新マンション事情

小規模世帯化はどこまで進むか

 平成20年実施の住宅統計調査結果の再集計では、持ち家共同住宅居住世帯の単身化が一層進んでいることが明らかになった。東京の距離帯別の平均家族人数を平成10、15、20年の経年変化で示すと実に興味深い結果が示される。平成10年時点の平均家族人数は0〜10km帯が2・48人と最も小さく、以遠では距離を増すほど家族人数が増し、40〜50kmの2・97人が最大として、50km以遠は減少する。都心に近い0〜10kmは単身者が多く居住し夫婦+子供の世帯は都心地域より単価の低い郊外住宅を選択する図式が成り立つ。但し分譲マンションを購入する限界距離は都心から50kmにあるようだ。50km以遠では持ち家の広い戸建て住宅が安価になるから、分譲マンションは成立も存続も困難になる。持ち家共同住宅、全住宅との平均面積の乖離は20kmを越えると次第に拡大するから、遠隔地に居住する地元住民の需要は単身者などの小家族世帯に限定される。バブル経済崩壊以降分譲マンションの開発最前線が都心方向にUターンした上、遠隔地の住宅需要者は近距離帯への移動が可能になった。今後の人口推移では、分譲マンション購入の限界距離が今より短くなることは容易に想像し得る。しかも中古市場で生き残れるマンションは、最寄り駅から徒歩の範囲に限定されやすい。10年間の変動状況で最も家族人数が減少した距離帯は60〜70kmで、0.47人、次いで0〜10km帯の0.42人だ。
 小人数がさらに大きく減じたのだから、分譲マンション内の人間関係も大いに変質するはずだ。



  ところで単身化は(1)長期居住による世帯分解の進行と、(2)中高年単身者の増加、(3)新規建設住宅の水準向上に伴うストックの相対的低下が原因している。(1)については配偶者死亡の後女性が多く残りやすいことは当然だが、子供世帯に従前住宅を譲渡するか、他人に売却すれば、高齢世帯が家族規模に適合する住宅を選択できる。これはストックの有効活用の観点から合理的である。(2)については晩婚、未婚、離婚と配偶者死別者等の人口増加が大きく影響している。生涯未婚男女では女性の方が男性より高学歴、高収入者が多いことから、都内の比較的高級住宅地のマンションを購入する場合が多い。0〜20kmの近距離帯に於ける女性の分譲マンション取得傾向が顕著になったが、その理由は、(1)地域の産業構造の変化、(2)50m2未満の小規模マンションストックの多さ、(3)将来計画への男女の関心度の差である。(1)については都心湾岸部分から第二次産業が消え、地方又は大都市圏遠隔地に拡散した結果、都心では第三次産業に従事する女性の割合が高まった。(2)については50m2未満の住宅が、家族世帯の要求水準に合わなくなった結果、購入者は単身者に限定されやすくなったようだ。50m2以下の戸建て住宅は流通量が少なく、あっても防犯、防火、日照、通風環境は集合住宅に比べてかなり劣る。さらに戸建ての維持管理は大変だ。かくして都心マンションは居住者階層を大きく変貌させつつあるが、大地震などの災害に対応可能か疑問だ。阪神淡路大震災当時とはマンション居住者は大きく変わっている。      (つづく)

(2010年6月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)