改修工事情報

電気防食工法「ラスカット」/地震後の配管設備点検の必要性/ライニング済み排水管をさらに延命/タマガワ(株)

給排水管への被害状況

 東日本大震災の大きな揺れは多くの上下水道施設にも深刻な被害をもたらし、首都圏のマンションでも給排水管への被害は広範囲にわたり、激しい揺れや液状化によって多くの配管が破損した。
 主な被害は、給排水管のはずれ、液状化による地盤沈下で地中埋設管の破損、高架槽に亀裂、ボイラータンクの傾きによる漏水、それらに伴う断水など多岐にわたった。
 また、被害のあった管理組合が行った主な緊急対応は、損傷個所の調査と応急処置修理、計画停電に備え給水ポンプ所の自家発電用軽油確保、市に給水車の要請など様々な対策がとられた。


地震後の点検と補修

 大きな被害が無かったマンションでも躯体や配管などの損傷を調査、診断することも重要で、緊急点検等を実施し、結果を告知、危険箇所があれば早急に安全対策を施す必要がある。給水槽を使用している場合、水槽のヒビ割れ、汚水等による汚染、異物混入などの点検も重要で、万一水質に異常があった場合は、速やかに給水を中止し、保健所、水道局等に連絡し、指示に従うことが必要。


配管設備の地震対策

 給水槽などは、転倒、脱落を防止する補強、地盤沈下などによる傾斜の防止、給水管の破損に備え緊急遮断弁の取り付け、給水ポンプなどのズレや転倒防止の耐震ストッパー設置、配管の継ぎ手部分に伸縮自在の部材を使い振動を吸収するフレキシブル継ぎ手などを使うことで被害を抑えることができる。


今後の改修工法選択

 今後の地震対策や設備の延命を考えた大規模修繕工事を検討する際、改修工法の選択は費用面も含め判断を下すのは容易ではない。更新工事は配管を交換し、漏水の解消や耐久性などが得られるが、費用や工期、騒音など居住者にかなりの負担も発生する。更生工事の場合、樹脂系塗料を管内に塗布するライニング工法が一般的で、更新工事に比べ費用や工期などの負担が軽減されるが、洗浄や施工技術等によっては再び腐食が進み、10年程で更新か更生の判断を迫られることもある。
 工法選択には保証や審査証明の有無などを十分確認することが重要だ。




【ラスカット工法の仕組み】

給水管電気防食システム「ラスカット工法」

 給水管の劣化を進める原因のひとつにサビの発生がある。サビの発生を抑えるためライニング鋼管等を使用する建物も増えたが、継ぎ手部分など鉄が露出し水と接触する部分は、サビによる腐食が発生し、赤水や漏水の原因となり劣化が徐々に進行し、管自体の寿命を縮める。これらの対策として様々な工法開発が進められているが、その中で「電気防食法」と言われる電流の作用で水と接する環境にある配管の鉄部分の腐食を防ぎ、サビの発生を食い止め、配管を延命させる工法として注目される「ラスカット工法」がある。
 開発元は創業111年の歴史がある、タマガワ(株)(東京都品川区・高橋寿江社長)で、同工法は国土交通省所管E建築保全センターの技術審査証明および特許も取得している。同社、荒川区の研究所では、製造、検査や新製品の開発、試作なども行われている。




【同社、荒川区の研究施設】

電気防食法とは

 金属の表面は数多くの電極から成り立っていて、水に触れることで水や酸素の影響で微弱な電子の移動が起こる。それにより金属表面が電池状態(局部電池)になり、電流が流れ、それに伴う化学反応によって金属は腐食する(サビの発生)。
 電気防食法はこの腐食電流を打ち消すように金属表面に電気を送り込むことで金属の腐食を止める方法で、船舶、湾岸施設、化学装置などの防食法として100年以上前から広く普及している。 この作用を給水管に応用したのが「ラスカット工法」だ。




【継ぎ手部分に腐食が集中する】

ラスカット工法の特徴

 同工法の施工は主にパイプスペース内での作業となるため室内へ入っての作業は無いとのこと。 配管に「アノード」と呼ばれる電極ユニットを設置し、制御ユニットから微弱電流を送る。アノードから放出される微弱電流は水中を通り管内鉄表面に流入し、鉄を防食する仕組み。理論的には通電状態が続いている限り半永久的に防食効果が得られるという。
 工期は1日当たり10戸前後を目安としており、断水は全戸断水(1日)1回、系統断水(半日〜1日)1回、工事終了後、洗浄のための入室作業が約30分という工程。
 電気代は1世帯当たり月2・5円ほど。水中に流される電流は極微弱なため人体や建物への影響は一切ないという。保証については装置と効果について10年間を保証。



   

【施工前(左)に比べ設置後の管内はサビが減少し滑らかになっている(右)】

 防食効果のほかに副次効果として細菌類の繁殖を抑制する除菌効果もあるため、利用者からは設置後、飲料水の味覚向上の声も聞かれるという。
 同社はこれまで約2万戸の集合住宅に同システムの施工実績があるが、現在、既にライニング更生を施し10年を迎える管理組合から、給水管をさらに延命させたいとの相談も多く、その解決策として同工法を「アフターライニング」(ライニング後の更なる延命措置)として積極的に提案している。特に管理組合への説明には、ラスカットの効果を直接理解してもらうため、小型のデモンストレーション用機器を設置。デモ機にはラスカットを接続した鉄片と接続の無い鉄片が設置され、接続していない鉄片にサビが発生し赤水化していく様子とラスカットを接続している鉄片の水槽にはサビの発生がない様子を見ることができる。




【電気防食の効果を確認できるデモ機】

設置後10年の状況を追跡調査

 同社はこれまで同システムを設置し、およそ10年を迎える給水管に検査カメラを使い管内部の状況と水質を検査する追跡調査も実施。これまで調査を行った配管は、いずれも新たなサビの発生は認められず、既存のサビについても減少傾向にあり、腐食の進行が抑止されていることが確認された。また、水質検査についても、水質中の鉄及びその化合物が激減し長期的防食効果を反映しているものと診断された。


住まいづくりフェアに出展

 同社の「ラスカット工法」が、5月19日から東京ビッグサイトで開催される「朝日住まいづくりフェア2011」の出展ブースにて紹介される。  出展ブースでは、ラスカット工法の技術、製品、工事内容、保証等が詳しく展示される予定だ。
 問合せ先、タマガワ株式会社(電話03・5437・0170)




(2011年5月号掲載)