3回目の大規模修繕工事 玄関扉取替で対震ドア化:2015年7月号掲載

 N住宅は1981年に旧・住宅公団で分譲された壁式RC造3~5階建、全29棟・総戸数518戸の団地型マンションで、JR京葉線・新習志野駅から700mほど北東の場所に建っています。

 今回の3回目の大規模修繕工事を築33年目の2014年8月末に着工し、2015年5月末に竣工しました。長期修繕計画では前回の大規模修繕から12年目の2015年に計画していましたが、バルコニーのスチール手摺の腐食が進行し安全性が危惧されることから、大規模修繕工事を1年前倒しして2014年に実施する事となりました。

 修繕内容は躯体改修、シーリング、外壁等の塗装、鉄部等の塗装、劣化金物の改修、バルコニー等の防水の基本修繕の他以下の3回目の大規模修繕ならではの修繕工事を実施しました。

○玄関扉取替
 居住者からの不具合(結露・開閉不良・隙間風)の訴えの多い玄関扉の取替を実施しました。仕様は断熱性能H-4等級、遮音性能T-2等級、気密性能A-3等級と基本性能を上げ、対震丁番による対震ドア化、ダブルロックのプッシュプル錠による防犯性・操作性の向上を図りました。

玄関扉取替

○管理集会棟屋根葺替
 管理集会棟の劣化した化粧石綿スレート葺きの屋根を、長期修繕計画で無石綿の化粧スレートでの葺替えを計画していました。工事着工後、無石綿化粧スレートのひび割れ問題を他の現場からの報告を聞き、急遽ガルバリウム鋼板仕様に変更し葺替えました。

屋根茸替

○エアコン用スリーブ・エアコン室外機置場新設
 30数年前の住宅形式のため、住戸の北側の部屋にエアコン用のスリーブ穴や室外機置場が無くエアコンが取り付けられない状況でした。この改善への居住者の希望も多く長期修繕計画でも計画していた工事です。外壁の構造上影響の少ない部位を鉄筋探査し鉄筋を避け直径90ミリの穴を穿孔しエアコン用スリーブを設け、当該室の窓前にエアコン室外機置場を設置しました。

エアコン室外機置場

○アルミサッシ不良パーツ取替
 使用頻度の高い南バルコニー掃き出しサッシの不良パーツ(戸車、エアタイトゴム、ガラス周囲ビード)の取替えを行いました。ペアガラス入りの高気密サッシへの取替への要望も多かったのですが、長期修繕計画に沿って、今回は不良パーツ取替で延命する事としました。

 工事の施工は前回の大規模修繕工事を担当した建装工業(株)が行いました。修繕委員会と設計事務所とで協議し、新聞公募→現場説明→見積→ヒアリングの行程を踏み、ヒアリング結果2社が発注業者候補として残りましたが、前回の実績から、あまり管理組合が気をもまないで工事を進めてもらえるであろうとのことで建装工業(株)に決定する事になりました。管理組合の期待通り、多種にわたる修繕工事をゼネコン出身の経験豊かな現場代理人が見事にこなし、複数のスーパーゼネコンOBや住宅リフォーム関連公益法人役員など強者揃いの修繕委員とも協調し完成に至りました。

 又、管理組合担当理事や修繕委員は2012年の長期修繕計画見直しの時から今回の大規模修繕工事内容を検討し、紆余曲折はありましたが、長期間の検討の末、管理組合員のニーズ・修繕の優先順位を考慮の上、予算内で本工事をまとめ上げた事には敬意を表します。

(設計・監理者/八生設計事務所)

N住宅

(2015年7月号掲載)