過去事例(設備改善)

国の補助金を活用して全戸の窓を改修/六ツ川台団地(神奈川県横浜市)

1.建物概要

 「六ツ川台団地」は、1968年竣工、RC造、5階建、全16棟(一部4階建て3棟含む)、総戸数406戸の旧日本住宅公団分譲の団地である。
 同団地管理組合は昨年、経済産業省の「高性能建材導入促進事業」を活用し、全戸の窓の改修を行った。


   

 六ツ川台団地                     


   


   

 カバー工法:古いサッシ枠(上)を被うように、新しいサッシ枠(下)を被せる工法


2、補助金活用に至るまで

 同団地では、2014年に大規模修繕工事を行うための建物の劣化調査を実施。その結果、大規模修繕工事は傷みが軽いため先延ばしとの結論に至った。
 その後、国の補助事業を知った同団地管理組合では、同事業を活用した窓の全戸改修を検討し始めた。
 その背景には、築40年を超える同団地では、戸車の劣化から、「窓の開閉が困難」との声が、特に高齢居住者から寄せられていたことに加え、2015年実施予定だった大規模修繕工事では、窓の改修が予定されていたこと。かつて窓の改修と言えば、ハツリ工事を伴う大規模工事が必要であったが、近年は「カバー工法」という比較的簡便に改修が行える工法があることを知っていた管理組合が、同工法も、補助の対象になっていたことで、この機会に事業を活用しようと考えた理由に挙げられる。


3、合意形成に向けて

 管理組合は、2014年の総会で、国の補助事業を活用した窓改修を検討していることを報告。
 翌2015年1月〜2月にかけて、計4回の住民説明会を実施。
 なかには、既に個人的に窓改修を行った世帯が十数世帯あり、「改修費用を返してもらえるのか」という問い合わせも管理組合に寄せられたが、今回の改修で使用する二重ガラスの規格に合わない窓ガラスは、全部取り替える方針で、改修済みの住戸のガラスも全部取り替えることとなったため、改修済みの世帯からも最終的には合意を得られた。
 また、改修工事を行うには、窓の周辺にある物の片づけや移動、エアコンの取り外しと復旧等が必要となるが、高齢世帯が約4割と高齢化が進んだ同団地では、これが工事にあたっての懸案事項であった。
 しかしこれらも管理組合が費用を負担して施工会社が行うこととしたため合意形成が進み、2015年3月29日に開催された臨時総会で、サッシ更新工事が可決された。
 なお、工事の施工は、(株)LIXILリニューアルが行うこととなった。
 補助事業への応募は、施工会社が代行するが、所定の申請書類の準備等、煩雑な事務手続きが必要となる。また、公募期間にも限りがあり、諸手続きを遅滞なく行えることも施工会社には求められた。
 同社は、これまでに補助事業の施工実績が多数あり、またきめ細やかな提案をした同社が施工会社に選ばれた。


4、専有部分立入り工事のための工夫

 窓の改修工事では、専有部分に2回立ち入る必要がある。
 1回目は、各戸の窓の寸法を測るため(30分程度)。どの窓も同じ大きさに思えるが、微妙に異なる。そこで各戸毎に窓の寸法を測り、各戸のオーダーメードの窓を作る必要がある。2回目は、各戸毎に合わせて作った窓を設置するための工事(半日程度)。
 最初に居住者との間にトラブルが発生すれば、2回目の工事は困難になることが予想される。そのため、居住者への配慮が、工事を進めるには重要になってくる。
 また今回の補助事業は、定められた時期までに工事を完了させることも補助の要件となるため、工期の延長は避けなければならない。
 そこで管理組合と施工会社は、「住んでいる人に不快な思いをさせない」よう、密接に連絡を取り合うこととした。具体的には、工事現場で困ったこと等があれば、毎日日報で報告し、さらに毎週土曜日に開かれる「定例会」で施工会社が報告、管理組合が対応し、是正した。居住者からの苦情等があればすぐに管理組合に連絡して、対応を行うなど、管理組合と施工会社が連絡を密にし、現場の状況把握と、問題点の改善に早急に取り組んだ。
 工事現場での対応は、施工会社の現場担当者がメーンとなって行ったことも工夫のひとつである。このことについて管理組合理事は、「管理組合が何かあるたびに現場に出るより、実際に現場を担当する人が、居住者とコミュニケーションを取ってもらった方が良い」と判断したという。また、工事以外の事も含め、管理組合が認識していないことを現場担当者が気付き、報告してもらうことが現場の状況把握に大いに役立った。
 事実、工事期間中なかなか工事に入らせてくれない住戸も数軒あり、管理組合も文書等でお願いするものの、足繁くそれらの住戸に通ったのは現場担当者で、最終的には工事が可能となった。
 また、空き家住戸の対応も現場担当者が行った。空き家住戸の区分所有者連絡先をすべて把握していた管理組合は、まず所有者に許可を取り、その後鍵を借りる等をすべて現場担当者が行った。
 このようにして、2015年7月から始まった窓の改修工事は、同年11月28日に406戸全戸の工事を完了した。


5、工事費と補助について

 工事費用は約2.6億円(戸当たり約64万円)で、国からの補助は、事業費の約22%(約5,800万円)であった。
 今回の補助事業は、費用の3分の1が補助されるが、実際の補助率と開きがある。その理由は、事業費と補助対象費用が同じ金額ではないことに起因する。
 補助対象費用は、高性能建材の材料費(1)と、その取付費(2)。しかし事業費の中には(1)(2)以外の設計費・残材処分費・諸経費(事務所設置費など間接経費)等があり、これらの費用は補助対象費用に含まれない。
 そのため、(1)(2)の合計額の3分の1が補助されても、実際の補助率は下がる。施工会社担当者によれば、「物件によって差があるが、実際の補助率は概ね事業費の20〜25%くらい(※)になる」とのこと。(※:数値は参考値)


6、居住者の評価

 管理組合では、工事中、既に工事が完了した住戸にアンケート調査を行ったところ、窓の性能アップについて高評価を得た。それらの結果をまだ工事を行っていない住戸に提示することも、工事への理解を進めるうえで大いに役立った。
 また、アンケート調査には、「工事関係者」の印象に関する項目があり、それも「対応が良かった」とする答えがほとんどであったという。
 そこで管理組合では、12月に行われた竣工式の際、現場責任者2人に「感謝状」を進呈。工事への献身的協力を労った。



(2016年1月号掲載)

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