植栽&環境整備

緑のちょっと良い話(5)


「植栽の自主管理について」



 新緑が眩しい季節になりました。樹々の芽吹きも瑞々しく、色とりどりの新緑や花々を見るだけで元気が湧き出てきます。そして、緑の手入れも本格的に動き始める季節です。今月は、植栽の自主管理についてお話しようと思います。



  手入れの行き届いた植栽空間


 限られた予算を有効に使って緑を良い状態、生活に支障のない状態に維持することは管理組合にとって重要事項の一つです。植栽の自主管理は、生垣や低木の刈込み、除草といった手の届く範囲での作業や花壇管理活動が多く、管理組合活動の中で大きな役割を果たしてきました。また、植栽の管理を通して、居住者間のコミュニケーションを円滑にしたり、居住環境に対する関心や愛着が高まる、人の目が行き届いて防犯性が高まる等、大きな役割を果たしてきました。
 最近、居住者の高齢化とともに参加人数が減り、これまで通りの手入れをすることができなくなってきたという話を聞くことが増えています。年齢的な問題は深刻であり、毎年、居住者(参加者)の年齢は確実に1歳ずつ高くなり、これに連動して参加者は年々減っていき、自主管理が成り行かなくなる日も遠い話ではなくなります。その結果、これまで自主管理で行ってきた植栽管理を外部に委託することになり、新たに予算を確保する必要が出てきます。ただでさえ建物や設備の老朽化に伴い、修繕費等の出費が増えている中で、新たに植栽管理費を確保することは至難の業です。どれだけ、植栽の自主管理が管理組合活動を支えてきたか痛感する瞬間でもあります。自主管理ができなくなったからといってそのまま放っておけば低木や生垣が大きくなって見通しが悪くなり、安全性や防犯性が損なわれ、出会い頭の事故や空き巣、車上荒らし等が発生することにも繋がります。
 緑を適切な状態で維持するためには、あと何年くらい自主管理を続けることができるのか、どの程度の作業や範囲なら自主管理を続けられるのか、どれだけの予算を委託費に回すことができるのか、といったことを把握し、対策を考えることが重要になります。そして、間引きしても目隠しや修景上支障がないと考えられる樹木を減らすこと、すなわち管理対象となる樹木を減らすことも併せて考える必要があります。これらの取組みについては、管理組合の重要な取組みの一つとして、役員や居住者間で問題を共有し、合意形成を図ることが肝腎となります。
 春爛漫の季節に少々厳しい話となりましたが、これからも緑と良い関係を保つためにも、管理組合の新しい一年が始まるこの時期に考えて戴ければと思い筆を執りました。
(株式会社グラック 西山秀俊)


(2017年5月号掲載)

緑のちょっと良い話(4)


「緑の問題と居住者の意識」



 植えたばかりの頃は小さかった樹木も20年、30年と経つにつれ、大きく生長して緑豊かな環境をつくり出します。一方、大きく生長した樹木は様々な問題を引き起こすようになります。これまで、緑の改善計画づくりのお手伝いをする中で、居住者の方に実施したアンケート結果をもとに、居住者の緑の問題に対する意識について、最近の傾向をお伝えします。



  住棟の南側で大きく生長した高木


 まず、どの集合住宅でも多い回答は、「樹木が大きくなりすぎて鬱蒼としてきた」というものです。これに関連する問題として「住棟近くに植えられたケヤキやクスノキ等の高木が大きくなりすぎて、住戸の陽当たりが悪くなって困っている」というものです。特に1階、2階にお住まいの方の回答が多く、高層階に行くほど回答が少なくなっていきます。お住まいの階によって緑の問題に対する認識が異なっていることが分かります。
 次いで多い回答が、老化した樹木や樹勢の衰えた樹木が増えているというものです。これに関連して「強風や大雪の際の枝折れや倒木による事故を懸念する」という回答が増えています。ケヤキやサクラ等の高木の枝折れが発生したり、知らないうちに内部の腐食が進んだ結果、突然倒れるということが増えていることが背景にあると考えられます。
 そして、今後ますます増えていくと思われるのが、「樹木の生長に伴う管理費の増加」。樹木が大きく生長したことにより剪定費用が高くなることに加え、生長と共にこれまで以上に剪定する樹木が多くなり、管理費を圧迫するというものです。
 樹木の生長による管理の負担が増加することは、どの集合住宅でも発生しうる問題だと思います。これまでは「緑は大切なものだから、伐採してはいけない」という考えも多かったようですが、限られた管理費を有効に使うには、樹木が小さいうちから計画的に間引きや大木化を防ぐ管理、マネジメントが必要となります。そして、緑をどうマネジメントするかが管理組合の大切な仕事になると思います。
(株式会社グラック 西山秀俊)


(2017年3月号掲載)

緑のちょっと良い話(3)


「秋の紅葉に心惹かれるのは?」



 日ごとに葉の色が赤や黄色に色づき始め、テレビや雑誌などで紅葉の話題を目にすることが多くなってきました。秋の紅葉シーズンは、春のお花見とならんで身近に樹木を楽しんだり、愛でることができる季節であり、日々の暮らしや観光でも大きな楽しみの一つとなっています。



