植栽&環境整備

マンションの緑と役割

 NPO日住協マンション管理総合研究所は、平成18年より(公財)都市緑化機構マンションのみどり研究部会と「マンションの緑と管理」についての共同研究を進めております。昨年度は、毎年開催されている管理組合向けセミナーが実施されませんでしたので、「マンションの緑と役割」について同研究部会より寄稿していただきました。皆様方の団地やマンションのグレードアップの参考にしていただければ幸いです。

緑の機能と働き

 日頃、何気なく接している身の回りの緑。サクラやウメのように花や香りを楽しんだり、ケヤキやモミジのように新緑や紅葉を楽しむなど、季節の彩りを楽しませてくれたり、癒したりしてくれます。また、様々な機能を発揮して私たちの生活を支えてくれています。今回は、緑の持っている様々な機能や働きについてご紹介します。
■大気浄化の機能など
 まず緑の働きとして思い浮かぶのは、光合成により二酸化炭素を吸収して酸素を放出したり、大気中の粉塵を葉に吸着させて大気を浄化する機能です。樹木の有り無しで粉塵の量が4〜10倍も違うという実験結果もあるそうです。そして、真夏の強い日差しを遮って地表面の温度上昇を抑えたり、葉の蒸散作用によって周囲の温度を下げる、地中の水分が蒸発する際に地表面の温度を下げるなどして、都市のヒートアイランド現象を緩和する機能を持っています。まとまりのあるマンションの緑は、地域のクールスポットとしても効果を発揮しています。また、樹木から発散されるフィトンチッドと呼ばれる物質により、目の疲れや気持ちが和らぐ効果があるといわれています。


         樹木の機能

■緑のネットワークづくりの機能
 住棟が複数ある大規模なマンションでは、大きく生長した樹木が並木を形成したり、遊び場や広場にも大きく生長した樹木があると思います。
 これらの緑は単独で緑が存在する以上に、連続性のある緑、塊の緑として大気の浄化やヒートアイランド現象の緩和に大きな効果を発揮します。また、これらの緑は良好な街並み景観の創出や鳥や生きものの棲みかとして、地域の緑のネットワークを形成する重要な緑として位置付けられ、効果を発揮します。


 緑のネットワーク

■延焼防止の機能など
 阪神・淡路大震災の際に機能を発揮した事例として、延焼防止の機能があります。
 火災が起こった際、熱風が広がるのを遮断したり、葉に含まれる水分を放出したり、火の粉が飛散するのを防ぐなどして、延焼を防止する機能を持っています。特にクスノキやモチノキ、シラカシなど冬でも葉をつけている常緑樹木、特に葉の厚い樹木は、葉に水分を多く含んでいるので、延焼防止機能が高いといわれています。
 また、大地震が発生した際、ブロック塀や電柱などの構造物が倒れても、樹木が倒れることは殆どなく、塀や建物の倒壊を防ぐ効果も多くみられました。
■生活環境を保全する機能
 窓先前の緑は住戸内への視線を遮ったり(プライバシーの確保)、防風や防塵の役割を果たします。駐車場際の生垣は住戸への排気ガスの遮蔽やヘッドライトの遮光、侵入者の立入り防止等の機能を持っています。しかし、生垣が人の頭を超えるほどの高さになったり、鬱蒼となってしまうと、不審者がいても分からず、空き巣や車上荒らしを誘発する原因にもなります。目線より高くならないように管理(刈り込む)することがポイントになります。


 駐車場の緑

■風格や品格を表す機能
 手入れの行き届いた緑は、マンションの風格を高め、住んでいる人の品格も表すと言われます。住んでいる人には毎日見慣れた風景になって気にならないようですが、エントランス前の手入れが行き届かない状態(鬱蒼としたり、枯れかかった緑が放置してある)は、マンションを訪れた人や下見に来た人にマイナスの印象を与えることになります。せめてエントランス周りの緑はきちんとお手入れをしておきたいものです。
■健康維持やコミュニティ形成の機能
 きれいに手入れされた緑や草花は、見る人の気持ちを和らげたり、リラックス効果があります。また、緑や草花を見るだけでなく、自分たちで手入れをすることで植物や土のにおいを感じたり、光を浴びる、風に触れるなど五感を刺激することに繋がります。生長して花が咲く過程に携わることで生きる目標や活力が湧くなどの効果もあります。
 また、住民同士の会話やコミュニケーションが良くなるという効果もあり、日頃、自宅に籠りがちな高齢の方も草花の手入れを通してこれらの効果を実感したり、体力の維持に繋げることが可能になります。
 ちょっとしたスペースを利用して共同花壇を作ってみるというのも居住者の健康維持やコミュニティ形成に大きく効果を発揮することでしょう。併せて、手入れをする人の気配が防犯対策に一役買うという効果もあります。


 共同花壇

■おわりに
 このように様々な機能や働きを持つ緑は、マンションの資産としてだけではなく、地域環境や景観づくりにも寄与する社会的な資産としても価値を持っています。しかし、このような緑の機能や働きは、定期的にきちんと手入れされた状態でこそ実感できるのであり、管理が行き届かない状態では、心理的な効果も逆効果になるかもしれません。
 緑の機能や働きも頭に入れながら、緑の管理や付き合い方を考えてみるというのも、緑のあり方を考える上で良いかもしれません。
(公益財団法人 都市緑化機構 マンションのみどり研究部会 西山秀俊)





(2016年3月号掲載)