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「規約共用部分の倉庫を競売で購入したAさん 共用部分の未登記を理由に専用使用権を主張」(2014年7月号掲載)


 当マンションには、倉庫があり、規約上共用部分とされていて、利用細則にのっとり、複数の区分所有者が利用してきました。ところが、この倉庫が競売にかけられ、Aさんが買い受けました。Aさんは、共用部分としての登記がなされていないことを理由に、倉庫の専用使用権を主張。しかしAさんは、競売のときの資料から、倉庫として利用されている実情を知っていましたし、買い受け後すぐに、規約上求められている倉庫から事務所への施設変更届けを管理組合に提出したり、倉庫の用途を事務所へ変更する登記をしていました。したがって、Aさんは、規約共用部分であることを十分知りながら買い受けていたとしか思えません。管理組合としては、それでもAさんの主張を認めないとならないのでしょうか。




 共用部分には、法律上当然に共用部分とされる法定共用部分と、規約によって初めて共用部分となる規約共用部分があります。規約共用部分は、共用部分である旨を登記しなければ、その旨を第三者に対抗することはできないとされています(区分所有法第4条2項)。つまり、規約により共用部分であることを明記していても、共用部分であることの登記をしなければ、その点につき利害関係を有する者に、共用部分であることの主張ができません。そうでなければ、取引の安全が図れないからです。本件では、共用部分の登記がなされていないので、管理組合は、倉庫が共用部分であることの主張をAさんに対してすることができず、他面、倉庫の区分所有権を取得したAさんは、専用使用権を主張できるのが原則となります。
 しかし、この結論が妥当でない場合もあります。つまり、法が第三者を保護しているのは、取引の安全を図るためですから、そのような必要がなく、むしろ保護を与えることが信義に反する場合にまで、法による保護を与えるのは間違っています。
 本件と類似の事案で、判例は、「(Aさんは、)…本件倉庫が本件マンションの区分所有者の共用に供されている現状を認識しながら、あえてこれを低価格となる競売手続により買い受け、…本件倉庫について共用部分である旨の登記がないことを奇貨として、時を移さず登記を…『倉庫』から…『事務所』に変更するなどして(管理組合)による共用部分の主張を封ずる手立てを講じたものであり、これら一連の事実関係からすると、(Aさんは、管理組合に対し、)規約共用部分について登記がないことを主張することを許されない背信的悪意の第三者というべきである。…以上のとおりであるから、(管理組合はAさんに対し、)…本件倉庫が規約上の共用部分であることを主張し得るものということができる」と判断しました(東京高裁平成21年8月6日判決(判例タイムズ1314号211頁))。つまり、法律を形式的に適用してAさんを保護することは妥当でないとの価値観の下、裁判所は、実質的に判断してAさんを保護しませんでした。
 判例の事案の第一審では、原則どおりAさんの主張が認められています。「背信的悪意の第三者」にあたるかは、個別の事情によって決まってきますし、裁判所により判断が変わる可能性もあります。争いが生じないよう、規約により共用部分とした場合は、速やかにその旨の登記をすることをお勧めします。



回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・内藤 太郎
(2014年7月号掲載)