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積立金を地元の銀行に預けているが、もし銀行が破綻しペイオフになったら、理事長や理事が責任を負うのか?(2011年7月号掲載)


 私は築8年になるマンションの会計担当理事をしています。現在、大規模修繕工事の実施について理事会等で協議を始めたところです。きちんと修繕積立金の積立を行ってきました。その残高も約3億円あります。積立金は地元の地方銀行の定期預金と普通預金に預けているのですが、総会で組合員のAさんから「3億ものお金を一つの銀行に預けておくのは問題だ! もし、銀行が破綻して、ペイオフになったら理事長や理事に責任をとれるのか!」と非難されました。銀行が破綻してペイオフが発動されたら理事長や理事は責任を負うのでしょうか?




 銀行はつぶれないという神話がもはや過去のものであり、今後、所謂ペイオフが発動されて、管理組合の預金がカットされる可能性があることは誰も否定できません。
 管理組合の理事(役員)は、総会で選任されますが、その場合に理事と管理組合との間には委任契約が存在することになります(管理組合が「委任者」で理事が「受任者」となります)。そして、民法で「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と規定しています。
 ペイオフ対策を取らなかったことがこの善管注意義務に違反するといえるかが問題となります。
 ところで、保護される元本が1金融機関について1000万円とすれば、仮に3億円の積立金をペイオフから守るためには30もの金融機関に口座を開設する必要があります。しかし、これは、現実的な方法とはいえません。しかも、格付けの高い銀行2行に1億5000万円ずつ分散させることと、格付けのあまり高くない銀行10行に3000万円ずつ分散させることとどちらがリスクが少ないのかを考えると、単に預金を分散させれば良いとはいえないことになります。大規模なマンションになればなるほど預金残高も大きくなりますので、完璧なペイオフ対策は困難になります。  善管注意義務は、当事者間の知識や才能・手腕の格差、委任者の受任者に対する信頼の程度などに応じて判断されますが、理事は経済や金融の専門家ではありませんから、銀行の財務内容まで注意を払い預金先を決めることを求めるのは不適切です。他方で、管理組合の貴重な財産を守る立場にあるのですから漫然と放置して、何らの対策を取らないことも問題があります。
 (1)格付けの高い金融機関(大手銀行、地方銀行)の数行(2〜4行)に分散する(2)当初安全だと言われている金融機関も何かの原因で格付けが悪くなることはありますので、その点(新聞等で報道される範囲で)には注意を払う(3)預金残高が大きくなれば、後述するような債券の購入を検討する。
 このように出来る範囲で合理的な対策を行ったにも関わらず、万一あるとき突然金融機関が破綻して、ペイオフが発動されて、管理組合の預金が一部カットされてしまった場合、原則として、役員が責任を問われることはないと考えます。
 修繕積立金のように使用までにある程度の時間的なスパンがあるものについては、金融機関の預金ではなく、債券を購入することもペイオフ対策の1つの方法だと思います。この点M住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」を利用している管理組合が比較的多いと思います。利用については条件があり、どのようなマンションでも積立ができるわけではありませんので、詳細については住宅金融支援機構のホームページ等で確認してみてください。
 あと、筆者個人としては日本国債も選択肢にあげたいと思います。(国が破綻しないかぎり)満期まで保有すれば元本割れしません。期間が長いほど利息は高いですが、資金としての流動性を考えた場合は数年程度の短期国債の購入を検討するのがいいでしょう。



回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2011年7月号掲載)