予想される大地震

 昨年8月、内閣府が出した「南海トラフ巨大地震」の被害想定では、九州から関東沿岸までの広い範囲で被害が想定され、最大で建物全壊焼失棟数約238万棟、死者約32万人と想定された。
 また、首都直下型の地震も予想されており、昨年東京都が発表した被害想定では、東京湾北部を震源とするM7・3の地震が発生した場合、東京都だけで最大建物被害30万棟、死者約1万人がでると想定されている。
 このように、予想される大地震に対する備えを急ぐ必要がある。


住宅耐震化の現況と課題

 予想される大地震に対し、政府は建物の耐震化を進め、建物の倒壊による死者を半減することを目的としている。
 平成7(1996)年に制定された「耐震改修促進法」では、平成27(2015)年を目標に、全国総戸数約4950万戸の住宅のうち、90%にあたる約4450万戸の耐震化を進めることとなっている。また、平成22(2010)年の「新成長戦略」、翌23(2011)年の「住生活基本計画」では、耐震化を平成32(2020)年までに95%とする目標が設定された。
 住宅の耐震化を進めるため、耐震診断にかかる費用の3分の2を国と地方公共団体で負担し、改修費用は11・5%ずつを国と地方公共団体で負担するとした助成制度を実施している。
 また緊急に耐震化が必要だが、合意形成が難しいマンションの耐震診断に、1棟あたり200万円を国が直接補助する支援策も実施されている。
 しかし国土交通省の調査によれば、平成20(2009)年の住宅の耐震化率は約79%と、平成20年までに達成すべき数字より約2ポイントマイナスとなっていた。
 マンションの場合、昭和56(1981)年以前に旧耐震基準で建築され、耐震化が必要と考えられるマンションは約100万戸あるが、その内耐震診断したマンションは約27万戸、耐震改修したものは約2万7千戸と、耐震診断・改修ともにあまり進んでいない。
 耐震化が進まない理由には、
(1)「耐震診断を受けていないが、耐震性があると思っている」など、耐震化の必要性に関する認識の不足
(2)耐震化コスト(診断及び改修費用)の問題
(3)耐震業者・工法等に対する信頼性が低い
などが挙げられている。


2013年以降の動き

 なかなか進まない耐震化に対し、国土交通省は昨年秋、オフィスビルやマンションなど、多くの人が利用する建物の所有者に耐震診断義務化を検討し始めた。
 今年の通常国会に「耐震改修促進法」の改正案を提出し、再来年の2015年を目途に耐震診断を義務化する方針だ。
 対象となる建物は、昭和56(1981)年以前の旧耐震基準で建てられた建物で、床面積が5000m以上の建物のほか、震災時に避難道路となる幹線道路沿いの建物。診断に応じない建物所有者には、罰金(50〜100万円程度)を課すことも検討している。
 一方、耐震化が進まない理由のひとつ、耐震化コストの問題に対応するため、来年度から耐震診断費用のほぼ全額を補助できるようにし、診断の結果、改修や建替えが必要となった建物への助成も検討している。
 また、耐震業者・工法等に対する信頼性も低いことから、耐震関連企業の育成、新工法の開発も進めていく方針だ。
 このように2013年からは建物の耐震化に向けた動きが本格化することになるようだ。
 先の東日本大震災で震源に近く、被害の大きかった千葉県では、震災以降耐震診断・改修補助金の申請は確かに増えているそうだ。しかし、厳しい財政事情が今後耐震化の制約要因になる可能性も示唆していた。
 国は、財政事情が耐震化の制約要因にならないよう、財源の確保に努めるとともに、住民も「大丈夫だろう」という根拠のない安心感を捨て、耐震化に臨むことが求められる。
 今年も東京都の「〜ビル・マンション・木造住宅の安全を考える〜 耐震キャンペーン」が1月15日(火)〜26日(土)まで行われる。
 マンション向けのイベントは、1月19日(土)、に都庁第一本庁舎で「マンション耐震セミナー&個別相談会」が開かれる。事前申込制で、定員は450名。参加費無料。
 問合せ先は、特定非営利活動法人耐震総合安全機構。電話03-6912-0772。
 他にも東京大学地震研究所の見学ツアーやマンションの耐震改修工事事例見学など様々なイベントが行われる。どのイベントも参加無料のため、参加して耐震への造詣を深めてみては。
 耐震キャンペーンに関する問合せは、2013冬耐震キャンペーン事務局。電話03-5459-4260まで。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2013年1月号掲載)