新マンション事情

中古住宅はなぜ信頼されないか。出来ちゃった都市は人口減少社会に耐えられない

中古住宅取得者数と新築数を対比すると、日本は英米に比べて圧倒的に新築数が多い。国土交通省の発表によると、新築+中古の取引総数に占める中古の割合は日本12.8%(2003年)、米国76.7%(2004年)、英国88.4%(2004年)である。日本は基本的に住宅取得を新築に頼っている。全ストックを母数にすると日本の中古は年0・31%(平成15年0.33%)、米国4.3%、英国5.3%である。英国は日本の17倍近く中古が流通している。S63年からH20年の変化について言えば、着工件数累積 2660.7万戸、S63年のストック数 4200.7万戸 H20年のストック数、5759.3万戸、従って同期間に1110.3万戸が滅失した。着工分の41.6%に相当する。20年間の年平均滅失戸数は55.6万戸。平成11年から15年の中古取得の年平均戸数は16.9万戸だから、圧倒的に売却より住みつぶしが多い。滅失住宅の分析から平均耐用年数は日本31年、米国44年、英国75年であり、日本の住宅の寿命が短いのは確かだ。滅失する理由は老朽化だけが原因でない。大都市では敷地60坪以上の戸建住宅を不動産業者に売却すると、建物がさほど傷んでいなくても撤去し、土地を細分化し、建売住宅を建設する場合が多い。リフォームを実行するつもりで持ち主が建築関係者(建築士、住宅産業、工務店等)に相談すれば、言葉巧みに建て替えに利益誘導する。不況になると国の住宅政策は景気対策化する。200年住宅もその一環として見れば合点が行く。

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前述したように日本では住宅を初めて所有する人も大半は新築物件を得るが、米、英、仏、独では大半は中古物件を取得する。特に都市部に居住する場合は、中古から中古にわたり歩くのが普通だ。大都市で庭付き戸建住宅を買うのは至難の業である。街の中は地区詳細計画に基づいて整備された集合住宅が多いから、建て替える発想がない。都市に住む以上住宅は中古取得が当たり前だ。手を加えた分だけ値上がりするのが普通だから、居住者は一層建物の修理や改善に時間と金と労力を掛ける。ところが日本では、中古は値下がりするとみんなが考えており、事実値下がりする。20年も経過すると、戸建住宅の売買は土地の売買と変わらない状態に近づく。ところが分譲集合住宅の場合は個々に住宅を取り壊すことはできない。区分所有は土地の効用を制限するから、しばしば中古価格は更地価格を大幅に下回る。買い手が居なければ、価格を下げるか、低家賃の賃貸に回すか、持久戦に持ち込み様子を窺うか、転居を諦めるしか方法はない。住宅ニーズの変化に合わせて住み替えが出来なければ、空き家や大きな家での一人暮らしや不適合居住が蓄積する。資産崩壊の原因は管理組合の努力不足か、履歴情報の普及の遅れか、仲介システムの問題か、耐震強度の不足か、日本人の住意識か、いずれももっともらしい。だが、最大の原因は都市像がないまま地図に色塗りした名ばかりの建築自由な都市計画と市場任せにしてきた住宅供給にあろう。出来ちゃった無計画都市は今後予想される人口減少社会には耐えきれない。行政に起因する問題を避けていくら審議しても、効果的な対策は生まれにくい。(つづく)

(2009年11月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)