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屋上に携帯電話会社のアンテナ設備を設置するには特別決議が必要か(2012年3月号掲載)


 私が理事をしているマンションでは、共用部分となっているマンションの屋上を有効に活用するため、業者に携帯電話用のアンテナ設備を設置させて、賃料を得ようという話がでています。平成10年に制定された現行の管理規約によれば、「共用部分を第三者に使用させる」には総会の決議が必要で、「共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く)」は、総会の特別決議事項となっています。業者と契約を結ぶにあたって、管理組合としてはどのような手続きが必要になりますか。




 管理組合は、業者と屋上につき賃貸借契約を結ぶことになりますが、屋上は共用部分であり、通常は業者もそのことを知っていますから、賃貸借契約を有効に結ぶためには、総会決議が必要になります。
 ところで、区分所有法17条1項によれば、形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更については、総会の特別決議が必要とされています。この条文は、平成14年に改正されたものですが、その施行前に生じた事項にも適用されるとされています(附則2条)。したがって、本件マンションの管理規約における「共用部分の変更」も、「形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更」を指すと解されます。
 では、携帯電話用のアンテナ設備の設置を目的とした、業者との屋上賃貸借契約は、「形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更」として特別決議が必要になるのでしょうか。
 質問と類似の事案で判例(札幌高裁平成21年2月27日判決)は、普通決議で足りるとしました。
 まず、賃貸借の期間ですが、判例の事案では10年でした。そこで、契約反対派は、民法の規定を根拠に(処分権限を有しない者等が管理行為として賃貸借契約を締結できるのは3年以内)、10年の賃貸借契約は共有物の処分変更行為にあたるとして特別決議事項にあたると主張しました。この点につき判例は、区分所有法は民法の特別法にあたることを理由に、民法の制限を超えても良いとしました。
 しかし判例は、民法の制限を超えてどの程度の期間が許されるかについては判断していません。「形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更」にあたるか否かの判断の中で、期間については一切触れていません。これが、期間についてはどんなに長期に渡っても、普通決議で可能と判例が考えているか否かは不明です。期間がマンションの耐久年数に匹敵するなど、あまりにも長期にわたる場合には、検討が必要になるかもしれません。
 判例は、復旧が容易に可能であることや、管理規約で総会決議を不要としている近隣住民のための集合アンテナ設置(電波障害対策)との使用形態の比較などから、「形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更」にあたらないとしました。
 あくまで事案ごとの判断になりますが、10年程度の期間で、復旧が容易である場合には、普通決議で足りると考えて良いと思います。



回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川 貴康
(2012年3月号掲載)