新マンション事情

高密度市街地の拡散とマンション問題

図はDIDs人口密度で横軸が昭和35年、縦軸が平成17年である。35年当時の群馬県は神奈川県、埼玉県、福岡県とさして変わらず全国では中位の人口密度であった。今思えば群馬がそんなに高い密度であったかと驚かされる。旧市街に残った古い住宅地を見ると簡単に理解できる。多くの住宅ではマイカーがなかったから互いに身を寄せて固まって住んでいたのだ。毎日の買い物は徒歩が当たり前であったから表通りは小売店が軒を並べていた。多分昭和30年代までは全国の町は高密度にこじんまりとまとまっていたに違いない。ところが40年経過して、青森、福井、山口とともに群馬は最も人口密度が低いグループに転化した。人口が減少した訳でなく、むしろ増加しつつも高密度市街地が人口増加率以上に拡大して密度が薄まったのが原因である。平成17年の高崎市旧市(戦前の市域)の人口は昭和35年時点の4割に減少したのだから、中心市街地の空洞化は本格的だ。市街地の人口密度を薄めた原因は企業誘致による市街化調整区域の開発自由と、それによってもたらされた車社会だ。
初期の工業団地は駅のそばに出来たが、自動車保有率が高まると立地選択の自由を獲得し、平坦地ならどこでも団地造成は可能となった。マイカー保有率が高いほどDIDs人口密度は低くなるが、相互に原因でもあり結果にもなった。ところが全体が拡散した時代から近年は増加・減少の2極分解の傾向が顕著になってきた。人口密度が高まる地域ほどマンション密度が高くなるが、これも相互に原因であり結果ともなる関係だ。首都圏では東京、神奈川がDIDs人口密度が増加組で、千葉、埼玉が停滞組、茨城、栃木、群馬は減少組となる。東京特別区は増加エリアでますます住宅の高層化が進むが、東京都心では10分も歩けば地下鉄の入り口に達するから車で通勤する必要は無い。一方減少県では分譲マンションの供給量は極めてわずかにとどまっている。地方では勤務先の多くが郊外に拡散した結果、中心商業地区に居住する理由が乏しい。郊外の1戸建てを選択すれば行動の自由を保障するマイカーを成人の分だけ駐車できる。もちろんマンション供給者もマンション販売にいろいろ手を尽くす。機械式駐車設備を導入し、1世帯に2台設置し、駐車料金を無料としてまで販売する。時限爆弾つき分譲だから地方都市の中心部も暗澹たる将来が待っている。

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一方郊外は行動の自由を得た人々が中心だから、最寄駅、バス路線と関わりなく住宅や都市施設が建てられる。もともと鉄道密度は薄いし、バスは当てにならない。こんな住宅地にも東京資本がマンションを建てる。叩き売り、売れ残り、倒産地獄の舞台になりやすいが、進出撤退の繰り返しだから後続デベロッパーへ教訓が伝わらない。
さて問題は地方都市ばかりではない。東京の都心部はホテルまがいの超高層マンションラッシュである。いずれ社会の荷物になることは間違いない。商品化住宅は一瞬売れさえすればよい。将来について全く責任を持たない。(つづく)

(2009年3月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)