新マンション事情

深刻化しつつある郊外の非木造共同住宅の空き家問題

平成15年に国が実施した住宅土地統計調査結果からは、非木造共同住宅の持ち家と賃貸の世帯数が判明しても、空き家が分譲、賃貸のいずれのマンションから発生したかを正確に特定出来ない。そこで今回は非木造共同住宅の空き家の再集計結果を報告する。図は東京大都市圏70kmの範囲で距離帯別に全住宅と非木造共同住宅との空き家率を比較したものだ。全住宅の空き家率は距離帯で大きな変化が無いものの、非木造共同住宅の空き家率は外周部に行くに従って急激に増加する。ただし60〜70kmの距離帯の空き家率が30%と高いものの70km圏全体の空き家率はその影響を受け難い。主な原因は以下の通り。
(1)10〜20km帯とその前後にストック数が集中しし50km以遠のストック数がわずかに過ぎない。現段階では70km圏全体の非木造共同住宅の空き家率は、住宅経営上の決定的な障害にならなくとも、大都市圏周辺部では深刻化していることを示す。
(2)大都市圏では距離帯が増すほど車保有率が上昇し、そのため駐車場なしのマンションは借り手、買い手を見つけにくい。群馬県を例に取ると、駐車場がないマンションは欠陥住宅に近い。公共交通機関が壊滅しているからマイカーが無ければ生活が成り立たない。
(3)非木造共同住宅の平均規模は距離帯で大きく変わらないが、一方全住宅の平均規模は周辺部に行くほど拡大する。借家の比率が少なくなり、戸建持ち家が主流になるためだ。従って大都市圏周辺部における非木造共同住宅は分譲・賃貸に関わらずその地域では相対的に低水準住宅となる。戸建持ち家は同居者も多く、家族人数が減少しても空き家化しにくいが、低水準化した住宅は単身者が多いため居住期間も短く、需要が乏しくなれば空き家化しやすい。


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(4)バブル崩壊後土地売買の目的が所有から利用に転換したことも郊外住宅の空き家化に大いに寄与した。都心部の地価が高いときは多くの人々が郊外住宅の需要を喚起し中古需要をも支えたが、都心部の土地が居住用に利用され始めると遠隔地の住宅需要は大きく減少。都心からの住宅需要者は遠隔地に到達する前に途中下車する傾向が強まり、さらに遠隔地居住者が都心に移動する傾向が強まった。買い手、借り手を失った古い小規模床面積の非木造共同住宅は維持管理の良否に関わらず急激な価格低下、空き家化を余儀なくした。
(5)市街化調整区域がある郊外は薄く広く市街地が膨張しやすく、都市計画上の問題も多い。
ところで、今後少子化と人口減少で郊外遠隔地の非木造共同住宅の空き家率は確実に増加する。分譲マンションへの影響は避けられない。ストックの存続の環境条件も悪化。現在、東京大都市圏における非木造共同住宅の空き家化はまだ序の口だ。東京圏全体を風邪程度の症状に喩えれば、人口減少、都市崩壊が進む地方都市の場合は肺炎に近い。各種建物の廃屋は決して珍しくなく、分譲マンションが半分空き家でも驚くに値しない。問題は行政、住民とも無関心なことだ。一体この国はどこに行き着くのか不安である。(つづく)

(2009年1月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)