新マンション事情

市街地再開発事業に於ける超高層住宅は都市再生のシンボルだが

東京都の市街地再開発事業は170件。近年は容積率緩和の後押しで巨大な超高層住宅が次々誕生している。複数棟の場合は店舗や事務所などの非住宅用途は住宅棟と別棟にして計画する場合が多いが、問題は1棟型の場合に多い。低層部に非住宅部分が一体の建物に計画されるから管理を完全に分けにくい。床面積に比例して区分所有権を按分すると、所有権が特定者に集中し、少数派の意見は通りにくくなる。群馬県内のある超高層ビルはオフィス、店舗、美術館と売れ残って賃貸に用途変更した住宅部分の管理権限が管理会社に託されていた。管理会社が行使出来る区分所有権は全体の4割である。分譲住宅部分を含む館内供用部分の清掃費m2単価は周囲のマンションの約2倍だが、これは管理会社が管理組合に要求した額であった。住民の一部が気づき問題にしたが、なにしろ住民の結束力は弱く、むしろ高いサービスをステイタスとさえ考える住民もいたから、結局値下げ交渉以前に議論はうやむやとなった。管理会社を変えることも住民間で話題となったが、区分所有権の特定者集中の下では検討さえ不可能と判断した。あるマンションでは非住宅部分を含めて全体の修繕積立金制度を確立したいと理事会が提案したが、店舗部分の経営者は反対で、そんな費用があれば日常の運転資金に回し、大規模修繕時に払うとの意見であった。会計処理が違う別用途の混合は、必ずしも良い共同体になれないようだ。実は市街地再開発事業では非住宅部分の経営破綻や撤退はよくあることで、後が埋まらず、先送りになった修繕積立金が回収不能になる場合もあるようだ。福島県のある駅前再開発は総合病院と店舗と超高層分譲マンション(24階、80戸)が1棟に計画されたが、病院は全床面積の7割を占める。長期修繕計画には病院と住民の協力関係が必要だ。



 ところで、再開発事業の歴史をたどると、意外と失敗事例が多い。三重県桑名市の駅前再開発事業は一旦経営破綻した市街地再開発事業ビル(昭和48年開業、住宅なし)を全面的に建て替えした再再開発事業である(平成13年株式会社まちづくり桑名を設立、平成18年竣工)。5年間廃墟ビルとなっていた。完成した再再開発ビルは2棟(8階と18階)で内18階ビルは分譲マンション100戸と非住宅部分で構成。敷地面積は不変だが事業費負担を軽減するため余剰床を大きくし容積は大幅に拡大した。住宅部分は分譲時期も良く完売したが、専門店のテナント集めには苦労したようだ。客足が思うように伸びないことが今後の不安のようだ。住宅管理組合と全体管理組合の2階建て方式で現在までのところ混乱を避けている。
  筆者は群馬県の全マンション調査をしたが、市街地再開発ビルと知らずに調べていた建物が多く含まれていた。改めて点検すると店舗・住宅の空室化の進行、中古価格の低下で、今後の適正管理推進に困難が予想される事例が多々あった。多額の公的資金を投入しながら複合ビル故に不良ストック化するとしたら、何のための再開発事業か分からなくなる。多くの地方都市の駅前再開発は非住宅と複合した超高層マンションを都市再生のシンボルとしている。しかし中心街の空洞化を止められない状況では、失敗のシンボルになる恐れが無いわけではない。
(つづく)

(2010年4月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)