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区分所有法の一部改正。管理組合の日常的な業務で影響を受ける部分は?(3) (2004年5月号掲載)

Q.

最近区分所有法が一部改正されたとの話を聞きました。管理組合の日常的な業務で影響を受ける部分があれば、教えてください。



A.

今回の区分所有法の改正で共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領について管理者(理事長)に代理権及び訴訟遂行権が認められました。例えば、次のような事例を考えてみましょう。

  1. X管理組合では、火災保険をかけていたところ、集会所が火事になった。
  2. 飲酒運伝のトラックが集会所につっこんで集会所が破壊された。

(1)の場合管理者(理事長)が管理組合を代理して保険金を受け取ることができると思いますか。もちろん、答えはYESです。でも、その理由は区分所有法26条2項が損害保険契約に基づく保険金の請求や受領権を管理者に認めているからなのです(この点は改正前も改正後も同じです)。

もし、この規定がなければどうなると思いますか。区分所有法は民法の特別法ですから、区分所有法に規定がなければ民法が適用されることになります。民法では保険金請求権(のような金銭債権)は共有者間で分割されることになるのです。したがって、火災が発生して、保険会社に対する請求権が生じた段階で管理者(理事長)が各区分所有者から保険金の請求と受領の権限の授権を受けなければ保険金全額を請求したり、受け取ることが出来ないことになります。しかし、火災保険の保険料は管理費等から支出されているのに、いちいち管理者が授権を受けなければ保険金を受け取れないのでは困ります。そこで、区分所有法26条2項が定められたわけです。

ところが、改正前の区分所有法26条2項は損害保険契約の保険金だけしか管理者(理事長)の請求・受領権限を認めていませんでした。

そうすると、(2)のような場合にトラックの運転手に集会所の修理費用を請求する場合、管理者(理事長)は各区分所有者から損害賠償金の請求・受領権限について授権を受ける必要があることになります。なぜなら、損害賠償金の請求権も金銭債権ですから(区分所有法に特別な規定がなければ民法の原則が適用されて)各共有者間で分割されるからです。もし、区分所有者が10人いたとして5人からしか授権を得られなかったら、管理者(理事長)は本来請求できる修理費の50%しか請求できないことになります。

このような結論は不合理なので、改正後の区分所有法26条2項は損害賠償金や不当利得金の請求・受領権限を管理者(理事長)に認めたのです。

改正前では前述した(2)の場合に区分所有者全員の授権がなければ管理者(理事長)は修理費用の全額を請求したり、受領したりすることが出来なかったのですが、区分所有法が改正されたことで(2)のような場合でも修理費用を請求したり、受け取ることが出来るようになったわけです。

回答者:法律相談会 専門相談員 弁護士・石川貴康
(2004年5月号掲載)