Q&Aから -- 法律相談会のQ&A

理事会に代理人出席ができるよう規約を改正したい… (2006年5月号掲載)

Q.

私達の管理組合では仕事の都合で理事会を欠席する理事が多く、困っています。理事には人望のある人が多いのですが、欠席者が多いと理事会の開催がきない可能性もあります。そこで、欠席する理事については代理人が出席できるように規約を改正したいのですが、問題ありませんか。



A.

理事会への理事の代理出席を認める規約の効力が最高裁判所まで争われたケースがあります。これは、南紀白浜のリゾートマンションの管理組合法人が、区分所有者の多くが関西の都市部に居住しており、理事会の開催に不便があるので、臨時総会で「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる。」との規約改正を行ったところ、区分所有者の1人がこの規約は民法55条に違反すると主張したものです。最高裁判所は結論的には、理事会への理事の代理出席を認めました。

この点が問題となる理由は次のような点にあります。即ち、管理組合と理事との関係は、委任契約と言われていますが、委任契約は、委任者が受任者の個性(=その人の才能や性格等)に着目して委任をするという点に特徴があります。従って、受任者は原則として自ら委任事務を処理し、他人に任せてはならないと考えられています。株式会社における株主総会と取締役との関係も委任契約ですが、株式会社では、取締役は、代理人を取締役会に出席させることは出来ないというのが専門家のほぼ一致した見解です。同じ委任契約である以上理事会でも代理人は認められないのではないかとも思えます。

また、民法55条は理事が第三者に包括的代理権を与えることを認めていませんが、これは、前述した委任契約の特徴を反映させた規定です。そして、区分所有法(49条7項)は、管理組合法人の理事について民法55条の規定を準用することになっていることから、少なくとも包括的代理権を認めることは出来ないのではないかとの疑問も生じます。

他方で、一切代理人を認めないことは非現実的であるとの問題意識も当然出てきます。株式会社の取締役は相当な報酬をもらっていること、責任も重い点や専門性が高い点で管理組合の理事とは相違しているのであるから、全く同じように考える必要はないとの意見もあるでしょう。

確かに民法55条は理事の包括的委任を禁止して、特定の行為に限って第三者に委任ないし代理をさせることを規定したものですが、これは、対外的な関係に関する規定であって、法人内部の意思決定場面までは規定していませんので、管理組合において、理事会を設けた場合の理事会における出席及び議決権の代理行使について許されるか否かは民法55条の規定だけでは判断が出来ないと考えるべきです。内部的会議体(理事会)における出席及び議決権の行使が代理に馴染むものであるかは、理事会が設置された趣旨や委任事務の内容に照らして、その代理が法人の理事に対する委任の本旨に背馳するか否かで判断すべきものと考えられます。管理組合の事務については集会の決議で決めることを原則としつつ、区分所有権の内容に影響を及ぼす事項以外は、自治的規範である規約で理事会に委ねることを認めていますので、代理人による出席も含めて、理事会の討議や決議の方法も規約で定めることが許されていると考えられます。但し、その内容が管理組合と理事と信頼関係を害するものであってはなりません。

従って、代理出席を認める範囲を理事に事故があるなどに限定して、代理人となれる者を理事の配偶者や同居の親や成人している子供に限定するような規約であれば、管理組合と理事との信頼関係を害するとは言えず、代理人も認められると考えられます(これは前記最高裁判決と同様の考えです。)。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2006年5月号掲載)