新マンション事情

遠目近目のマンション論ことはじめ

はじめに

東京から群馬の大学に赴任して7年と9ケ月になるが、高速道路を利用しての通勤だから、最近のガソリンの値上がりには少々ふところの不安を感じる毎日である。東京大都市圏のマンション問題を長く研究してきた身としては、マンション問題とはけじめをつけたつもりで地方に出向いたのだが、相変わらず今もマンション研究から離れずにいる。

平成12年4月1日に初めて大学に出勤したのだが、高崎駅を降りて駅前でバスを探した途端に驚いた。次のバスは1時間後だから約束の時間に遅れるのは間違いない。仕方なくタクシーを利用したが片道1600円くらいかかった。郊外に立地する大学や高校や工場は自前のバスで朝晩の送迎をしているが、時間外にはその送迎がない。マイカーを運転できない高齢者用のミニバスが定期的に走ってはいるが、乗った途端にまた後悔することとなった。マイカーでは15分の場所なのに、寄り道が多いから40分位かかる。車社会の不条理を感じながら致し方なく高速道路利用の通勤となった次第だ。幸い高速道路を利用すれば東京の自宅から大学までは1時間半以内で確実に到着する。

そんな訳で忌々しい車社会に放り込まれてからは、余計車社会の弊害が気になって仕方がない。なにしろ群馬県は日本一のマイカー保有率だから駐車場がない古いマンションは買い手がない。廃屋店舗どころか廃屋マンション、廃屋病院すら発見した。飲み屋街の多くの店がつぶれている一方、驚いたことには田畑の真ん中に大きな駐車場付きの飲み屋があるではないか。客は代行屋に送ってもらうらしいが、真偽のほどを確認したことがない。

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駐車場がなければ商店だけではなく大学、医療機関、福祉施設、工場が成立しない。郊外には中心市街地から脱出した建物が散らばっている。市街地調整区域は開発特区化したが、行政は次々それらを市街地に繰り込んだから、薄くまばらな市街地が形成された。その結果、訪問介護がより困難になった。通院支援のNPO団体が活躍しているが、車椅子利用者の買い物等の外出支援までは手が回らない。街中で車椅子使用者に会うことが滅多にない。学習塾は親が車で子供を送迎するから、親離れ子離れが困難だ。一方こんな群馬でこの2・3年中心商業地に急速に高層分譲マンションが数多く建ち始めた。多くの人の心配をよそに結構完売している。ところで群馬と東京を往復しているとそれぞれを遠目近目両方で比較する機会が増えた。群馬の過疎地の男性は永久未婚層が蓄積しており、それが過疎地特有の社会問題と思っていたら、意外にも東京の下町も似たり寄ったりだ。群馬のマンションはスラム化が早いと思っていたら、大都市圏の郊外団地もその危険要素が蓄積している。群馬の分譲マンション居住者の単身率は高いが、東京都心のマンションも似たり寄ったりだ。次号以降この似たり寄ったりから論を展望したい。もちろん似もせず寄りもせずも論じるつもりだ。(つづく)

(2008年1月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)