新マンション事情

生活基盤の低水準化・崩壊−町壊しの真犯人は誰だ

群馬県ではマイカー普及、勤務地、消費地の移動で市街地には不用化した建物が蓄積し、廃屋が多い。また郊外の事業所、特に小売店舗等は自動車で選別が行われるため競争が激しい。顔なじみのお得意より、匿名の経済原理だけの世界になるため売る側にとっても厳しい世界だ。店舗、診療所、病院、ガソリンスタンド、レストラン、パチンコ店等の廃屋が次々生まれるが、一方新築も多い。自己主張をする建物は同業他社でも使いにくく、同じ立地のリスクを避けて別の場所に自己主張の固まりの建物を新築するから、廃屋は放置されるままである。
前橋市の中心商業地に建つマンションの中古価格が低い点を不動産業者に尋ねたら「中心地は居住に適さない」との返事。人口が激減したから日常生活に必要な買物ができない。生活基盤の崩壊はマンション中古の値段にも影響している。ちなみに都道府県庁所在地の平成18年1月の最高路線価では東京銀座5丁目が最高の3184万円に対して、前橋市本庁2丁目は18万円である。全国最低だ。下から2位は山口市、3位は鳥取市である。
自動車社会は交通弱者を増大させているが、小中高学生の塾の送り迎えを親がするのが当たり前だから、親離れ、子離れができない。通勤・通学では学校・事業所単位で運営する通学・通勤バスの運行が普通で、市町村が負担する私鉄への補助金増加も悩みの種だ。訪問介護、訪問看護、訪問診療、訪問リハの頻度は大都市と比べて極端に少なく、通院が家族の大きな負担となった。運転できない高齢者は外出が制限され、虚弱単身者は他人に頼らざるを得ない。通院NPOが群馬県で活躍する理由だ。命さえも削る都市計画の失敗だ。
高崎、前橋、大田、伊勢崎市に於ける特養施設、グループホームはもちろん中学校、高校の大學短大等の半分以上が市街化調整区域に放り出されている。中学校、高校は建て替え際し仮校舎を必要としないためだ。朝は中学生や高校生が市街地から水田の中の校舎に自転車で通う姿が多い。大學・短大は本来市街化調整区域には建ててはいけない施設だが、首長の裁量で許可される。中心市街地に立地していた病院や診療所は広い駐車場を求めて競って工業地域や市街化調整区域に転出したから、通院には車が不可欠だ。

0907


産業のグローバル化の中で若い従業者の非正規化が進行した。事業誘致に成功し、売上高、生産高が増しても非正規社員は低所得で不安定だから、結婚、住宅取得などの希望を持てない。企業利益は東京本社に送られるから、地方はまるで東京の植民地だ。近年、製造業の海外移転が進行し、非木造集合住宅の空室率が極度に高まっている。マンションストックの環境不適合化(低水準化、駐車場不足、併設店舗の空室化)も深刻だ。老朽化する前に廃墟化が進む。使い捨て住宅が多い中で県外業者が作り出した新築マンションブームは売れ残り物件、倒産物件を数多く生み出した。奇妙な世界だ。なお県民所得は全国で12位だから特段貧乏県でもない。こうなったら廃屋・荒廃都市の学術的観光を企画したい。悪趣味かな?(つづく)

(2009年7月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)