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日本不動産学会が秋季大会ワークショップ開催/「住宅団地の再生を考える」

 昭和30年代から大都市圏及びその郊外に大量供給された住宅団地の多くは、建物の老朽化と居住者の高齢化と言う課題を抱え、何らかの再生策が必要とされている。そのような中、11月15日、日本不動産学会の秋季全国大会(学術講演会)が千葉県浦安市の明海大学で開催され、「住宅団地の再生を考える」と題するワークショップが開かれた。今月はその様子をお伝えする。


ワークショップの流れ

 住宅団地の再生を考えるにあたり、住宅団地の置かれている現状を、本紙「新マンション事情」著者の松本恭治氏が、西欧の団地再生の取り組みについて、小畑晴治氏(日本開発構想研究所理事)が、住宅団地再生の現場について、戸辺文博氏(NPO法人多摩NTまちづくり専門家会議理事長)が報告を行った。
 以下に各氏の報告の要約を掲載する。


松本恭治氏



・団地再生にはストックの改善とコミュニティの回復が必要だが、高齢者ばかりで子どものいない団地で再生は可能か。
・またコミュニティの回復と言っても、団地に住む人の実像が不明。
・自治体により団地の調査方法が異なり、それでは比較ができない。
・将来予測がこれからは重要。住宅供給がバブル経済の頃は都心から郊外へという流れだったが、今は逆になり、供給される住宅が分譲集合住宅。
・一方、都心では未婚単身化が猛烈に進行している。結果出生率が低くなり、外部から人が来なくなれば、都心には人がいなくなる。
・その様な状況でコミュニティの回復はできない。
・結果、管理組合の管理で、どこも傷んでいないマンションでも空き家になる。こうなると管理組合は何もでき無い。団地再生は管理組合だけではできない。
・公共政策の失敗を管理組合に負わせるのは問題。


小畑晴治氏



・海外の団地再生のポイントとなるのは、サッチャーの時代。第二次大戦後、西欧でも公共団地が供給されたが、荒廃等の問題をもたらした。
・サッチャーの時代は行政改革が行われ、2000年以降、団地再生は社会政策(社会に発生した諸問題に対する政策)の時代に変わっていく。
・イギリスではサッチャーの民間活力路線により、公共住宅を大企業に払い下げた。
・しかし、その弊害もあったため、住民参加による都市再生に舵を切る。
・バーミンガムの高層団地は、国も自治体も手を出さず荒廃していたが、住民が民間企業と協力し、建物を低層化し、団地再生を行った。
・このように、イギリスでは、住民参加が主体の団地再生を今でも行っている。そのための「ソーシャルエンタプライズ庁」という組織もある。
・日本の都市政策は、公共事業増大型の都市計画。それでは、高齢化問題等の社会問題の解決策にはならない。
・自治体には「都市計画課」と「まちづくり課」があり、「まちづくり課」が社会問題に対応しているが、「都市計画課」が予算を圧倒的に持っている。それが社会に本当に役立っているかと言う視点が欠けている。
・海外も必ずしもうまくいっていないが、海外は都市政策の前に、都市の社会政策を行っていることを学ぶべきでは。


戸辺文博氏



・多摩ニュータウン(以下多摩NT)は高齢化が進んでいると言われているが、実態は違う。
・多摩NTでも諏訪、永山の様な初期入居の地域は高齢化が進んでいるが、他はそれほどでもなく、むしろこれから高齢化が本格化する。
・再生には、今住んでいる人には、安心、安全に住める環境を提供し、若い世代を迎え入れるため、積極的な改修をする。
・そのためには、団地を経営するという視点を入れる。例えば、団地内のある棟を建替え、そこに外部の幹線道路とのアクセスを設け、さらにそこに高齢者向け住宅を誘致するなど、一棟の建替えにより、団地の高齢化と言う課題を解決する。
・多摩NTは非常にいい空間で、子育てにはいい環境であるということも広めていきたい。




(集合住宅管理新聞「アメニティ」2015年12月号掲載)

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