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給水管の補修工事をしたいがAさんが居室の立ち入りを拒否、どうすれば良いか? (2007年1月号掲載)

Q.

私たちのマンションでは給水管が老朽化して、頻繁に水漏事故が発生するようになってきたので、全棟で一斉に点検・補修工事を行うことを総会で決めました。ところが、組合員のAさんが工事のために居室に立ち入りをすることを拒否しています。給水管はAさんの部屋の床下を通っているので、Aさんの居室に入らないと工事が出来ません。どうすれば良いでしょうか?



A.

多くのマンションでは標準管理規約に依拠した、規約を設定していると思いますが、標準管理規約には

  1. 管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分への立ち入りを請求することができること
  2. 立ち入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならないこと
  3. 正当な理由なく立ち入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならないこと
が定められていますので、規約にこのような規定があるのか、確認してみてください。給水管の点検・補修工事は「管理」に含まれますし、床下を通っており、居室内に立ち入らない限り、工事が出来ないのですから、管理組合としては規約に基づいて、Aさんに立ち入りを求めることが出来ます。

Aさんの拒否の理由が不明ですが、一般的には正当な理由があるとは思えません。管理組合としてはAさんに対して、

  1. 正当な理由のない立ち入り拒否は認められないこと
  2. 立ち入りを拒否した結果、点検・補修工事が出来ずに、水漏事故が発生した場合はそれによって発生した損害を賠償する責任を負うこと
を伝えてAさんを説得することになると思います。

ところで、規約に立ち入りについての規定がなければ、立ち入ることが出来なくなるのでしょうか?この点については、規約に規定がなくても、管理を行うために必要な範囲においては立ち入りを求めることができ、立ち入りを求められた者は正当な理由がないのにこれを拒否することは不法行為に該当すると考えられています。隣接する所有者(この場合はAさん)は隣人に対する義務として必要な工事については協力する義務、即ち、立ち入りを求められた場合はそれを受忍する義務があると考えられています(もちろんその前提として、自分の居室や敷地に入らないと工事を行うことが困難であるとの事情が必要です)。

正当な理由がないのにこの受忍義務に違反して、立ち入りを拒否した場合は不法行為に該当することになります。

従って、規約に規定がなくとも、立ち入りを求めることは出来ます。この場合も管理組合としては、前述したようにAさんを説得することになります。

問題は説得してもAさんが応じない場合です。既に述べたように立ち入りを拒否した結果水漏等の事故が発生して損害が生じればその請求は出来ますが、それは事後的な手段に過ぎません。

かといって、Aさんの承諾なくして勝手に入ることも余ほどの緊急性がない限り認められないでしょう。

この場合、立ち入ることについての承諾を求める裁判を提起することが出来ます。裁判所の承諾を判決という形でもらえば、Aさんが拒否しても立ち入ることが出来ます。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2007年1月号掲載)