NPO日住協(川上湛永会長)は、10月24日、日比谷コンベンションホールにて「設立45周年記念シンポジウム」を開催した。当日は、用意された200席が埋まる盛況で、高経年マンションの新たな管理について、活発な議論が交わされた。その概要をお届けする。


「未踏の道だが道筋をつけたい」

 基調講演に先立ち、NPO日住協の川上会長は主催者代表挨拶で、「日住協設立当初は建物管理に関する蓄積も少なく、外壁塗装等について諸専門家を集めて研究し、成果を上げてきた。高経年マンションの問題も先人が歩いた道はなく、これから切り開く問題である。未踏の道で困難だが、建物管理の道筋をつけてきたように、これからの道筋をつけていきたい」とあいさつした。

基調講演


「管理組合の積極的・経営的管理とは」

 続いて、早稲田大学法科大学院教授・日本マンション学会副会長の鎌野邦樹氏が「これからのマンションの管理と再生」と題し講演を行った。
 講演では、高経年マンションを老朽化させない方策を「建物の長寿命化」「時代のニーズに応じた改修」「マンションの終末、締めくくり」の3つに分けた。
 「建物の長寿命化」のためには、大地震の発生が予測される中、人命尊重の立場から、耐震化対策の必要性を強調。
 また「時代のニーズに応じた改修(例・省エネ、高齢者への対応等)」は、改修が共益にかなうと考えられるものは、区分所有法の決議要件の緩和も考えられると論じた。
 「マンションの終末・締めくくり」とは、耐震改修して長寿命化を図り、かつ時代のニーズに応じた改修を行っても、かけた費用分の効果が見込めない場合、人口減少・市街地が縮小する状況下では、その議論を始める必要な時代になったと指摘。いずれの場合も、管理組合活動が活性化している必要があり、高齢化のため、役員の成り手不足下での新たな管理方式として、理事会方式を基本としつつ、第三者管理方式との調整を図ることを提案した。
 鎌野氏は「今は元気な高齢者が多く、熱心に組合活動に参加しているが、時間が経つとそうも言ってられない。その時の選択肢として、第三者管理も考えられるのでは」と論じた。
 また、いずれを選択するにも、専門家(マンション管理士、建築士等)の手助けが必要で、その費用等を捻出するため、管理組合の共同財産を区分所有者のために活用する「管理組合の積極的・経営的管理」を提案。
 その具体例として、敷地の一部を駐車場として貸す「資金獲得業務」や、区分所有者に有益な福祉施設等を呼び込む「共益的活用業務」、空き住戸の賃貸を取り次ぐ「生活サービス業務」を挙げた。




パネルディスカッション

 続いて行われたパネルディスカッションは、パネリストに、鎌野邦樹氏(基調講演者)、小林秀樹氏(千葉大学教授・日本マンション学会会長)、浜岡紀子氏(団地管理組合法人西小中台住宅理事)、小池博氏(豊ヶ丘5―3住宅管理組合調査検討委員長)、大石和夫氏(NPO日住協理事長)が参加し、司会を川上湛永氏(NPO日住協会長)が務めた。





決議要件緩和のため法改正を

 まず、浜岡氏が西小中台住宅での団地再生活動を紹介。
 同住宅では当初建替えを模索していたが、経済状況の悪化から、建替えによらない再生に転換。現在では、多世代が団地の行事に参加し、良好なコミュニティが形成されていることを報告した。また、多世代が利用できる高齢者施設や子育て施設を導入するため、集会所の建替えを提案したが否決されたことも報告。
 この点について、同住宅の再生を共同研究で進める小林教授は、「団地の再生には従来の維持管理だけでなく、経営的管理も必要。そこで集会所の建替えが提案されたが否決された。その中身は、2割の反対のうち半分は確信的反対論で残りの無関心な人は反対票に換算されてしまい、そこが問題。法制度の問題ともいえるので、例えば集会の成立を区分所有者の3分の2、その4分の3で議案が成立するようにできないか」と提案した。 それに対し、鎌野教授は、「現行法では、無関心者にも意思表示をしてもらうことになっている。しかし、諸外国では、集会に出てくる人が少ない場合、決議要件を緩和している例もある。特別な事項については、特別な決議要件が必要なこともあるため、何らかの法改正は必要だろう」と、法改正の必要性に言及した。



役員定年制はありうるか

 続いて、豊ヶ丘住宅の小池氏が報告。同住宅は、居室が広く、また周辺環境も良く住みやすいため居住者の出入りが少なく、結果高齢化が進んでいる。そこで、高齢化対策委員会を発足させ、組織改善案をまとめ住民に説明してきた。
 そのなかで、240戸の世帯数で、役員輪番制ではすぐに順番が来るため、高齢者の負担軽減のために役員定年制を提案したが、理事になるのは権利という声もあり決まらなかったことを報告。現在は、役員の負担軽減のため、総務担当理事を置く等の対策をしている。役員定年制に対し、大石理事長は、「定年制のアイデアはいいが、制度化するのは難しいのでは。理事になるのは、権利でもある。しかし、完全輪番制だと弊害があることも事実で、立候補制+輪番制にできれば理想的だ」と役員の選出方法の改正を提案した。また「役員資格を柔軟にすることで戦力不足を補い、かつ、理事会運営をサポートする事務局機能を導入する等の工夫も必要」と指摘した。





維持管理から運営的管理への移行に必要なこと

 次に、管理組合が高齢者施設の導入等、運営的管理を導入するために必要なことについて、議論が行われた。
 これについて小林教授は、「管理組合が実際に行っている施設の導入等は必要に迫られてやっていることだが、理論的に大丈夫かと言うことが問われる。批判もあるため、すべて組合の総会で決議し、結果は尊重する。その時、諸施設等の導入は、『直接的利益』だけではなく、『間接的利益』がある事で、マンションの資産価値が上がると説明できれば、管理組合が認める範囲で支援することは問題ないのでは」と提案した。
 管理組合の運営的管理について鎌野教授は「管理組合が行う生活支援サービスは、管理組合がある業者に委託して、管理費から支出できるかという問題があるが、原則は受益者負担で、管理組合は橋渡し役。契約主体が管理組合だと、問題が発生した時に責任を問われるため、慎重にサービスを行った方が良い。活動に歯止めをかけるというわけではなく、現状を直視し、区分所有者が住み続けられる環境を管理組合が作る仕組みを考えなければならない」と、管理組合の運営的管理に慎重さは求められるが、その必要性は認めた。



組織同士の連携を

 最後に、鎌野・小林両教授ともに、「運営的管理を法律化していくには、管理組合や管理組合団体と学会が協力することで解決できる」と指摘。
 大石理事長は、運営的管理の導入を計画的に進めるため、日住協が管理組合とのつながりを強化し、専門家等の団体と研究団体を来年以降組織化することを宣言しシンポジウムは閉会した。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2014年11月号掲載)