急ぎたい緊急輸送道路沿道建物の耐震化

大地震の起きる確率を地図化

 今年6月10日、政府の地震調査委員会は、今後30年間に強い地震が発生する確率を示す「全国地震動予測地図」の2016年版を公表した。
 同地図は2016年1月1日時点で、今後30年間のうちに、震度5弱から震度6強までの地震が発生する確率を、震度別に日本地図上で色分けしたもの(図1は震度6弱以上の地震発生確率)。
 図1を見ると、南海トラフ地震の発生が予測される太平洋側は、広範囲にわたって濃い色(=高確率)になっている。県庁所在地別の確率も記載されており、東京都47%、横浜市81%、さいたま市55%、千葉市85%と、海に近い都市ほど高確率となっている。
 ちなみに同地図では、熊本市の確率は、関東の県庁所在地から見れば低い7.6%であったが、今年4月、震度7の地震が起きた。
 これらから言えることは、確率の大小に関わらず、日本列島では大地震は避けられないということである。そのことを前提に備えを急がなけれなばならない。

緊急輸送道路の建物耐震化の現況

 大地震への備えとして建物の耐震化があるが、現状はどうなっているのか。2011年、全国に先駆け「緊急輸送道路沿道建築物耐震化推進条例」を制定し、耐震化に取り組む東京都の現況を見てみたい。
 同条例は避難、救急消火活動、緊急支援物資の輸送等、震災時の復旧復興活動を支える緊急輸送道路が、建築物の倒壊で閉塞されることを防止するため、建築物の耐震化を推進し、震災から都民の生命と財産を保護し、首都機能を確保するために制定された。
 2015年12月末時点で、特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率は、80.9%となっている。
 同条例により、特定緊急輸送道路沿道の旧耐震建築物は耐震診断が義務化され、診断率は93.7%(2015年12月末時点)と進んでいるが、診断の結果耐震不足が判明し、耐震改修が済んだ旧耐震建築物は、27.1%にとどまっている。


耐震化へ充実しつつある補助制度

 耐震改修が進まない理由に、高額な費用負担が挙げられる。特に高齢化が進んだマンションでは、費用負担の問題は、合意形成を行う上で大きな問題となる。
 そのため都は、耐震改修に手厚い補助を用意(例・特定緊急輸送道路沿道建築物の場合、補助率は最大で6分の5)。
 また、緊急輸送道路沿道建築物の所有者が、耐震改修のため特定金融機関から融資を受ける場合、その金融機関が定める通常利率より低い利率で融資を受ける制度を設けている。
 国にも補助拡充の動きがでている。国土交通省は、熊本地震で旧耐震建築物の倒壊が相次いだことを受け、2016年度第2次補正予算、及び2017年度予算概算要求に、現状の耐震改修補助金(国と地方合わせて費用の23%)に30万円上乗せする方針を固めた。
 このように、耐震改修の補助制度や融資を活用すれば、自己負担を抑えることはできる。

緊急を要する地域を守るための耐震化

 都の条例制定後、2016年に改正された「耐震改修促進法」では、緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断を義務付け、各種補助等の施策も設けたが、耐震化は進んでいない。
 同法では、耐震改修は「努力義務」とされていることが一因と思われるが、緊急輸送道路沿道の耐震改修が必要な建築物は、所管行政庁による指導・助言・指示と、指示に従わない場合は従わなかった旨公表され、さらに、倒壊の危険性が高い場合は建築基準法による改修命令等が行われる。
 緊急輸送道路沿道建築物の耐震化は、自分の命を守る他、震災後の速やかな救護活動や復旧活動を可能にし、ひいては地域の安全性を高めることに繋がる。
 行政からの指導等を受ける前に、特に、耐震性不足の緊急輸送道路沿道建築物の所有者は、自主的かつ速やかに耐震化への動きを進めることが求められる。





(集合住宅管理新聞「アメニティ」2016年9月号掲載)