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ひぼう中傷による業務改善に管理組合はどうすればよいのか(2012年7月号掲載)


 区分所有者であるAさんは、管理組合の役員が修繕積立金を自分勝手に運用したなどとして役員らをひぼう中傷する内容の文書を配ったり、マンション付近の電柱に貼るなどの行為を繰り返しています。またAさんは、マンションの修繕工事を受注した業者に対し、意味不明の文書を送りつけたり、工事の辞退を求める電話をかけるなどして、業務を妨害しています。このようなAさんの行為を止めさせたいのですが、管理組合としてはどうすればよいでしょうか。




 ひぼう中傷により被害を受けている役員や、業務妨害を受けている業者が、それぞれAさんの行為の差止請求や損害賠償請求をすることは、もちろん可能です。しかし、Aさんの行為は、役員や業者にとどまらず、管理組合の業務にも悪影響を及ぼし、その結果、マンションの住民全員に被害が及ぶとも考えられます。  区分所有法6条1項は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」を禁止し、その行為の差止請求を管理組合ができると規定しています(同法57条)。ですから、Aさんの行為が「区分所有者の共同の利益に反する行為」にあたるのであれば、管理組合がAさんに対し差止請求をすることができます。(管理組合が法人化されていない場合は、総会決議で理事長などが住民の代表者として訴訟を提起します。)  この点、東京高等裁判所は、同様の事案で、「(仮に、Aが本件各行為に及んでおり、)それによって本件マンションの関係者や本件管理組合の取引先が迷惑を被っているとしても、本件各行為は、騒音、振動、悪臭の発散等のように建物の管理又は使用に関わるものではなく、被害を受けたとする者それぞれが差止請求又は損害賠償請求等の手段を講ずれば足りるのであるから、(Aの本件各行為は)法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たらない」と判断しました。  しかし、Aさんの行為は、役員らに対する個人攻撃にとどまらず、それにより、管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるおそれがあるといえます。  最高裁判所は、高裁の判決を破棄し、「マンションの区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し、マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は、それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので、それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には、法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があるというべきである。」と判断しました。(最高裁平成24年1月17日判決)  したがって、管理組合は、Aさんの行為の差止請求を求めることができます。その際、Aさんの行為が、管理組合の業務にいかなる悪影響を与えているのか、具体的に主張していく必要があります。先ほどの判例では、総会で正当に決議されたマンションの防音工事等の円滑な遂行が妨げられていることや、管理組合の役員に就任しようとする者がいなくなったことなどが主張されていました。



回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・内藤 太郎
(2012年7月号掲載)