過去事例(排水管)

世代を繋ぎ使い続けることができる団地にするためのライフライン一体改修工事

 霧が丘グリーンタウン第一住宅は横浜市西部の緑区にあり、日本住宅公団が昭和54年に分譲した408世帯の団地で、平成27年で36年が経過した。団地の中央に縦断する公道を境に、5階建てPC住棟250戸の街区と、5階建てRC住棟と2階建てテラス棟の計158戸から成る2つ街区を1つの管理組合で構成している。



     

 これまで、必要な大規模修繕はちゃんと一通り実施してきており、水道の直結化や屋外埋設排水管の修繕、電気幹線の容量アップまでをも行ってきた。
 しかし築30年を過ぎた頃から、配管の老朽化により上階から下階への漏水事故が多発してしまい生活の安心が揺らいでしまった。そこで、平成24年から日住協の「大規模修繕工事支援制度」を採用し、一日診断実施後速やかに設計事務所の選定を行い、平成25年6月から設計事務所による実施設計を開始。およそ1年の設計期間を経て、公募により集まった工事会社に相見積をお願いし、平成26年10月には工事を発注することができ、その1年後に無事工事が完了した。年月だけ見れば実にスムーズに事が運んだように思われるが、この間は実に多難な議論があり関係者の皆で苦楽を共にした。本稿は、調査から設計・工事監理までを担当した立場の者から、この改修工事で目指したことや、他事例にはあまり無いような事について述べていく。
 まず、改修のコンセプトはタイトルの通りで、リフォームしやすい住宅にすることを心がけ、資産価値を高めることを目指した。ここでいう資産価値とは抽象的なものではなく、ズバリ「売値」を上げることを意識している。具体的には、(1)水回りリフォームの可変性・拡張性を新たに装備する、(2)健全な水回りリフォームが行えるための仕組みを装備する、(3)耐久性・耐震性などの基本的安全性能を格段に向上させる、というようなこれまで無かった性能をこの団地に付け加える設計をした。これらの果実を享受するためには、いろいろな設計手法を取り入れる必要があるが、語りだしたら到底この紙面で収まるものではない。工事後の管理の仕組み、取説、リフォーム細則といった最新ソフトも欠かせない。それよりも、この工事が成功した最大の要因は、工事の発注者である管理組合の見事な組織体制と、事細かな所まで実に行き届いた実行委員会(住民有志)の気遣いであろう。
 このような改修工事は「住まいながら行う」ことが大前提であるが、逆に「順番に一時移転しながら工事したらどうなるか」という所から検討が始まったのは、ありそうでなかなかない。敷地内に仮設のプレハブを建て、休憩や洗濯、授乳、事務作業などができる憩いの場を設けることはよくある事例。工事中の騒音、振動、防犯、買い物、就寝、インフルエンザ、ペット、赤ん坊など検討すべき不安材料を上げれば切りが無い。高齢者の一人住まいも少なくない。結果、仮設の憩いの場(通称:レインボールーム・延べ907人が利用)のほかにも、隣のUR賃貸住戸を6戸借り上げるという大胆なことも行った。必要な家具は住民から集まり過ぎるほど集まった。延べ800人の利用があり、居住者のストレスを大きく和らげることに貢献した。
 また、住民有志による衣装をまとった「見回り隊」も結成された。敷地内のパトロールは勿論、工事中には住戸内に入り部屋の奥に閉じ込められたご高齢の方に声を掛けていく。「お加減はいかがですかぁ」この団地ならではのコミュニティがそこにある。
 今回管理組合が行った様々な工事中のケア活動は、高齢化した団地のライフライン改修のモデルとなり得るものと確信する。
 工事が終わり、以前より売値が200万円上がった事実が何物件も確認された。投入した工事費以上のリターンには、感無量である。
設計・監理=(有)柴田建築設計事務所、(有)マンションライフパートナーズ、施工=川本工業


     

(2015年11月号掲載)

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