巡り、みどりの問題点や要望事項を伝えることで見積りの精度も上がります。そして、現状を踏まえた管理方針や管理計画、業務体制等も提出してもらうと、会社の考えや取り組み姿勢がわかり、比較検討の手助けとなるでしょう。

(3)ヒアリングの実施
 見積書や提案資料をもらったら、見積り担当者、現場担当者にヒアリングを行うことをお勧めします。ヒアリングを行うことで見積り内容を確認(間違えや思い違いがないか)すると共に、これからお付き合いを始める担当者の人柄やコミュニケーション能力を知ることができるからです。

住民参加による現地確認

(4)評価と選定
 見積書、提案書、ヒアリング結果等をもとに、各会社の評価を行います。「安ければ良い」は、トラブルの元です。必ず、見積り内容(他社と比べて著しく安い項目はないか、数量が異なっていないか等)を確認するとともに、提案書やヒアリング結果をもとに、総合的な視点で、信頼できる会社を選定して下さい。また、担当者が頻繁に代わる会社は好ましくないでしょう。

■トラブル防止のポイント

(1)要望の伝達
 緑の管理で困っていること、樹木や高さ、見通し、花着きなどで気を付けている点などをきちんと伝え、どのような管理を望んでいるか、どこに気をつけているかを的確に把握してもらいましょう。要望をきちんと伝えることで、予算や優先順位に応じた相談も可能になります。
 なお、要望を伝える際は必ず管理組合や担当委員会を通して伝え、決して個人で伝えることが無いよう徹底して下さい。個人的に要望を伝えることは、全体の管理計画や現場が混乱するだけでなく、清算を含め、「言った、言わない」などのトラブルの大きな原因となります。

(2)コミュニケーションを図る
 委託してからも、定期的な意見交換の場を設けて、管理や業務に対する評価や要望を伝えることで、方向性が明確になり、業務の効率・効果があがります。また、コミュニケーションを良くすることで、現場で働く人たちの「やる気」が上がるとともに、納得のいく成果を得ることができるようになります。
 任せっぱなしは、管理の目的や内容が曖昧になり、トラブルのもとにもなります。

 【おわりに】
 緑の環境の良し悪しは長年の管理の上に成り立っています。一度切った枝は直ぐに取り戻すことはできません。植栽の目的を理解し、長期的な視点と計画を持って管理を実施することは、効果的な管理費の投資、良好な住環境づくりにも繋がります。



(2012年12月号掲載)