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専有部分への修繕積立金使用(2018年11月掲載)


 私が理事長を務めるマンションでは、給排水管の老朽化のため、頻繁に水漏れ事故が生じるようになりました。業者を入れて調査したところ、共用部分の給排水管の他、専有部分の給排水管について更新工事を行わなければならないだけでなく、古いタイプのトイレや浴室についても更新工事をする必要があるとの指摘を受けました。そこで、修繕積立金を使って、専有部分を含めた全ての更新工事を実施したいと考えていますが、問題ありませんか。




 共用部分の管理は管理組合が行い、専有部分の管理はその区分所有者が行うのが原則です。しかしながら、給排水管のように、共用部分と専有部分とが構造上一体となっている場合には、管理組合が専有部分を含めて管理することが合理的です。そこで、標準管理規約では、「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」との規定を置いています(単棟型21条2項)。
 もっとも、一体として工事ができる場合であっても、専有部分の工事費用を修繕積立金で賄うことができるかは、また別の問題となります。標準管理規約コメントは、専有部分については、「各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである」としています。
 では、一体工事の場合に、専有部分の工事費用として、本来共用部分の修繕のために使用されるべき修繕積立金を取り崩すことを可能とする規約が認められるでしょうか。この点について判例は、「共用部分の管理と一体として管理を行う必要があるときに、修繕積立金を取り崩すことを可能とする規定であって、共用部分と無関係に修繕積立金を使用することを認めるものではないし、そもそも、修繕積立金の使途を共用部分に限定する法令上の定めはな(い)」として、規約の有効性を認めています(東京高裁平成29年3月15日判決)。
 しかしながら、以上のような規約であったとしても、実際に専有部分の工事費用として修繕積立金を取り崩す総会決議の有効性は、別途考えなければなりません。例えば、先行でトイレ等の専有部分の更新工事をその区分所有者が自費で実施している場合、修繕積立金で同様の更新工事を受けられる他の区分所有者との間に不均衡が生じてしまいます。この不均衡が、社会通念上許容できない場合には、決議が無効となる可能性もあります。先ほどの判例も、「集会決議の内容が区分所有者間に見過ごすことのできない不均衡を生じさせる場合、当該集会の決議が無効となる余地が全くないということはできない」としています。
 実務上、特に問題となり得る点は、@一体管理の必要性、A区分所有者間の衡平、であると思います。@については、専有部分の工事をせずとも、漏水の防止等の共用部分の工事の目的が達せられるか否か、費用や工期の問題等を慎重に検討すべきです。Aについては、先行で自費工事をした区分所有者に対して、一定の補償をするなどの手当が必要になると思います。具体的にどのような補償をすべきかは、事案により異なりますが、先行工事者の理解が得られるよう、管理組合は、慎重に対応すべきです。



回答者:NPO日住協・法律相談会 専門相談員 弁護士・内藤 太郎
(2018年11月号掲載)