過去事例(給水管)

はじめに

 本稿は、故田邊邦男氏(一般社団法人マンションリフォーム技術協会前会長)が長年に渡り長期修繕計画の策定と見直しに携われた物件であり、その計画に沿って行われたオペレーションの一幕である。


団地概要

 K団地は、埼玉県川越市にある日本住宅公団が昭和57年に分譲した548世帯の団地で、今年で築後34年が経過した。5階建て階段室型15棟400戸と、2階建てタウンハウス型32棟148戸からなる団地管理組合法人で、住戸の間取りや建物の構造の違いなどにより修繕積立金会計が異なり、5階建ては4つ、タウンは3つの会計区分に分けられている。
 敷地は整形な長方形で、住棟の配置としては周辺を5階建て棟で囲み、中央に2階建てが配置されている。給水方式は地上式コンクリート製の受水槽とモニュメント的な時計台のてっぺんにある高架水槽による重力式である。 


 タウンハウス専用庭埋設給水管

                        

2010年〜2012年 5階建て住棟内ライフライン改修

 調査から基本設計・実施設計・改修工事と3カ年を掛けて完了した。工事内容は、住棟共用部分の給水管・排水管の更新で、排水管については専有部分も実施した。在来型浴室の住棟については「段階的スラブ上化改修手法」により、同時オプション工事でユニットバス化によるスラブ上配管化を図った。専有部分の給水給湯管はオプション工事とした。この工事は日住協主催の工事見学会も実施され、本紙でも紹介済み。

 

2013年〜2016年8月 屋外埋設給水管・ガス管の更新と給水直結化改修

 1、陳腐化した給水施設
 コンクリート製の受水槽と給水塔は果たして何年先まで使えるのだろうか。特にコンクリート製である給水塔は外壁の塗装工事や内部鉄骨階段の塗装補修を繰り返し余儀なくされる。今となっては過大とも言える巨大な貯水槽から来る水は「カビ臭い」という声もあった。そんな中、屋外埋設管からの漏水事故が発生し始め、屋外埋設管路の改修計画にあわせ増圧直結給水方式に切り替えて将来の維持管理コストを低減させ、日常の水をもっとフレッシュにという要望があがってきた。また、東日本大震災の教訓から、ライフラインの強化と災害対策という観点からの検討も必要とされてきた。

 2、ガス管路の老朽化
 一方で、埋設ガス管の老朽化問題は既に何年も前からガス事業者から情報提供されてきた。
 いわゆる「白ガス管」が使用されていれば、更新費の一部は経済産業省から補助金が支給されるが、「樹脂被覆された管+継手だけ『白ガス管』」という部類であったため、補助金が支給されないという理由で、改修を先送りしてきた。
 その後数年が経過し、給水管の老朽化問題と同様に、敷地内のガス管からガス漏れ事故が発生するようになり、管に大きな穴が開いてしまう事例も確認されてしまった。
 そして、よく調べて見ると、団地の敷地内でありながら「ガス事業者の持ち分」と見なせる管路が少なくないことがわかり、その部分についてはガス事業者の負担で更新してくれることになった。当然に管理組合の資産であるガス管もあるわけで、ここにガス事業者の埋設管更新にあわせ、管理組合の埋設ガス管と給水管の更新を同時に計画することが合理的であることに行き着いた。

 3、5階建てを増圧直結方式に・2階建ては直圧直結方式へ変更
 2013年基本計画当初、川越市水道局における増圧直結給水方式の適用範囲は、引き込み管の口径が50mmまで(戸数に換算するとおよそ43戸程度)という条件であった。何度か局に通い、実際の水の使用量や「連合給水管」という考え方など、様々な観点からこの団地の給水条件を検討し、「敷地内道路などによって仮想的な別敷地として区切られている」という見方から、5階建てのみ棟別に四周の公道から直接、複数の引き込みを行い、基準の範囲内で増圧ポンプを設置する方法という所まで見いだす。ただしこの時点でポンプが10台にもなってしまいコスト的にも現実的な案とはならなかった。しかし、四周に太い本管があり水理条件がよいのが幸いし、2階建ては5階建てとは別に直圧直結方式での別引き込みが可能となる目途はついた。
 翌年、流れが一気にかわった。川越市水道局が増圧直結方式の適用範囲を75mmまで拡大する検討を始めた。その結果、10台のポンプが4台まで減らすことができる。ちょうど、5階建て棟の修繕積立金会計毎に引き込むことが可能になり、改修が現実味を帯び始めた。
 2015年、局の基準拡大が施行され、5階建て棟は3つのゾーニングで増圧直結方式へ、2階建て棟は南北2箇所の新規引き込み管で直圧直結方式へ変更という実施設計が完成した。正直、最初はここまでできるようになるとは思っていなかった。

 4、ガス事業者との連携工事
 この方式変更により、給水管路は全くの新規となる。当然にダクタイル鋳鉄管から最新の水道配水用ポリエチレン管に更新し、耐久性と耐震性を格段に向上させる。
 さらに、同時にガス管もポリエチレン管に更新する。給水管路とガス管路を合理的に設計し直し、ガス事業者持ち分と管理組合持ち分を整理しながら同時工事を実現させ、ここに屋外ライフラインの完全改修が叶った。
 なお、屋外排水管路は、給水ガスとは異なる経路形態であり、材質も「塩ビ製の卵形管」という少し特殊な管が採用されていたことが幸いし、目立った不具合も発生しておらず、当面の継続使用は可能と判断している。

 5、専有部分の設備配管更新をオプション工事で促進する 
 最近では、専有部分の給水給湯・ガス管を管理組合で一斉更新する事例が増えているが、当団地では専有部分はあくまで各戸で実施することを決めている。
 前回2012年工事でも、そのように管理組合としてアナウンスはするが、判断は所有者に委ねている。その代わり、ことある度に実施促進運動を行っており、今回も専有配管更新を強く推進した。特に2階建て棟は専用庭が広く、ここに埋設された専有部分の給水管とガス管は老朽化が極めて心配され、現に工事中に老朽化が末期状態であることが判明してしまった住戸が散見された。その都度、管理組合はタイムリーな広報により、専有部分の給水給湯管・ガス管の更新を促していった。100%への道のりはまだまだではあるが、今後も専有部分リフォーム申請時に促していく空気は醸成されている。

 6、そしてこれから
 次は電気幹線の増量更新が予定され、来年の着工見込みである。実は、先の給水管・ガス管工事の時に、当該設計事務所(トム設備設計)との連携により、掘削箇所が同じ部分については、電線を入れるための管路(空配管)を同時に設計しておいたのである。そして、最後の最後、無駄がないよう、先の工事では仮舗装で終わらせてきた外構(車道・歩道・舗装・緑地整備)改修により団地が蘇ることになる。現在既に計画進行中とのこと。これら全てが先を見越した長期修繕計画に基づくものであり、計画通り引き継いできた管理組合執行部の連携には実に頭が下がる。各オペレーション時にさらに内容を昇華できたことは設計者としては感無量。今後の報告が期待される。


 屋外に設置した直結増圧ポンプの設置状況を修繕委員会メンバーにて確認  

(文:有限会社マンションライフパートナーズ 柳下雅孝)
設計・監理=有限会社マンションライフパートナーズ
施工=株式会社京浜管鉄工業


(2016年10月号掲載)