本紙では、大地震発生後の「電気火災」による二次災害防止の観点から、感震ブレーカーを管理組合が主導して、全戸に設置するよう呼び掛けきたところ、いくつかの管理組合から「設置に向け議論を始めた」という声をいただいた。このように動きつつある管理組合がある一方で、国や自治体等はどう動こうとしているのか。その取り組みを追ってみた。


感震ブレーカー普及に補助制度を設けた自治体も

 内閣府がまとめ、昨年閣議決定された「首都直下地震緊急対策推進基本計画」では、木造住宅密集地域の感震ブレーカー普及率を今後10年間で25%にする目標を掲げた。
 特に木造住宅密集地域での住宅の建替えや、リフォームの際に、感震ブレーカーの設置を進め、目標を達成しようとする考えだ。
 電気技術に関する調査研究を行う(一社)日本電気協会でも、内部規程で、木造住宅密集地域で新築住宅の電気工事を行う時は、感震ブレーカーの設置勧告を盛り込む予定だ。
 神奈川県は、2016〜25年度を期間とする「神奈川県地震防災戦略」を改定中で、感震ブレーカーの普及について、一定の数値目標を設定しようとしている。
 埼玉県は、昨年3月「新たな埼玉県震災対策行動計画」を策定し、今年度から関係者と協力して感震ブレーカーの普及促進にあたることにしている。
 横浜市は2013年度から補助を始めた。横浜市内の補助対象地域内の住宅を所有する個人が、分電盤タイプを設置する際、5万円を上限に、設置費用の3分の2を補助している。
 東京都足立区では、助成対象地域内の旧耐震木造住宅の居住者が、分電盤タイプを設置する場合、最大8万円の助成を行っている。
 千葉県市川市では、市内に住民登録をしており、自ら居住、もしくは居住する予定の住宅に、分電盤タイプを設置する場合、10万円を限度に工事費の3分の1を助成している。





町内会(自治会)でも独自の取り組み

 自治会が独自に感震ブレーカー設置に取り組む事例も見られる。
 北区の自治会では、簡易タイプを自治会費で共同購入し、500世帯に配布した。
 さいたま市の町内会では、感震ブレーカーの必要性を広報した結果、100世帯が簡易タイプを設置した。
 分電盤等の製造・販売事業者により構成される(一社)日本配線システム工業会では、地域の消防署等が行う防災イベントで、感震ブレーカー普及啓発のためのパンフレットを作成。自治体が補助制度を取り入れるよう要請もしている。
 マンション管理会社の団体である(一社)マンション管理業協会では、協会発行の広報紙に感震ブレーカーのことを記載しているが、今のところそれ以上の取組は行っていない。
 このように感震ブレーカーの普及に、国や自治体等も動き始めたが、昨年経済産業省が感震ブレーカーのメーカーに調査したところ、これまでの累計販売台数は全国で約40万台(全国の総住戸数約6000万戸)と、ほとんど普及していないのが実情だ。


全戸設置に向けて管理組合も行動を始めては

 地震後は避難所への避難が想像されるが、道路には割れたガラス等が散乱し、倒壊した建物等により、危険な状況になっていると考えられる。避難所に着いても、多くの人で混雑する避難所では、プライバシーの確保も困難となり、慣れない環境下での避難生活というストレスにもさらされる。
 建物が無事であれば、建物内で避難した方が、安全かつストレスの少ない生活を送れる。
 しかし、建物内で火災が発生すれば、建物内避難は不可能となる。
 さらに、地震後の建物の復旧費用は莫大なものになる。
 図1にあるように、阪神淡路、東日本の両震災で起きた火災のうち、電気が原因となる電気火災が6割以上を占めている。高確率で起きる電気火災の防止のため、マンション内でも感震ブレーカーの設置は欠かせない。
 個人が設置するケースや、管理組合が一括して取り付けるケースもあるが、一戸でも設置漏れがあれば、意味が無い。
 全戸設置を目標に、管理組合でも議論を初めてはいかがだろうか。
 M7級の首都直下地震は、今後30年以内に70%の確率で起こると言われる。いつ起きてもおかしくない地震への備えを急ぎたい。




(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年3月号掲載)