  心を満たし、癒しを感じさせる紅葉したモミジ


 紅葉といっても、モミジの赤色や橙色、サクラの茶褐色、またイチョウやカツラのように黄色くなるものまで、その色や濃淡は実に多様で、私たちを楽しませてくれます。なぜ私たちは紅葉に心惹かれるのでしょうか?私論も入りますが、一緒に考えてみましょう。赤色は人間にとってポジティブな意味、元気を出す色として知られています。木々の芽吹きや新緑を見て気持ちがワクワクする春とは違い、秋は気持ちが落ち着く季節です。リンゴやカキ、クリなどの木の実(果実)が日ごとに赤や黄色などに色づくことで、食べごろ、実りの色として認識され、恵みを示す色としても好意的に受け止められるのでしょう。そして、おいしいものが身の回りに豊富になることで気持ちも落ち着き、やすらぎの気持ちが生まれ、心も癒されるようになるのかもしれません。  このようにして、紅葉の赤い色に良いイメージを持っているため、紅葉を見ると熟した果実を見た時のように心が満たされたり、木の葉が赤く色づくことを心待ちにする、楽しみにしているのかもしれません。(心のどこかでは、紅葉した葉を美味しく熟した木の実として感じ、目で食しているのかもしれませんね)  私たちは心が満たされたり、癒しを感じることで穏やかな気持ちになります。秋はまさしくそんな気持ちになれる季節です。朝、会社に行く時や散歩や買い物に行く時に、ふと目にしたモミジの葉、公園などで様々に色づいた木の葉を見ることで気持ちが落ち着き、普段とは違った気持ちで家族や周りの人と接したり、コミュニケーションがスムーズになったりすると思います。秋のひと時、紅葉を見てほっと一息してみませんか?
(株式会社グラック 西山秀俊)


(2016年11月号掲載)

緑のちょっと良い話(2)


「夏の日差しと緑の役割」



 9月になったとはいえ、まだまだ残暑厳しい日が続いています。そんな中、外出先で強い日差しを和らげてくれる大木や街路樹の木陰のありがたさはみなさんも実感していると思います。ヒートアイランド現象の進行も含めて、高温化した都市における緑の役割や効果は大きなものです。
 分かりやすい例としては、大きく枝葉を広げた樹木は太陽光を1割程度遮り、輻射熱による気温の上昇を和らげてくれるというものがあります。また、広場や公園などの大きな樹木や連続性のある街路樹の下に入った時に涼しく感じるというものもあります。これは、樹木の枝葉が太陽光を遮ることに加え、葉の蒸散作用によって周辺の空気が冷やされる効果によるものです。蒸散作用とは、樹木の体内にある水分を水蒸気として葉を通して空気中に放出する際、周囲の気化熱を奪って周囲の気温を下げる効果を発揮します。



  木漏れ日の落ちた団地内の通路


 例えば、木陰の代わりに人工的に日除けを作ったらどうなるでしょう?日除けや日陰をつくることはできますが、庇自体が太陽光で熱せられ、その熱が周囲の空気を温めるため冷却効果はなく、余計に周囲の気温を上昇させてしまいます。樹木の葉は非常に薄く柔らかいものですが、大変な働きをしていることをお分かりいただけると思います。
 このように夏の日差しを和らげ、夏の高温から私たちを守ってくれる樹木ですが、これからの台風シーズンでは強風で根こそぎ倒れたり、太い枝が折れて事故を引き起こすことがあります。このようなことが起きないよう、台風シーズンの前には樹木の点検をしてみると良いでしょう。幹が割れたり、幹や根元にキノコが発生している樹木(倒木する恐れがある樹木)を見つけたら、樹木の専門家(樹木医や植栽管理会社など)に相談して伐採などの対応してもらう、夏なのに葉をつけていない枝は枯れている証拠であり、強風で折れる可能性が高いので、枯れた枝の除去を通して大事故が発生することを防ぐことができます。
(株式会社グラック 西山秀俊)


(2016年9月号掲載)

緑のちょっと良い話(1)


マイツリーを見つけよう



 いよいよ春本番。早春のウメやサクラ、コブシなど、春の訪れを知らせてくれる花がひと段落し、新緑も本格的に芽吹き始めました。また、ハナミズキやヤマボウシが咲き始めるとともに、花壇に植えた草花もぐんぐんと成長し、色とりどりの花を咲かせて私たちの生活を楽しませてくれます。
 植栽した当初は小さかった樹木ですが、子供たちが年々成長するのと同じようにあっという間に大きくなり、たくさんの花を咲かせ、夏の木陰をつくり、秋には紅葉を楽しませてくれます。また、団地やマンションのシンボルになったり、緑豊かな住環境をつくるなど、なくてはならない存在となってきます。



 この度、熊本地方では大きな地震が発生して大きな被害を出しましたが、大きく成長した樹木は火災の延焼を防いだり、家やブロック塀などを支えて、倒れるのを防いでくれたりもします。東日本大震災で大津波に耐えた「奇跡の一本松」のように、災害で打ちひしがれた心を勇気づけてくれたりもします。
 子供が生まれたときにきれいな花が咲いていた、入学式の日にサクラを背景に写真を撮影したなど、生活と樹木に関わる思い出はたくさんあり、家族の成長と樹木の成長を重ね合わせてみることもあるかと思います。
 これらのように私たちの生活と樹木、季節を彩る樹木は切っても切れない関係にあり、私たちが大切にする気持ちを持って接し、手入れをすれば、必ずや樹木も私たちに応えてくれるはずです。子供の成長と同じように、樹木の成長には時間も手間もかかります。でも、日頃からちょっとした思いを持って樹木を見ていれば、枝が枯れて折れそうだ、水が不足して枯れそうだ、虫や病気が発生しているといったことがわかると思います。早めに異常を発見して対応すれば被害も広がらず、健全な成長にもつながります。
 大切な樹木、緑を大切に育てるために、私だけのお気に入りの樹木、思い出の樹木「マイツリー」を見つけ、樹木との良い関係をつくって楽しんでみてはいかがでしょうか?
(株式会社グラック 西山秀俊)


(2016年5月号掲載)