Q&Aから -- 法律相談会のQ&A

「一括受電の契約を拒否した組合員に対してどうすればよいのか」(2013年5月号掲載)


 私達のマンションでは各戸がT電力会社と契約をして電気の供給を受けていますが、配線等の設備の老朽化が進んでいます。この配線等の更新に際して、高圧受電設備を設置してA社と契約して一括受電し、そこから各戸に電気を供給することにしました。そうすることで電気料金も下がり、各戸の電気容量の選択の幅も広がるからです。総会では圧倒的賛成で決議されましたが、Yさんが反対しています。全戸がT電力会社との契約を解除してA社と契約しないといけないため、契約が進められません。どうしたら良いでしょうか。




 本件と同様の事案が裁判所で争われたことがあります(横浜地方裁判所平成22年11月29日判決)。当該事案では合理的な理由がないのに一括受電の契約を拒否した組合員に対して、管理組合が共同の利益に反するとして区分所有法59条1項に基づく競売請求を求めたものです。裁判所は「被告がF社との契約を拒否している理由は、極めて主観的な危惧感の域を出ておらず、正当なものとは認められない。被告の本件工事への対応は、これによって本件工事を進めることができなくなっていて、本件団地の住環境の保全及び向上を図ることが妨害されているという点において、区分所有法6条1項に定める『建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為』に当たると解される。また、このような被告の態度によって、本件団地のほかの住民は、総会決議によって実行することを決めた本件工事の中断を余儀なくされ、これをいつ実行できるのか不明という状態に置かれており、これによって受ける『共同生活上の障害は著しい』ものがあると認められる。さらに、被告は、従前から自己の見解に固執し、他の住民と協調して住環境の保全及び向上を図ることを拒否してきたこと、本件訴訟においても同様の態度をとり続けていることは前記のとおりであり、説得や話合いによって本件工事についての被告の協力を取り付けることは極めて困難であると認められる。加えて、本件工事への被告の非協力は、F社との電気供給契約締結を拒否するとの形でなされているため、これを区分所有法57条の共同利益違反行為停止請求あるいは同法58条の専有部分使用禁止請求によって解決することはできない。以上によれば、本件は『他の方法によってその障害を除去することが困難』な場合に該当するというほかない。以上によれば、本件においては、区分所有法59条1項の競売請求の要件はすべて満たされていると認められる。」と判断しました。大変興味深い裁判例だと思います。
 ただ、ここで注意して欲しいのは契約を拒否していることだけから「共同の利益に反する行為」であると判断しているわけではありません。傍線を引いたような事情を認定した上で59条による競売請求以外には方法がないと判断したものです。
 本件でもYの契約拒否の理由が合理的でないこと、これまでも非協力的な態度をとっていたこと、将来的にも話し合いの余地がないこと、Yを除外しては手続きが進まないこと等の事情があれば、59条による競売請求が認められる余地はあります。



回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川 貴康
(2013年5月号掲載)